退職金「1500万円」は分割で受け取ると「損」をする!?「一括」の場合との収支を比較
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月31日 4時20分
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定年後に受け取れる退職金は、老後の生活やローンの一括返済など、さまざまな目的での活用を予定している人も多いと思います。しかし、退職金は受け取り方で損をしてしまうこともあるので注意が必要です。場合によっては税金が多くかかる恐れがあります。 そこで本記事では、退職金を「分割」で受け取った場合と「一括」で受け取った場合に税金にいくら差があるのか、退職金を1500万円と仮定して比較していきます。
退職金1500万円を分割で受け取った場合
ここでは、退職金1500万円を確定給付企業年金として10年間に分けて受け取り、予定利率2%(資本回収係数0.1113)で運用した場合を想定します。東京都在住の独身者が対象です。65歳未満と65歳以上で控除金額が異なるので、それぞれ分けて計算していきます。
60歳から64歳までの金額
退職金1500万円を10年に分割し、予定利率を含めて計算すると1年間で受け取れる金額は166万9500円です。
この金額から公的年金等控除を差し引きます。この場合の公的年金等控除の金額は65歳未満の場合は「収入金額の合計×0.75-27万5000円」です。そのため、97万7125円が雑所得となります。さらに所得税では基礎控除の48万円を受けられます(社会保険料控除を受ける場合はさらに課税所得を減らすことができます)。
1000円以上194万4000円までの所得税率は5%なので、所得税は2万4856円です。住民税は所得割と均等割に分かれており、基礎控除が43万円、一般的な税率は10%となっています。これを計算すると、所得割は5万4712円です。さらに均等割は一律5000円なので、合計額は5万9712円となります。
これらを差し引くと、年間での手残りは158万4932円です。この金額を5年間受け取れるので合計792万4660円が実際に60歳から64歳に受け取れる金額です。
65歳から70歳までの金額
65歳からは、公的年金等控除の計算方法が異なります。また、公的年金を受け取れるので、確定給付企業年金と合算することになるので注意が必要です。もっとも、今回は簡易的に確定給付企業年金のみの収入として計算します。
65歳からの収入は、確定給付企業年金が166万9500円です。公的年金等控除は、事例の場合は「収入金額の合計-110万円」になるため、所得は56万9500円となります。
所得税の基礎控除は48万円、所得税率は5%です。そのため、所得税は4475円となります。そして住民税の所得割は基礎控除を引いた金額に10%をかけるので1万3950円です。均等割5000円を合わせると1万8950円になります。
確定給付企業年金から差し引くと、164万6075です。5年間で823万375円を受け取れます。64歳までの5年間と合わせると最終的な受取額は「1615万5035円」です。
引かれる税金としては60歳から64歳までが42万2840円、65歳から70歳まで11万7125円です。税金は多く引かれてしまいます。しかし、運用益によって受取額は変化するものの、10年間の総額は1500万円の退職金よりも多く受け取れる可能性があります。
退職金1500万円を一括で受け取った場合
退職金を一括で受け取る場合は退職所得控除を受けられます。
退職所得控除は勤続年数で計算式が異なり、勤続年数が20年を超える場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」です。勤続年数を30年とすると、退職所得控除は1500万円になります。そのため、退職所得控除を受けると課税対象になりません。
この場合は税金を引かれることなく「1500万円」を受け取れます。
一括で受け取るほうが税金面では損をしないが、分割のほうが収支は多くなる
本事例では、分割で受け取ったほうが税金を多く引かれてしまうことがわかりました。分割で受け取る場合は、さらに社会保険料を引かれてしまうので、その差は大きくなるでしょう。そのため、税金面を考えると一括で受け取るほうが損をしないで済みます。
しかし、確定給付企業年金を分割で受け取ることで合計の収支としては多く受け取れる点はメリットです。また、老後の生活費にあてやすいというメリットもあるので、自身に合った受け取り方を考えてみましょう。
出典
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 No.1199 基礎控除
東京都主税局 個人住民税
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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