高齢になる母の預金管理が必要かもしれません。話題の「家族信託」ならそれほど費用を掛けずに利用できるでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月24日 10時10分
親の認知判断能力がなくなってしまうと、金融機関としては顧客本人の財産保護の観点から口座が凍結せざるを得ず、たとえ家族でも、出し入れができないといったケースも想定しておく必要があるかもしれません。たとえ、そうなったとしても親の財産の管理ができる方法として、「家族信託」が話題になっています。 本記事では、親の財産管理をする1つの方法としての「家族信託」について解説します。
家族信託とは?
「家族信託」とは、『財産管理の一手法』です。
具体的には、自分の保有する預金や不動産などの資産の管理を信頼できる家族に託し、自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理・処分を家族に任せる仕組みです。すなわち、家族の家族による家族のための財産管理(信託)であるといえます。
次のようなケースで家族信託を活用することが考えられます。
1. ご自身の意思能力(判断能力)の低下に備えた対策を考えたい場合
2. ご家族の意思能力(判断能力)の低下に備えた対策を考えたい場合
3. 遺言に代わる資産の承継方法を検討している場合
4. 二次相続以降の資産承継を考える場合
5. 円満な事業承継対策を講じておきたい場合
家族信託のメリット
1.認知症等のリスクに備えることができる
認知症や脳梗塞などで本人の判断能力が低下してしまうと、資産が凍結され、管理・処分がスムーズにできなくなってしまいます。また、相続対策にも着手しづらくなるリスクがあるため、そういったリスクに備えることが可能となります。
2.任意後見制度よりも財産管理の自由度が高い
認知症等のリスクへの対応として、任意後見制度があります。この任意後見制度は、成年後見制度の1つですが、裁判所の監督下のもとでの財産保全が求められます。
したがって、本人の理想どおりに活用されづらく、財産管理の自由度が低くなり傾向があります。一方で、家族信託の場合には、受託された家族の責任と判断で財産管理を行うことができます。
3. 親の判断能力が低下する前に財産の管理・運用を開始することができる
任意後見制度では、親の判断能力が低下したあとに効力が発生しますが、家族信託は、判断能力が低下する前に、資産の管理・運用を開始できます。したがって、親が元気なうちにご自身の資産がご自分の意向に沿った管理・運用がなされているかを確認できます。
4.法定相続の概念にとらわれず、2次相続以降の資産承継先の指定が可能
相続対策として、生前贈与や遺言書の作成などがあります。しかし、生前贈与や遺贈をした財産について、2次相続以降の資産承継先の指定はできません。
一方、家族信託を利用すれば、最初に指定した受益者が万が一亡くなってしまった場合でも、その次の受益者(2次相続者)を誰にするか指定ができます。
5.共同不動産の相続問題を回避することが可能
親の財産であった不動産を複数の相続人が共同相続した場合には、共有者全員が協力しないと処分できません。たとえば、兄弟姉妹が不動産を共同相続してしまうと不動産の活用や処分などで紛争が起きるかもしれません。
一方、家族信託を活用することで、共同相続人としての権利・財産的価値の平等を実現しながら、管理処分権限を共有者の1人に集約させることができます。結果として、不動産の活用や処分をスムーズに行うことができます。
家族信託にかかる費用は?
家族信託は、家族への財産を家族へ信託をするものですので、基本的には、高額な費用がかかることはありません。ただし、下記のような費用が発生します。
1. 費用項目
(1)コンサルティング費用
・ご要望をヒアリングし、整理する費用
・家族会議への参加し、調整する費用
・適切な専門家へのアレンジ、調整費用
(2)手続きに関する費用
・公正証書作成費用
・不動産登記に関する費用
・不動産登録免除税
・信託口座新設に関する費用
2. 費用の目安
費用の目安を下記しますが、費用はケースバイケースですので、司法書士や弁護士などの専門家に問い合わせるようにしましょう。
(1) 不動産を含む場合
対象となる不動産(信託財産額)の1.5〜2%
(2)現金のみの場合
おおよそ20~40万円
まとめ
高齢になる母の預金管理を行う際に、「家族信託」を使うことで、受託契約をした時点から、委託された家族が預金管理をすることが可能です。つまり、任意後見制度とは違って、本人が元気なうちに自分の資産が自分の意向に沿った管理・運用がなされているかを確認できます。
また、本人の判断能力が喪失した後も、スムーズに、本人の意向に沿った財産管理を実行に移すことができます。
また、費用については、家族への信託ですので、基本的に多額の費用がかかることはありません。なお、具体的に家族信託を活用する場合には、家族信託の活用要否や任意後見制度など他の方法の活用も含め、司法書士や弁護士などの専門家に相談するのがお勧めです。
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー
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