介護者が「使い込み」の濡れ衣を着せられないための防衛策 トラブルを避けれるお金の話
ファイナンシャルフィールド / 2018年10月30日 10時30分
親が介護を必要とする年齢になると、お金の管理が難しくなります。このような状態になったとき、配偶者がいなければ、同居の子どもなど近しい人にお金の管理を任すケースが少なくありません。 お金の管理を任された子などが親の介護費用などを支出した場合、自分の財布と親の財布を明確に区別しておかないと、相続のときに他の兄弟姉妹などから親の財産を使い込んだと、疑いをかけられトラブルになることがあります。
医療費や介護費は親の財産から出すのが基本
親からお金の管理を任されたら、親の年金はいくらか、預貯金がどのくらいあるのかを把握し、どれだけ親の財産からお金をかけるかなど兄弟姉妹間で情報を共有しておきましょう。医療費や介護費は親の財産から出すのが基本です。
子どもが親の介護費用等を負担すると、自身の老後資金に影響が出ます。よっぽど家計に余裕がない限りは、親の財産から捻出しましょう。
医療費や介護費の軽減制度を知る
医療や介護サービスを利用したときには、所得に応じた軽減制度があります。医療費が高額になったときは、所得や年齢による自己負担限度額を超えた分を、高額療養費として支給されるしくみがあります。
介護の場合は、1ヵ月の介護サービスの1~3割負担の合計額が一定の限度額を超えた場合に、超えた分を支給する高額介護(介護予防)サービス費があります。
高額介護サービス費と高額療養費両者の自己負担を合わせて、毎年8月から翌年7月までの1年間に支払われた額が、一定の限度額を超えた場合には、超えた分を後から支給する高額医療・高額介護(介護予防)合算制度もあります。
これらの制度は基本的に申請が必要です。高齢になると本人が申請するのが難しくなります。家族が制度をよく把握し、本人に代わって申請し、親の財産を守りましょう。
「どんぶり勘定」はトラブルの元
介護費用は外からは見えにくい上、介護が長期に及ぶと親の預貯金も大きく減ります。親が亡くなったとき、「どうしてこんなに預貯金が少ないの? お金を使い込んだのではないの? お金を隠しているのではないの?」と、介護に非協力的だった兄弟姉妹から疑いをかけられ、トラブルになるケースがあります。
介護を押し付けられ、不正まで疑われたら頭にきますね。嫌な思いをしないためにも、親の預貯金が多い場合は、お金の使途、金額、日付をノートに付け領収証とともに記録を取っておきましょう。
医療費や介護費の支払いのための口座を開設し、その口座からお金を出し入れするのも良いでしょう。「代理人用カード」を作成しておけば、家族が親の口座からお金を引き出すことができます。
親のお金が少ない場合は、医療費や介護費を立て替える場合もあると思います。
この場合も使途について記録を残しておくことはもちろんですが、兄弟姉妹間でお金をどう分担するか事前に話し合っておくのも大切です。
親に持ち家があれば、リバースモーゲージなどの活用も検討してみてはいかがでしょうか。リバースモーゲージは、自己名義の自宅を担保にお金を借り入れ、利用者が亡くなったあとに、原則として、担保不動産の売却代金などにより一括して返済するしくみです。一部の銀行や信用金庫などが扱っています。
子どもに財産管理を任せるのが不安なら
認知症になったとき、子どもに財産管理を任せるのが不安なら、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業や信頼できる人と任意後見契約を結んでおくという方法もあります。
日常生活自立支援事業では、高齢者の方などの福祉サービスの利用や家賃・公共料金などの支払いなど日常的な金銭管理、通帳・印鑑の預かり、郵便物の管理などを行ってくれます。
任意後見契約は本人が、信頼できる人に対し、将来認知症などで自分の判断能力が低下した場合に備えて、自分の後見人になってもらうことを委任する契約です。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
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