年金が振り込まれない! 年金事務所に確認しに行こうと書類を整理したら年金請求を忘れていたことが発覚……どうすればいいですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月19日 22時30分
65歳になり、そろそろ年金が振り込まれるとワクワクしていたAさん。しかし、半年が過ぎても振り込まれず、年金事務所に確認しに行こうと、念のためしまい込んでいた書類を読んでみると、年金受給には請求書の提出が必要だとわかりました。年金請求を忘れて時間がたってしまった場合、その分の年金は受け取れないのでしょうか。確認してみましょう。
年金を受け取るには請求することが必要!
公的年金は請求しなければ受け取ることができません。国民年金法第16条と厚生年金保険法第33条に「保険給付(給付)を受ける権利は、その権利を有する者の請求に基づいて、実施機関(厚生労働大臣)が裁定する」とあり、受け取る時期になれば、自動的に振り込まれるわけではありません。(括弧は国民年金保険法)
公的年金を受け取るのは、原則65歳からですが、受け取る人の働き方や生年月日等によって受け取る時期が異なります。その人の年金を受け取る受給開始年齢の3ヶ月前になると、日本年金機構から緑色の封筒が届きます。
緑色の封筒の中には、その人専用の請求書が入っています。住所、氏名、生年月日や年金加入履歴等が印字されています。誕生日の前日以降に手続きすることができるのですが、Aさんのように請求することを忘れている人が少なくないのです。
年金には5年の時効がある!
65歳からの年金は、遅らせると増やすこと(繰下げ)ができます。その人の受給開始年齢が65歳からであれば、請求しないことで、自動的に繰下げ待機に移行していきます。
特に注意が必要な人は、65歳前に受給開始年齢になる人です。なぜなら、65歳前の年金は繰下げすることができないからです。年金には時効があり、年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を経過したときは、時効によって消滅します。(参考:国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項)
65歳前に受給開始年齢になる人は、厚生年金保険の加入期間が1年(12ヶ月)以上ある人です(共済も同様)。生年月日や性別、加入する年金等によって受給開始年齢が異なります。
具体的に男性の場合、昭和36年4月1日以前生まれ、女性の場合、昭和41年4月1日以前生まれの人です(女性で共済加入の場合は男性の生年月日となります)。
事例:Aさんは、早くに請求しましょう
Aさんを事例にお伝えします。Aさんは、昭和32年4月11日生まれ(67歳)の男性。厚生年金保険期間が400月あります。受給開始年齢は、63歳です。63歳から65歳になるまでの年金を「特別支給の老齢厚生年金」といいます。
65歳前の年金は、繰下げできないことから、原則は63歳から65歳までに請求する必要があります。もちろん、65歳になっても請求はできます。ただし、68歳を過ぎてしまうと時効にかかってきます。68歳までに、特別支給の老齢厚生年金の請求をしましょう。
特別支給の老齢厚生年金(65歳前)の請求をすると、65歳時にははがき(年金請求書)の入った封筒が届くので、引き続き65歳以降の年金を受け取るのであれば、そのはがきを投函します。また、老齢基礎年金と老齢厚生年金どちらか一方のみ受け取ることもできます。希望する受取方法について受取方法欄にチェックをします。
65歳からの年金を繰下げするのであれば、そのはがきを出さないでいると、特別支給の老齢厚生年金は失権し、繰下げ待機に入ります。
Aさんは65歳を過ぎているので、はがきは届きません。65歳過ぎてから初めて請求する際は、請求時に「老齢年金の受取方法確認書(老齢年金の繰下げ意思についての確認)」をすることによって、65歳からの年金を繰下げするかどうか意思確認をします。
年金請求を忘れていたら、そのままにしない
仮にAさんの年金の受給開始年齢が65歳からであれば、慌てなくても大丈夫です。請求を忘れていたイコール繰下げ待機になっているということになります。どのように受け取るのか一度、年金事務所、もしくは専門家に相談されるのも一案です。
前段でお伝えしたように、年金には「時効」があります。年金請求は郵送でもできますが、Aさんのように忘れていた場合、必要な添付書類に不備があると戻される可能性もあり、時間がかかってしまいます。近くの年金事務所などの相談窓口等を利用し、早めに相談(請求)しましょう。
出典
日本年金機構 老齢年金を請求する方の手続き
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
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