高齢者の預金等の管理の方法としての「日常生活自立支援事業」とは?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月19日 14時0分
高齢の親と離れて生活する人にとって、親の現金や預金管理は心配の種です。 特殊詐欺や認知症発症への対応策は、銀行の「代理預金引き出し」から「成年後見制度」「家族信託」などの法的制度までさまざまあります。 今回は、全国の社会福祉協議会で行われている「日常生活自立支援事業」について学んでみましょう。
高齢者の資産管理に関するしくみと制度
高齢者の資産を管理する制度やしくみには、以下のようなものがあります。
●「代理人カード」:民間の銀行などが発行する、ATMで本人に代わり入出金ができるカード
「予約型代理人」:認知・判断機能の低下により、本人による取引・手続きができなくなる場合に備え、あらかじめ代理人を指定しておくサービス(※1)
●「遺言代用信託」: 信託銀行等に財産を信託して、生存中は本人のために管理・運用してもらい、亡くなった後には、配偶者や子に財産を引き継ぐことができる信託
●「成年後見制度」や「家族信託」:法律に基づく制度
●全国の社会福祉協議会が運営する「日常生活自立支援事業」
今回はこのうち、日常生活自立支援事業について見ていきます。
日常生活自立支援事業とは
日常生活支援事業とは、全国の社会福祉協議会が提供するサービスの一つです。
大きく分けて3つのサービス項目があります(※2)。
・福祉サービスの利用援助(利用支援)
住宅改造、居住家屋の賃借、日常生活上の消費契約および住民票の届出等の行政手続きに関する援助、その他福祉サービスの適切な利用のために必要な一連の援助
・日常的金銭管理サービス
以下の項目についての預金の払い戻し、解約、預け入れの手続き
(1)年金および福祉手当の受領に必要な手続き
(2)医療費を支払う手続き
(3)税金や社会保険料、公共料金を支払う手続き
(4)日用品等の代金を支払う手続き
・書類等の預かりサービス
「年金証書」「預貯金の通帳」「権利証」「契約書類」「保険証書」「実印・銀行印」「その他、実施主体が適当と認めた書類(カードを含む)」を保管
書類等預かりサービスは金融機関の貸金庫を利用する場合もあり、その場合は実費負担となります。
日常生活支援事業のしくみは次表の通りです。
図は(※2)に基づき筆者が作成
「日常生活自立支援事業」の対象者と利用方法
日常生活自立支援事業の対象となる人と利用方法は以下の通りです(※3)。
利用対象者
利用対象者は、判断能力が不十分な方(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)となっています。
そして、このサービスの契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人です。
利用の方法
日常生活支援事業は、社会福祉協議会と本人との契約によってサービスが利用できます。
認知症の場合は、一定程度のサービス内容について判断ができ、利用の意志が判断できることが求められます。
家族としては少し難しいと感じるかもしれませんが、事前相談により解決できるケースも多いと考えられますので、一度相談してみると良いでしょう。
費用負担
相談や支援計画の作成にかかる費用は無料です。
福祉サービス利用手続き、金銭管理などのサービスを利用する際は、地域社会福祉協議会ごとに料金が決められていますが、利用内容によって金額に幅(月額500円~1万500円)があります(※3)。
いずれも、低所得者等は減免されます。
家族が遠隔地に住む場合や、本人が自分の財産管理について家族へ任せることに拒否感を持つ場合には、資産継承や相続前のステップとして利用することもできるのではないでしょうか。
特殊詐欺などへの対策としても有効であり、高齢者本人の理解を得ながら進めるのが良いでしょう。
まとめ
高齢者の預金などの資産管理についてのしくみと、社会福祉協議会が運営する「日常生活支援事業」についてまとめました。
特に、家族が遠隔地に住む場合には、特殊詐欺への対策としても有効と思われますので、検討してみるのはいかがでしょうか。
出典
(※1)三菱UFJ銀行 「予約型代理人」サービスの導入について
(※2)全国社会福祉協議会 日常生活自立支援事業の概要と支援の現状 P5
(※3)内閣府 日常生活自立支援事業の概要 平成25年度神奈川における日常生活自立支援事業より一部抜粋) P6
執筆者:植田英三郎
ファイナンシャルプランナー CFP
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