事実・報道・憶測を分けて自分の見通しを組み立てる事が重要? 10月初旬の株価急落から学ぶこと
ファイナンシャルフィールド / 2018年10月30日 9時0分
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2018年に入ってから先進各国が金融緩和からの路線変更を鮮明にし、欧州や新興国では政治的な混乱から安定しない状況が続きました。そんな環境下でも好調すぎる経済指標を背景に米国の1人勝ちを唱える向きや、米中貿易紛争を背景に異論を唱える向きが現れ、方向感がつかみ辛い状況が続いています。 そして起こった株価急落。これを米国投資、ひいては投資否定論の根拠にとらえるべきでしょうか。
急落の原因をはっきりさせる
上がると思って投資した金融商品が値下がりをした(急落した)。そんな時は必ず原因を明確にさせることです。
今回の最大の引き金は、米国長期金利急上昇。好調な米国の経済指標が続き、このまま景気が過熱することを防ぐために、政策金利を徐々に引き上げて景気を冷やします。それでも好調さの勢いが持続し続けていけば、「このような小幅な政策金利引き上げで大丈夫か? そうなってから急激な引き上げを余儀なくされるのではないか?」という懸念が起こります。
政策金利は景気状況を確認しながら小幅に引き上げていくからこそ、ほどよい冷や水になって持続的経済成長につながりますが、急激な大幅引き上げになれば当然、景気に対して大きく下向き圧力をかけることになります。
FRB(米連邦準備制度理事会)のかじ取りの難易度は上がっていると市場関係者の間では議論されていますが、その懸念が大きく目立ってしまったために起こったものと考えられます。平たくまとめると、「こんなに好景気が続けば、政策当局は大幅に政策金利を引き上げなければならなくなり、景気が腰折れしてしまう」ことを懸念したもの。
付け加えるならば米国財政赤字懸念も頭をよぎると、それじゃ米国債に資金を投入すべきじゃない! ということからも債券価格下落、すなわち金利上昇に寄与したと思われます。
事実・報道・憶測を分けて自分の見通しを組み立てる
将来懸念(2019年にも景気後退局面が訪れる「のではないか」という循環論での景気後退懸念)が主要な急落の要因であったことがわかります。なぜなら、米国の好調な景気指標の発表とFRB議長の金利スタンスに対しての発言の直後に急落が始まったためです。
次に事実・報道・推測を分けて整理します。事実は、好調すぎる米国経済。これは米国1強などあり得ないが認めざるを得ないという一部の声にもつながっています。人は、あまりに一方向にものごとが進みすぎると、穿った見方をせずにはいられないもの。「(なんとなく)そんな話が続くわけない」という『なんとなく』がクセものです。
そして報道の影響です。昨今のSNSの普及もあり、必要以上に大きく独り歩きしてしまうことが多々あります。
今回の例でいえば、米中貿易紛争。双方の関税引き上げ合戦、10月初旬米国による中国を「為替操作国として認定する方向で注視している」という報道がありましたが、これは「為替操作国として認定されたら、さらに厳しい対中措置が取られるのではないか、日本もそうなれば…」という憶測が含まれており、むしろそちらのスペキュレーションがフォーカスされています。
値動きを決めるのは、短期的には報道・憶測、長期的にはファンダメンタルズ
しかしながら報道や憶測はあくまで「かもしれない」議論。昨日買い付けて今日売却するという短期売買でない限り、「かもしれない」議論を根拠に投資スタンスを決めるのはリスクが高いですね。売買手数料だけがかさむだけで、手数料を補って余りある収益を稼がないと時間の無駄におわってしまいます。
最終的には、「事実」ここでは米国の景気は今非常にいい、米国の財政赤字は拡大をつづけている、の2点をもとに投資姿勢を決めるべきです。
米国の景気がいい、というのは企業でいうと損益計算書、財政赤字が膨らむというのは貸借対照表。市場はどちらにより注目しているのか、ケースバイケースですが、どちらがドライバーになっているかが見えてくれば、狼狽売りで後味の悪い思いをすることは防げるでしょう。
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
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