相続したら“負不動産”だった……そうならないために相続した不動産の行方を知る 後編
ファイナンシャルフィールド / 2024年3月25日 1時40分
先祖代々受け継がれてきた不動産。前編では、4月からの名義変更の義務化に伴う相続登記について見てきました。後編では、相続登記が完了した不動産の“これから”を考えます。
万全に思えた“相続した不動産に住む”にも盲点
実家を相続したら、その不動産をどうするのか、そのまま住み続けるのであれば、問題はないように思えます。「父親が亡くなったので、実家に引っ越しして母親と同居することになりました」というAさん。Aさん夫婦に子どもはなく、これまでは賃貸マンションで暮らしていました。
ご実家は都心の便利な立地にあるので、通勤などの心配もありません。ですが、「想像以上に固定資産税が高いのでビックリしました。母親が『私が生きている間は払ってあげる』と言ってくれています」とのこと。
不動産を所有していると、定期的にメンテナンスの費用もかかります。築年数や構造によっては、かなりの出費も予想されますので、予算を組んでおく必要がありそうです。
Aさんのように実家に自分が住む場合は良いのですが、相続した不動産の活用法が決まっていない場合に問題は発生します。その行きつく先が「使用目的のない空き家」です。
相続土地国庫帰属制度とは?
知人FP(ファイナンシャルプランナー)との会話の中で、「相続土地国庫帰属制度は良いと思う。あなたも選択肢に入れたらどう?」と言われました。実は筆者も、実家の空き家問題を抱えています。父が亡くなり現在は空き家状態です。年に数回は帰省しますが、コロナの影響もあり、帰省回数が減ったことが老朽化に拍車をかけたように感じます。
相続土地国庫帰属制度は、昨今問題の「所有者不明土地」の発生を予防する方策として創設されました(令和3年4月28日公布 令和4年4月27日施行)。これは相続等により土地の所有権を取得した相続人が、今後その土地を利用する予定がない場合に、法務大臣の承認により土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。
制度の概要は以下のようになっています。
(1) 相続等によって土地の所有権を取得した人が、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて承認を申請します。
(2) 法務大臣(法務局)が、承認を審査するための実地調査などを行います。
(3) 法務大臣は、承認申請された土地が、通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたものにあたらないと判断したときは、土地の所有権の国庫への帰属について承認をします。
(4) 土地の所有権の国庫への帰属の承認を受けた方が、一定の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属します。
(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度について」)
この制度が施行される以前に相続した土地も対象になります。注意すべき点は(3)(4)のアンダーライン部分です。「承認を受ける土地であるためには諸々の条件があること」「無料で引き取ってもらえるのではなく費用がかかること」これらを十分踏まえることが大切です。
建物がある土地など、引き取ってもらえない土地の要件については、法務省のホームページに詳細がありますので確認しましょう。なお、審査の手数料が土地一筆につき1万4000円かかります。
実家相続の長い道のり
知人FPに指南を受けた筆者ですが、実家問題は遅々として進んでいません。相続登記を済ませた時点で止まった状態です。相続した不動産をどうするのかを下記のようなフローチャートにしてみました。
Yes→Aさんのように活用◎
No→<Step2>に進む
Yes→賃貸物件として活用 不動産会社に相談
No→売却を考える<Step3>に進む
Yes→不動産会社に相談
No→相続土地国庫帰属制度に該当するか検討
現在の筆者はStep2のあたりをうろついています。家を貸すにしても売却するにしても、家財の整理が必要です。“実家じまい”経験者の方は、このお片付けが難問といいます。
「1人では進まないから、お手伝いに行こうか?」と助っ人として手を挙げてくれる心強い先輩もいます。それだけ皆さんが苦労してきた証拠と考えると、実家を相続するということの大変さは、まだまだ続きそうです。
出典
法務省 相続土地国庫帰属制度について
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
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