オリックス・金子選手から学ぶ「野球協約の減額制限を超えた減俸の提示」のニュース…これってどういうこと?
ファイナンシャルフィールド / 2018年11月26日 22時30分
日本のプロ野球は、選手と球団との来期の契約交渉時期となっています。 活躍した選手はウキウキで、活躍できなかった選手は暗い顔で契約交渉に向かうでしょう。 中には球団から大幅な年俸ダウンを言い渡される選手もいます。 今年は大物投手が「年俸6億円から年俸1億円への大幅ダウン(5億円減額)を言い渡されて契約交渉が難航している」などと報じられています。 その金額はあくまで推定値でしょうが、毎年こういう風に「野球協約の減額制限を超えた減俸が提示」というニュースを見ますね。 でもちょっと待ってください。 「野球協約の減額制限」ということは、「それ以上は減俸してはダメですよという決めごと」ではないのでしょうか? それが簡単に破られるなら、選手にとっては不利なのでは? あらためて野球協約を読んでみます。
本来は年俸1億円超えの場合40%までの減額制限
「日本プロフェッショナル野球協約2017」(※)の第92条には(参稼報酬の減額制限)という条項があります。
そこには次のようにあります。
『次年度選手契約が締結される場合、選手のその年度の参稼報酬の金額から以下のパーセンテージを超えて減額されることはない。ただし、選手の同意があればこの限りではない。その年度の参稼報酬の金額とは統一契約書に明記された金額であって、出場選手追加参稼報酬又は試合分配金を含まない。
(1)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円を超えている場合、40パーセントまでとする。
(2)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円以下の場合、25パーセントまでとする。』
年俸1億円を超えている人は40%までしか減額できない、1億円以下の場合25%までと制限されています。
ですから年俸6億円なら2億4000万円ダウンまでに制限されているということでしょうか。
それでもきついですね……。
ところが、前述の「年俸6億円から5億円減額して1億円なら契約するよ~」なんて、本来はとんでもない制限オーバーになるわけでまさに「減額制限」を超えているわけで、それはダメなのでは?
『ただし、選手の同意があればこの限りではない。』という一文がミソ
ところがこの中に『ただし、選手の同意があればこの限りではない。』という一文があるのがミソです。
選手が「今年の成績では年俸6億円から1億円になっても仕方ないです……」と同意すれば「減額制限」を超えてもかまわないとされているのです。
もし選手が「こんなの嫌だ~」と思ったら、コミッショナーに調停を求めるか、自由契約を選んで退団するかを選ぶしかありません。
調停は次のように書かれています。
『第94条(参稼報酬調停)次年度の選手契約締結のため契約保留された選手、又はその選手を契約保留した球団は、次年度の契約条件のうち、参稼報酬の金額に関して合意に達しない場合、コミッショナーに対し参稼報酬調停を求める申請書を提出することができる』
この「コミッショナー調停」は、たびたび起きていますので、プロ野球ファンならご存じでしょう。
選手の言い分が認められる場合もありますが、この「限度額超えの大幅年俸ダウン」を言い渡された選手は、やはり自分の成績のふがいなさを感じているのでしょうか?
調停ではなくて、「自由契約」を選び、他球団との交渉を選択する場合も少なくないようです。
球団は「大幅に減俸するけどあなたとは来年も契約するつもりなのですよ」という立場で提案してきます。
選手がそれを断り、調停も選ばないと言うことは、「もううちは契約しないから好きにしてください」ということで「自由契約」になるわけです。
「自由契約」を選んだ選手は他の球団と自由に交渉できますが、なかなかきびしい立場での交渉になります。
むろん、自由契約から這い上がり、活躍した選手も少なくありません。
ちなみに、円満(必ずしもそうでない場合もありますが)引退した場合、「任意引退」といって、他の球団に行くことはできずにプロ野球界を去るのが原則です。
プロ野球選手は入団するときは華々しいように見えても、退団が近くなってくると、とてもつらい立場ではないかという気がします。
※日本プロフェッショナル野球協約2017
Text:藤木 俊明(ふじき としあき)
副業評論家
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