年金を60歳から繰上げ受給し、仕事を減らそうと思います。申請する前に考えるべきことはありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月11日 2時20分
59歳(1965年生まれ)です。高校卒業後、これまで自営業者として働き続けてきました。60歳になったら、年金を繰上げ受給しようと思います。 その分、仕事の量を減らして働き続けるつもりで、60歳以後は「減らした仕事の収入」と「繰上げ受給の年金」で暮らしていく予定です。申請する前に考えておくことはありますか? なお、20歳以後、国民年金保険料はこれまでに納め忘れなどはありません。会社員の経験がないので、厚生年金はありません。
繰上げ受給とは? その影響は?
冒頭で述べた方は、20歳以後、自営業者として国民年金保険料を納め続けてきたので、65歳になると老齢基礎年金を受け取れます。もし、会社員などの経験が1ヶ月でもあれば、併せて老齢厚生年金を受け取れます(本稿では会社員経験がないため老齢厚生年金はありません。以下、老齢基礎年金に絞って述べます)。
本来65歳から受け取る老齢基礎年金を、60~65歳の間に前倒しで受け取り始めることを「繰上げ受給」といいます。前倒しで受け取る分、年金は毎年の受取額が少なくなります。では、どのくらい少なくなるのでしょうか?
繰上げ受給によって、受取額はどのくらい減るのか?
では繰上げ受給によって、年金の受取額はどのくらい減るのでしょうか?
2024年度の老齢基礎年金の額は81万6000円(=1ヶ月当たり6万8000円)です。これは65歳から受け取る場合の額です。もし5年(=5×12ヶ月=60ヶ月)前倒し60歳で受け取ると、受け取る年金の額は、
81万6000円×(100%-0.4%×12ヶ月×5年間)=62万160円≒62万200円
になります。1ヶ月当たりの額は5万1683円です。約24%減っている計算です。この24%の減少は60歳で受け取り始めて亡くなるまでの間、ずっと続きます。
年金を前倒しで受け取る(繰上げ受給する)と、前倒し1ヶ月当たり(1962年4月1日以後生まれの人)0.4%減額になり、その受給額は亡くなるまで続きます。
次に、年金の繰上げ受給を申請する前に考えておきたいことを2点、挙げます。
1. 仕事を続けることはできますか?
冒頭で述べたケースでは、60歳以後は「減らした仕事の収入」と「繰上げ受給の年金」で暮らしていくということでした。つまり60歳以後、「収入」と「年金」のどちらか一方がなくなってしまったり、大きく減少してしまったりすると生活が苦しくなります。
繰上げ受給によって減少があるとはいえ、年金は亡くなるまでの間、受け取ることができるのは既述のとおりです。では、仕事についてはいかがでしょうか?
自営業者ですので定年はありませんし、仕事の量も自身の判断で加減することができるでしょう。60歳代の仕事を、70歳になっても、80歳になっても続けることができるか、体力や技術など、今のうちにシミュレーションしておくと良いでしょう。
あわせて、生活の固定費も見直しておくことをお勧めします。例えば、車をお持ちなら、手放してカーシェアリングなどを利用する、手放すことが難しいなら、軽自動車や燃費の良い車に乗り換えるなどを検討しましょう。
2. 健康面の不安はありませんか?
健康診断や人間ドックは受けていますか? 受けていても指摘を放置したりしていませんか? 年金を繰上げ受給してしまうと、障害年金の申請ができなくなってしまいます。
元気そうに見えるけれど、実は生活習慣病を抱えていて、しかもひそかに進行しつつあるということがあるかもしれません。繰上げ受給の年金を申請する前に、健康診断や人間ドックを受け、その結果を見ておくと良いでしょう。
また飲酒や喫煙、夜ふかしなどの生活習慣がある人は、この機会に見直してみませんか? できるだけ長く、健康で働き続けるためにも、今後は体調管理・健康維持が必要になってくるでしょう。
まとめに代えて
年金は固定収入です。60歳から前倒して受け取る(繰上げ受給する)ということは、固定収入を早く得られるといえます。しかし同時に、固定収入が生涯にわたって減ったままになります。仕事の見通しとご自身の健康状態をチェックしてから、年金の繰上げ受給を申請しましょう。
出典
厚生労働省 令和6年度の年金額改定についてお知らせします
厚生労働省 基礎編講義 老齢基礎年金(2)1老齢基礎年金の基本年金額
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役
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