60代後半の“おひとりさま”です。兄弟姉妹もいないので、将来認知症になったらどうなるのか心配です。認知症になったときの財産管理などの方法を教えてください ~成年後見制度~
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月22日 9時0分
長沼(仮名)さんは68歳です。両親は他界しています。夫とは死別しており、子どもはいません。 自分が認知症になり、お金の管理ができず、在宅介護サービスの契約やひとりで暮らせなくなり、介護施設に入るとなったら、誰が手続きをしてくれるか心配に思うようになりました。そこで、FPにどんな支援制度があるのかアドバイスしてもらうことにしました。
成年後見制度とは
「成年後見制度」は、2000年4月に介護保険制度とともにスタートしました。高齢になると体が衰えるので介護保険制度で支え、認知能力の衰えは成年後見制度で支えるというものです。
認知症、知的障害、精神障害などの理由で、判断能力が不十分になり、財産管理や身上保護などの法律行為を本人に代わってサポートするのが成年後見制度です。
分かりやすくいうと判断能力が不十分になった人に代わって、銀行のお金の引き出しや、介護施設などの契約を家庭裁判所の管理の下でサポートする制度です。
成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」の2つがあります。この手続きを申し立てることができるのは、ご本人やその配偶者、四親等内の親族、市区町村などです。
判断能力のある元気なうちに、認知症や障害の場合に備えて、あらかじめご本人自らが選んだ親族など(任意後見受任者)に、代わりにしてもらいたいことや報酬を公正証書で契約(任意後見契約)しておくのが任意後見制度です。任意後見契約の効力は家庭裁判所で任意後見監督人が選任されて初めて生じます。
これに対し、判断能力が不十分になってから家庭裁判所が、後見人や仕事内容、報酬を決定するしくみが法定後見制度です。判断能力に応じて軽いほうから「補助」「保佐」「後見」の3つの種類(類型)が用意されています。
成年後見制度を利用する前に知っておきたいこと
・法定後見制度では子どもが成年後見人に選ばれるとはかぎらない
法定後見制度を利用するには、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に成年後見人などの選任を申し立てます。このとき、裁判所が子どもなどの親族を不適切だと判断すると、弁護士や司法書士などの専門職後見人が選任されます。福祉を理解しない専門職が後見人に就くと、仕事が事務的になり家族が不満を覚える可能性があります。
親族を後見人にしたいのなら、任意後見制度を活用するといいでしょう。
・申し立てが受理されると途中でやめることができない
申し立てが受理されると、申立人が候補者として推薦する方(親族など)が成年後見人などに選任されそうにないという理由では、原則として申し立ての取り下げは認められません。法定後見では、誰が成年後見になるか分からない状態で、申し立てをするかどうかの判断をくださないといけないのです。
・後見人に払う報酬が年間24万円以上発生する
任意後見制度の場合は、任意後見人に対して、任意後見契約に基づいて報酬が支払われます。月1万~5万円が相場です。親族が後見人になれば、0円の場合もあります。なお、任意後見監督人へは、家庭裁判所に報酬付与の申し立てを行った場合に、家庭裁判所の決定した報酬を本人の財産から受け取ることができます。月1万~3万円が相場です。
一方、法定後見の場合は家庭裁判所が報酬を決めます。月2万円(基本報酬)、財産管理額が高額な場合は月3万~6万円が相場です。成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人が選任された場合の報酬、月1万~3万円が相場です。
・本人の全財産は後見人が管理する
後見人が選任されると、家族でも本人の財産に一切かかわることができなくなります。預金の引き出しだけ後見人に頼むということはできません。
成年後見制度の目的は、本人の財産を維持・管理することです。そのため家族でも、本人の財産でリスクのある資産運用の開始や、相続人のための相続対策をすることができなくなります。
また、親族後見人や専門職後見人のなかには、全財産を管理することを悪用して利用者の財産を横領するケースがあります。横領を防ぐしくみとしては、後見制度支援信託があります。これは、本人の財産のうち、日常的な支払いをするのに必要十分な金銭を預貯金などとして後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行などに信託するものです。
まとめ
このように、成年後見制度は使い勝手が悪い制度です。認知症の方などへの他の支援制度もありますので、成年後見制度の申し立てをする前に、これらの支援制度の活用を検討しましょう。
例えば、全国銀行協会は、認知症患者の預金の引き出しについて、原則として預金者本人の意思確認が必要ですが、預金者本人の生活費、入院や介護施設費用などのために資金が必要な場合には、代理権がない親族でも引き出しを認める場合もあります。
また、口座名義人以外の家族の方に、日常的な預貯金の引き出しを代行してもらうための「代理人カード」を銀行で発行してもらうという方法もあります。
いろいろな手段を講じたうえで、最終的に成年後見制度を利用するとよいでしょう。
出典
一般社団法人銀行協会 預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引出しに関するご案内資料の作成について
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー
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