パート先の社員が退職するので、退職祝い代として「1人1000円」払うよう言われました。あまり関わりのない人ですし、断って大丈夫でしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月5日 4時30分
退職で会社を去る人に対して職場で退職祝いを用意することがあります。感謝の気持ちを込めて、送り出す意味で贈られるものですが、知らないうちに退職祝いを割り勘にすると決められ「この日までに払って」と言われたらどう思うでしょうか。 一方的に決められたことへの疑問や、苦労して稼いだパート代から負担することに不満を感じる人もいるのではないでしょうか。 本記事では、退職祝いの支払いを断ることの是非や、払わない場合のデメリットと対策などについて解説します。
払わなくても全く問題ナシ
職場で退職祝いが話題に挙がると、代金を払うことが義務のように感じてしまうかもしれません。しかし、原則として雇用契約書に書かれていない職務は上司からの命令であっても従う義務はありません。そもそも退職祝いを贈ることが、職務に直接関係あることでもないはずです。
もし割り勘に参加することを強制するような言動があった場合、パワーハラスメント(パワハラ)に当たる可能性があります。
厚生労働省は、パワーハラスメントは「優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)」「業務の適正な範囲を超えて」行われるもので、「身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること」と定義しています。
社員とパートの関係では、職務での命令系統を考えると社員が優位的になりがちです。そうした立場から職務外の退職祝いに関して強く言うことは、状況によってはパワーハラスメントになることもあります。
感謝の気持ちを表すことは自発的であるべきです。強制されたり、不本意な気持ちを抱えたりしたまま退職祝いにお金を払うのは好ましくありません。
払わない場合のデメリットと対策は?
では払わないことで、どのようなデメリットが考えられるでしょうか。
職場の人間関係が悪化する
上司や同僚と異なる行動をとり「協力的でない」「付き合いが悪い」などと思われて、人間関係が悪化する可能性は考えられます。割り勘の場合は参加者が減ると1人当たりの負担額が上がり、快く思わない人が出てくるかもしれません。
たった1つの出来事、しかも職務外のことで人間関係が揺らぐというのは会社として健全ではありません。また、一時的に関係が悪くなっても少し時間がたてば元に戻るはずです。もし関係が悪化したままならば、それはその会社の文化の問題かもしれません。
このような場合の対策としては、払わない理由を「簡潔に・早めに」伝えることです。
理由は「経済的な理由で」などと簡潔にします。退職祝いを贈ることに反対していることや、退職者に義理がないことなどを挙げると、会社の文化を否定することにつながりかねないほか、恩義の念に欠ける人だと思われてしまいます。
また、払わないと決めたら早めに幹事に伝えることが大事です。自分が支払わないことで割り勘分が途中で増えると、「あの人のせいで負担が増えた」と他の人の記憶に強く残ってしまうからです。
退職者の誤解を招く
退職祝いには、参加した人の名前が添えられることがあります。
退職者が、名前がない人がいることに気づいたら「自分のことを快く思っていなかった人がいた」「○○さんは、ずいぶん面倒を見たのに感謝してくれていなかった」と考えるかもしれません。もし退職者に感謝や送別の気持ちを持っているのなら、退職者のこのような考えは残念な誤解といえます。
対策として、次のようなことが挙げられます。
●手紙やカードを書く 感謝の気持ちや共通の楽しい思い出などを記す
●送別会を企画する 送別会や食事会を企画して退職者に楽しい時間を過ごしてもらう
●個別に退職祝いを用意する 職場から贈る退職祝いより負担が少なく退職者が喜びそうなものを選ぶ
大切なのは感謝の気持ちを伝えることです。退職者のことを思い、人柄や好みを考慮しながら決めましょう。
払わないと伝えるときのポイント
退職祝いに関わらないことを決め、代金を払わないと幹事に伝えるときは、幹事の面目を傷つけないように配慮することが大切です。
幹事には、参加費の集金だけでなく退職祝いについての意見の取りまとめや購入など、職務以外の負担が大きくかかっています。そのような中で払わない人が出てくると、やるせない気持ちになるかもしれません。
前記の通り、払わないことを「簡潔に・早めに」伝えることに加えて、「取りまとめ役をしてくれてありがとう」などと言って労をねぎらうことで、参加しないマイナスイメージを減らすようにします。
まとめ
職場の雰囲気に流されて、納得しない状態で退職祝いの割り勘に付き合うと、たとえ少額であっても払いたくないお金を払ったことが頭に残り、不愉快な気持ちを抱えたまま職場で過ごすことになりかねません。自身の信念や経済的な状況を大事にしながらも、職場での人間関係に配慮しつつ、適切な行動をとることが大切です。
出典
厚生労働省 パワーハラスメントの定義について
執筆者:根本由佳
FP2級、中小企業診断士
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