親の認知症が気になるし不動産の管理もあるので「後見制度」を検討しています。身内が後見人になれば費用もかからないでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月2日 9時20分
親が高齢になり認知症のリスクが高まると、不動産や預貯金などの管理が家族の大きな心配ごとになります。資産が凍結される事態を防ぐために、成年後見制度の利用を検討している人もいるでしょう。 身内が成年後見人になると、後見人に支払う報酬などの費用は負担しなくてよくなるのでしょうか。本記事では、身内が成年後見人になった場合の報酬の有無や、報酬に関する注意点をまとめました。
身内が成年後見人になれば後見人報酬は「なし」でもよい
成年後見人をつけた場合、被後見人の財産の中から、成年後見人が担う事務などの業務に対する報酬を支払う必要があります。成年後見人の報酬は、成年後見人からの申立てを受けて裁判所が決定する仕組みです。
報酬の基準は法律に定められているものではなく、裁判官が過去の実例などを踏まえて金額を決めます。報酬額の目安は、通常の後見事務に対する基本報酬が月額2万円、財産が高額で管理が複雑な場合などは財産額に応じて変動し、月額2万5000円~5万円程度です。
家族や親族などの身内が成年後見人になると、報酬を請求する申立て自体を行わないケースが多く、この場合の報酬は不要でもかまいません。身内が成年後見人の報酬請求の申立てをした場合は、申立てがなされない事案が多いことを踏まえて、第三者が成年後見人になった場合の相場よりも低い金額に設定されることがあります。
注意点(1)法定後見制度では身内が後見人になれるとは限らない
法定後見制度では、法定後見人を裁判所が選任します。法定後見制度の利用を申し立てる際には、後見人候補者を挙げられます。身内を候補者にした申立てでは候補者が後見人に選任されるケースが大半であるものの、100%ではありません。
身内を後見人候補者として申立てがなされた場合は、候補者が後見人にふさわしいかどうかを見極めたうえで、最終的な人選は裁判所が行います。次のようなケースでは、身内を後見人候補者としても、後見人に選任されない可能性があります。
●身内の間で意見の対立がある
●被後見人本人が候補者の選任に反対している
●被後見人の財産を運用する目的で申立てをしている
●候補者が多忙・健康上の問題があるなどの理由で後見事務に適さない
●専門性を求められる課題が見込まれる
●候補者と被後見人の利益相反が見込まれる(遺産分割協議など)
●候補者に業務をこなす自信がない
●専門職の支援を希望している
注意点(2)身内が法定後見人でも成年後見監督人がつくと監督人報酬が発生する
法定後見制度では、後見人の支援や不正防止などを目的に、法定後見人とは別に成年後見監督人が選任されることがあります。希望どおり身内が法定後見人に選任され、後見人の報酬をなしにできたとしても、成年後見監督人が選任されると監督人報酬が発生します。
成年後見監督人の報酬の目安は、管理財産の金額に応じて月額1万円~2万5000円です。後見人にサポートが必要な場合のほか、被後見人の流動資産額が1000万円を超える場合などにも、原則として専門家が成年後見監督人に就任することになります。
注意点(3)任意後見制度では身内を後見人に指名できるが任意後見監督人の報酬が発生する
任意後見制度は、認知症などで本人が判断能力を失う前に制度で支援を受ける内容や後見人になる人(任意後見受任者)を任意後見契約に定めておき、判断能力が失われたのちに契約を発効する制度です。
任意後見契約を発効するには、裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てなければなりません。任意後見受任者の身内(配偶者や直系血族、兄弟姉妹)は任意後見監督人にはなれず、任意後見監督人には被後見人の財産のなかから裁判所が決めた報酬を支払う必要があります。
任意後見監督人の報酬の目安は、管理財産の金額に応じて月額1万円~2万5000円です。
費用をかけずに成年後見制度を利用できるケースは多くない
成年後見制度の利用で報酬の負担が発生しないのは、法定後見制度で身内が法定後見人に選任された場合で、なおかつ成年後見監督人が選任されない場合です。身内が後見人になれば絶対に費用が発生しない、ということではない点に注意しましょう。
費用をおさえることも大切ですが、本当に大切なのは被後見人の財産を適切に管理することです。専門家のサポートを受けたほうがよいケースもあるため、慎重に検討しましょう。
出典
裁判所 成年後見人等の報酬額のめやす
法務省 成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A Q3~Q15 「法定後見制度について」
裁判所 東京家庭裁判所後見センター 後見センターレポート vol.21(令和2年1月)
裁判所 東京家庭裁判所後見センター 後見センターレポート vol.22(令和2年1月)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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