配偶者が認知症になったらどのくらいの介護費用がかかる?
ファイナンシャルフィールド / 2024年3月4日 5時40分
配偶者と年齢が離れている場合、年を重ねるにつれて認知症のリスクや介護費用の問題が同世代の人よりも早い段階で現実味を帯びてきます。どのくらいの費用がかかることを想定して備えておけばよいのか、不安を感じる人は多いでしょう。 そこで本記事では、介護サービスの費用負担額の仕組みや介護費用の実態、認知症に関わる介護費用の目安を解説するとともに、介護費用の負担を軽減する制度も紹介します。
介護費用の自己負担額はかかった介護サービス費用の1~3割
介護費用の基本として、公的介護保険の自己負担額について知っておきましょう。
介護保険サービスを利用した場合、利用者が負担する必要があるのは、所得などに応じてかかった費用の1~3割です。ただし、自宅で居宅サービスを利用する場合は、要介護度別に図表1のように支給限度額が定められており、限度額を超えた部分は全額自己負担となります。
【図表1】
要支援1 | 5万320円 |
要支援2 | 10万5310円 |
要介護1 | 16万7650円 |
要介護2 | 19万7050円 |
要介護3 | 27万480円 |
要介護4 | 30万9380円 |
要介護5 | 36万2170円 |
厚生労働省「サービスにかかる利用料」より筆者作成
介護費用の平均は月8万円以上というデータも
実際に認知症などで介護が必要になったとき、介護費用はどのくらいかかるのでしょうか。公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護費用のうち住宅の改修や介護用ベッドの購入などでかかった一時費用の平均額は74万円、金額の分布は図表2のとおりです。
【図表2】
かかった費用はない | 15.8% |
15万円未満 | 18.6% |
~25万円未満 | 7.7% |
~50万円未満 | 10.0% |
~100万円未満 | 9.5% |
~150万円未満 | 7.2% |
~200万円未満 | 1.5% |
200万円以上 | 5.6% |
不明 | 24.1% |
公益財団法人 生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」より筆者作成
また、同調査では、公的介護保険の自己負担額を含む介護に要した費用の平均が8万3000円という結果も出ています。公的介護保険で費用の負担がある程度はおさえられるとはいえ、場合によっては決して小さくない金額が介護のためにかかる可能性のあることが分かる結果です。
認知症で入院・介護施設に入るとかかる費用の相場は?
介護の原因を認知症に絞った場合の数字も見てみましょう。
慶応義塾大学と厚生労働省によって2014年に行われた共同研究によると、認知症に関する患者1人当たりの医療費は、入院医療費が月額34万4300円、外来医療費が月額3万9600円と推計されています。また、認知症の介護サービス利用者1人当たりの介護費は、在宅介護費が年額219万円、施設介護費が年額353万円と推計されています。
これらは、推計の手法の関係で過大評価の可能性が除外できていない数字ではありますが、認知症に関する医療費・介護費の一つの目安となるでしょう。
また、認知症で介護施設に入所する場合、次のような施設が候補になります。
●特別養護老人ホーム
●グループホーム
●介護老人保健施設
●介護医療院
●介護付き有料老人ホーム
このなかでは公的な介護施設である特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院の費用が比較的安価で、月額5万円程度で利用できる施設もあります。また、初期費用も必要ありません。
グループホームや介護付き有料老人ホームなどの民間施設は、公的施設より費用が高額な場合が多く、数百~数千万円の初期費用が必要になる場合もあります。また、月額費用も10~30万円程度が相場です。
介護費用の負担を軽減できる制度を活用しよう
公的介護保険には、所得が低い人や1ヶ月の利用料が高額になった人の負担を軽減する制度が設けられています。貯蓄や家計の見直しだけでは介護費用の負担に対応できない場合は、次のような制度が利用できないか確認してみましょう。
●高額介護サービス費:介護サービスの1ヶ月の自己負担額が負担上限額を超えた場合に超過分が払い戻される制度
●高額医療・高額介護合算療養費制度:世帯内で同一の医療保険加入者が利用した医療保険と介護保険の自己負担額の合計が基準額を超えた場合に超過分が支給される制度
●介護保険負担限度額認定証:低所得者の介護保険利用費のうち、食費・居住費の負担を軽減する制度
●医療費控除:介護サービス費を含む1年間の医療費が10万円を超えた部分を、所得税・住民税計算時に控除できる制度
介護費用は大きいが負担を軽減するさまざまな公的制度が整えられている
家族が認知症などで介護が必要な状態になると、介護費や医療費で多額の負担が発生します。公的介護保険を活用しても、自己負担額が大きくなるケースもあるため、十分な資金の備えが必要です。
介護に関する費用の負担が重く、やりくりが難しくなった場合は、費用負担を軽減する制度が利用できる状況ではないか確認してみましょう。介護費用や医療費の負担を軽減する制度はさまざま用意されているため、困ったときには福祉や介護の窓口で相談することをおすすめします。
出典
厚生労働省 サービスにかかる利用料
公益財団法人 生命保険文化センター 2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査
慶応義塾大学 マインドフルネス&ストレス研究センター 認知症の社会的コスト
国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 介護サービス費
東京都北区 高額介護サービス費
東京都中央区 介護保険負担限度額認定
全国健康保険協会 協会けんぽ 高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費・高額介護合算療養費
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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