国家公務員の「5人に1人」が定年後に生活苦!? 退職金「2000万円」があっても苦しいの? 定年後も働く割合も解説
ファイナンシャルフィールド / 2024年2月28日 2時10分
国家公務員は退職金が約2000万円ももらえて、一般的には老後も安泰と思われています。しかし、人事院の調査では5人に1人が「生活が苦しい」と回答する意外な結果が浮き彫りとなりました。 この記事では、定年後の公務員の退職金と働き方、生活が困窮する理由について解説します。
国家公務員の退職金は2000万円超え
2022年度の内閣官房内閣人事局の調査によると、常勤職員のうち定年退職した1万4283人の退職金平均支給額は2112万2000円でした。
2021日本経済団体連合会の調査では、大学卒業者で「管理・事務・技術管理労働者(総合職)」として、勤続38年の場合の平均定年退職金は2243万3000円でした。つまり、国家公務員の退職金額は、大企業に大学卒業後23歳から60歳まで勤めた会社員の退職金額と遜色ないのです。
国家公務員の定年年齢は段階的に65歳に引き上げ
次に国家公務員の定年年齢と定年後の働き方についてみていきます。国家公務員の定年年齢は原則60歳でしたが、2023年度から2年に1歳の段階的な引き上げが行われています。2023年度から61歳、2025年度から62歳、2027年度から63歳、2029度年から64歳、2031年度からは65歳が定年年齢となります。
従来の定年年齢であった60歳以降に仕事を続ける場合は、大きく2つの働き方に分かれます。これまでと同じく常勤で働きたい場合、役職についていた人は「非管理監督職」として勤務し、定年時に役職についていなかった人は引き続き非管理監督職として勤務します。
そして、60歳以降短時間勤務で働きたい場合は、いったん退職し、短時間勤務職員(定年前再任用)として勤務します。
定年した国家公務員の5人に1人が生活苦
平均2000万円以上の退職金を受け取り老後は安泰に思われる国家公務員ですが、人事院の調査によると60歳で定年退職した国家公務員のうち約90%が引き続き仕事を続けています。その中でも再任用で働く国家公務員は約80%です。また働く理由については、「日々の生計維持のために必要」との回答が85%を占めています。
定年後の平均収入月額は「月21~30万円」が31.5%で最も多く、ついで「31~40万円」が11.4%、「月11~20万円」が16.8%と続きます。また、世帯収入の平均月37万7000円に対し、支出額の平均は37万6000円で、収入と支出がほぼ同じとなっています。
人事院の調査では現在の家計の状況について、17.8%が「ゆとりがある」と回答していますが、「毎月のやりくりに苦労しており、時々赤字が出る」が22.6%、「どうやりくりしても、常に赤字が出て生活が苦しい」が17.9%という結果になりました。
世帯収入の平均37万7000円の内訳は、約66%が本人の収入のほか、配偶者の収入や公的年金以外の年金収入なども含まれます。配偶者が働いているかどうか、公的年金以外の準備を行っているかどうかなども、60歳以降の生活に大きく関わってくるでしょう。
また、定年退職後の生活や生涯設計について考えるようになった時期は、50歳台後半が50%と最も多い結果となりました。ついで50歳台前半が約26%、60歳(定年退職となる年度)が約12%となっており、定年後の生活準備の開始が遅いことも生活に困る一因となっていると考えられます。
一方、定年退職前にもっと知っておけば良かったと思うことは「年金、保険に関する情報」が54.2%、「資産運用に関する情報」が23.6%となっており、定年前に安定した収入を得ていた場合でも定年後の準備は早期に行うことが大切といえます。
まとめ
国家公務員は2023年度から段階的に定年年齢が引き上げられ、退職年齢が後ろ倒しになります。60歳以降は常勤職員として働く場合にも、役職から降格しての勤務となるため、収入が減少します。
また、国家公務員は平均2112万2000円の退職金が支給され、老後は安泰と思われがちですが、実際には20%弱の人が「生活が苦しい」と回答しています。
配偶者が働いているかどうかなども収入額を左右しますが、実際には50歳台後半から定年後の生活について考え始めた人が多く、準備不足も生活が困窮する一因といえそうです。早い段階から年金、保険、資産運用などの知識を身につけ、準備することが大切です。
出典
内閣官房内閣人事局 令和4年度 退職手当の支給状況
日本経済団体連合会 2021年9月度「退職金・年金に関する実態調査結果」を発表
人事院給与局 国家公務員の60歳以降の働き方について
人事院 令和2年度 退職公務員生活状況調査
執筆者:古澤綾
FP2級
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