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亡くなった夫(妻)が加入していた年金を発見。遺族は受け取れる? 税金はかかるの?

ファイナンシャルフィールド / 2024年5月31日 21時20分

亡くなった夫(妻)が加入していた年金を発見。遺族は受け取れる? 税金はかかるの?

現役の会社員だった夫(または妻)が亡くなり、残された配偶者が戸惑うことの多い手続きの1つに、故人が加入していた年金の受け取りがあります。年金は預金や不動産のような今ある財産とは違い、将来もらうものですから、本人が亡くなるまで配偶者はその存在に気付かないことがあるからです。   そこで、会社員の方が主に加入している年金の種類、亡くなられた場合に遺族が受け取れる権利、そして受け取る際に税金がかかるのか、の3点について解説します。

厚生年金に加入していた場合、遺族厚生年金を請求できる

企業にお勤めの方が加入している代表的な年金が、厚生年金です。
 
厚生年金は、原則として企業にお勤めの方や公務員、所定労働日数などの条件を満たしたパートやアルバイトの方が加入する公的年金の1つです。亡くなった夫(妻)が会社員であれば、まず加入していると考えてよいでしょう。
 
(例えば建設業においては、令和5年10月の国土交通省の調査によると、厚生年金の加入率は企業単位で99.5%、労働者単位で95%となっています(※1))
 
在勤中の標準報酬額や加入期間などに応じた年金額を、原則65歳以降生涯にわたって受け取ることができます。
 

(遺族が受け取れる権利)
受給前や受給中の方が亡くなった場合、遺族の方は次に挙げる要件を満たせば、遺族厚生年金を受け取ることができます(※2)。
1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
4. 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

 
ただし、受け取る方の年齢や性別によって、次のような制限があります。
 

・子のない30歳未満の妻は、遺族年金の支給が5年に限られる。
・子のない夫は、妻の死亡時55歳以上であれば受け取れるが、遺族基礎年金を受給できる場合を除き、受給開始は60歳からとなる。(つまり、55歳未満では受け取れない)
・子のある夫で55歳未満の場合、子(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方)に年金が支給される。
・子のある夫で、55歳以上、かつ遺族基礎年金を受け取れる方に限り55歳から受給できる(遺族基礎年金を受け取れない場合は、60歳から受給できる)。

 
なお、やむを得ない事情がある場合を除き、遺族厚生年金は配偶者の死亡日(権利発生日)から5年で時効となります。万が一思い当たる方は、放置せずに年金事務所に相談するようにしましょう。
 

(税務上の取り扱い)
遺族厚生年金は非課税です。つまり、相続税も所得税もかかりません。申告も不要です。

 

退職年金に加入していた場合、遺族は死亡一時金を請求できる

企業の従業員が退職時に受け取れる退職金には、主に「退職一時金」と「退職年金」の2つがあります。この内、退職年金には、大きく分けて支給額があらかじめ決まっている「確定給付年金」と、支給額が加入中の運用成績によって変わる「確定拠出年金」の2つがあります。
 
これらのうち、どれを採用しているかは勤務先によって異なります。
 
ちなみに、令和5年就労条件総合調査(厚生労働省)によると、退職金制度を採用している企業は全体の74.9%。その内、退職年金制度を採用している企業(退職一時金制度との併用を含む)は31%です(※3)。
 

(遺族が受け取れる権利)
これまでの積立額などに応じて遺族一時金を請求できます。
 
(税務上の取り扱い)
受け取った死亡一時金は、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものであれば、相続税の対象となります(死亡後3年を経過したものは、受取人の一時所得として所得税の対象)。ただし、以下の額までは相続税がかかりません。
 
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
 
たとえば、受け取った死亡一時金が計1000万円、法定相続人が妻と子1人の計2名だった場合、非課税限度額は1000万円となるため、相続税がかかりません。

 
ただし、預金や不動産など、他の相続財産があれば相続税申告が必要になる場合があります。申告が必要かどうかは、退職年金だけでなく、他のすべての相続財産を集計した上で判断する必要がある点には注意が必要です。
 

任意で個人年金保険に入っていた場合も、死亡一時金を請求できる

厚生年金や退職年金に加えて、さらに老後の保障を厚くするために、会社員の方が会社や組合などを通じて独自に年金に加入している場合があります。
 
このような年金は、「個人年金保険」「年金(または積み立て)共済」などの名称で、会社や組合単位(いわゆる団体扱い)で募集され、加入すると保険料を給与天引きで支払うことができます。
 

(遺族が受け取れる権利)
退職年金と同様に、遺族の方が一時金を受け取ることができる場合があります。その額は保険商品ごとに異なりますが、死亡時までに積み立てた額や運用収益などで計算されます。
 
(税務上の取り扱い)
前項の「企業年金」の場合と同じく、相続税の課税対象ですが、これも同じく500万円×法定相続人の非課税枠があります。

 

自動移管された確定拠出年金がないか調べてみましょう

これはすべての方にあてはまるわけではありませんが、亡くなられた方が過去に転職や一度退職した後再就職したことがある場合は注意が必要です。
 
前の勤務先の退職時に、積み立てた確定拠出年金を再就職先が指定する運営管理機関へ移管手続きしていない場合、年金の原資が国民年金基金連合会へ自動移管されている可能性があります。
 
統計によると、2024年2月現在、自動移管された方は約127万人に上り、その内55.9%の方は残高が残っている状態(※4)です。つまり、約70万人の方は確定拠出年金が事実上放置されていることになります。
 
自動移管された場合、1年に一度国民年金基金連合会から年金資産額や今後の手続き方法などが記載された「定期通知」が送られますが、宛先は年金の権利者ですので、遺族の方は気付かないことが多々あります。
 
もし、故人に転職や退職の経験があった場合、気になる方は問い合わせして確認することをお勧めします。
 

(遺族を受け取れる権利)
「死亡一時金」を請求できます。
 
(税務上の取り扱い)
「退職年金」の場合と同様に、相続税の課税対象になります。500万円×法定相続人の数で算出される非課税限度枠も同様に使えます。

 

年金の手続きは確実、着実に

在職中に夫(妻)を亡くされた場合は、故人の葬儀などに加えて、会社での退職手続きも行わなければならず、遺された方には負担がかかります。その上、今まで把握していなかった各種年金のことも対処しなければならないのは大変かもしれません。
 
時間はかかるかもしれませんが、年金の一つひとつについても、本記事を参考に、会社や年金事務所、保険会社で手続きをし、税務署や専門家などに確認しながら、間違いのないように進めてみてください。
 

出典

(※1)国土交通省 公共事業労務費調査における社会保険加入状況調査結果の公表 企業単位で 99.2%、労働者単位で 92% (令和6年3月29日付)P1
(※2)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
(※3)厚生労働省 令和5年就労条件総合調査概況 P12
(※4)国民年金基金連合会 iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2024年2月)
 
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。 

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