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子ども・子育て支援金制度についての情報は不十分?「全世代型社会保障」の構築という大枠を知る必要がある

ファイナンシャルフィールド / 2024年3月18日 5時10分

子ども・子育て支援金制度についての情報は不十分?「全世代型社会保障」の構築という大枠を知る必要がある

※この記事は2024年2月19日時点の情報を基に執筆しています。   NHKが2024年2月に実施した世論調査によると、少子化対策の財源として創設する「子ども・子育て支援金制度」(以下、支援金制度)について、公的医療保険料への上乗せが月平均で1人当たり500円弱になるという見込みに対し、「妥当だ」が20%、「妥当ではない」が31%、「支援金制度自体に反対だ」が33%、「わからない・無回答」が16%という結果でした。   それほど大きな差は見られないようですが、具体的な制度内容や金額などがまだはっきりと伝えられていないため、このような結果になったのかもしれません。   支援金制度の話は非常に重要で、今後の社会福祉政策全般の財源論に大きく関わってくるため、ある程度のイメージは持っておく必要があるといえます。ここでは大まかな枠組みについて確認しておきたいと思います。

支援金制度は全世代型社会保障を構築するために必要なもの

2024年1月に開催された第32回社会保障審議会の資料「『全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)』、『こども未来戦略」について』」によると、「少子化対策と『全世代型社会保障』」として、図表1のような考え方があるようです。
 
図表1

図表1

出典:厚生労働省 「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」、「こども未来戦略」について
 
ポイントは、「『全世代で支え、全世代を支える』社会保障に大胆に転換」することです。また、三位一体の労働市場改革や賃上げの先行により、経済基盤を強化することで国民の負担感を軽減するとしています。
 
少子化対策について報道で伝わってくる内容としては、例えば支援金制度では、月平均1人当たり500円弱を公的医療保険料に上乗せするといった部分的なものですが、これだけに関心が向いてしまうと全体像を見失ってしまい、本質的な考え方を理解することができなくなります。
 
繰り返しになりますが、社会保障制度を転換するために経済対策も実施し、改革を進めるというのがポイントです。つまり、全世代型社会保障を構築するために、労働市場改革や賃上げなどが推進され、経済面での改革を通じ、社会福祉政策の組み換えを実施しようとするものと捉えることができます。
 

支援金制度はどのような政策に活用されるのか

それでは、支援金制度は具体的にどのような政策に活用されるのでしょうか。一言でいうと、図表2のような取り組みの実施に使われるようです。
 
図表2

図表2

出典:厚生労働省 「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」、「こども未来戦略」について
 
細かい内容は上記の資料で確認していただければと思いますが、これから子育てをしていこうという世帯や、子育て中の世帯への支援が拡充されるものとなっています。
 
子育て対策としてはまだまだ足りないと感じる部分もあるかもしれませんが、どのような支援が活用できるのかは事前にチェックしておくといいかもしれません。
 
ただし、ここでは「こども・子育て支援加速化プラン」の概要が示されているに過ぎず、前述した全世代型社会保障の構築は他の社会福祉政策全般にも及ぶため、これらを全世代で支え、全世代を支えるという視点を持つことは必要です。
 

「こども・子育て支援加速化プラン」の財源はどこから出すのか

「こども・子育て支援加速化プラン」の財源はどこから捻出しようとしているのでしょうか。
 
一つは「既定予算の最大限の活用等」となっており、つまり予算の組み換えです。そしてもう一つは、「歳出改革の徹底等」とあり、要は適切に予算を振り分け、無駄遣いをなるべく減らすという意味です。
 
図表3

図表3

出典:厚生労働省 「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」、「こども未来戦略」について
 
社会福祉政策の財源としては、大きく分けて公費(国・地方自治体)≒税金と、社会保険料が充てられます。
 
ここからがポイントですが、「こども・子育て支援加速化プラン」の財源の一部は、公費の節減と社会保険負担の軽減の効果を基に組み立てられています。つまり、社会福祉政策全般の組み換えを行うことで、効果の薄い政策が見直されていくというイメージです。
 
そして、医療や介護などの社会保険制度を見直すことで、財源を確保する新たな制度として支援金制度を創設するという流れになっています。
 
ここで強調されているのが、社会保障改革の徹底と賃上げです。社会保障審議会の資料では、具体的には「働き方に中立的な社会保障制度等の構築」「医療・介護制度等の改革」「地域共生社会の実現」を3つの柱とし、次の時代に向けた改革の道筋が示されています。
 

まとめ

今後進められる少子化対策は、全世代型社会保障の構築という大きな枠組みのなかで捉える必要があります。
 
このようにいうと、少子化対策を国民全体で支えると聞こえるかもしれませんが、全世代型社会保障の構築は社会福祉政策全般を対象としているため、全世代で全世代を支え合うという互恵関係を成り立たせようとするものといえます。
 
少子高齢化が進む日本では、今後も社会福祉政策を維持・拡充させる必要性が高まるでしょう。そのためには、さまざまな政策分野で制度の見直しが図られる可能性が高いと考えておく必要があります。
 
政策論は難しく、簡単に理解することはできません。しかし、大枠を知ることで国の方向性や考え方を知ることができ、人生設計に役立たせることができます。
 
報道などで伝えられる一部の情報だけに目を向けず、少し立ち止まって全体像を見渡すと、少子化対策や子育て支援策について、また違った見方ができるようになるのではないでしょうか。
 

出典

NHK選挙WEB 内閣支持率
厚生労働省 「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」、「こども未来戦略」について
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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