親の終活を手伝っています。もしもの時に備えて、息子の私が親の口座から預金を引き出せるようにしたいのですが、対策はありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月12日 9時20分
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もし認知症になったりすると、銀行などに預けた預金の引き出しが難しくなります。こうした事態に直面する前に、預金口座から親族などが引き出せる「代理人カード」という仕組みがあります。 高齢者は体力の衰えや認知機能が低下する前に、この「代理人カード」を作成しておくと、非常に役に立ちます。
代理人カードの仕組み
高齢で身体機能や認知機能が衰えた方に対して、子どもなどの親族が、口座名義人本人に代わって「代理人キャッシュカード」により、預金を引き出せるようにした仕組みです。大手の銀行を始め多くの金融機関で導入され、本人が店頭に出向くことなく、預金が引き出せる制度です。
確かに、名義人のキャッシュカードを使い、知らされた暗証番号で出金することは可能ですが、他の相続人とのトラブルになる可能性もあり、できれば避けたい行為です。
高齢化の進展とともに、認知症を発症する患者も多くなり、預金の引き出しを巡って、金融機関とのトラブルも増える傾向にあります。この代理人制度は、金融機関にとっても窓口でのトラブルを減らすことが可能になるため、高齢者のいる家族などへ向けて推奨をしています。
この「代理人カード」は、高齢者自身に判断能力があり窓口へ出向くことができるうちに、カードの発行を依頼しなければなりません。
判断能力が衰えてくると、各種の契約ができなくなり、家族信託や成年後見人といった別の制度の世話になる可能性が出てきます。この代理人カードは、それ以前に作成することにより、預金の引き出しができない事態を避けることができます。
とくに名義人が病気で入院した、介護施設へ入居した、といった環境が変わったときに、このカードがあれば、代理人が引き出すことができます。例えば、病気の際の治療費、高齢者施設への入居金など、比較的大きな金額の手当てが必要なときに活用できます。
金融機関により利用条件も異なる
この「代理人カード」は、メガバンクを中心に、多くの金融機関で取り扱っています。具体的には、三菱UFJ、三井住友、みずほ、ゆうちょ、イオンなどの銀行のほか、地銀を含めかなりの銀行で取り扱っています。しかしネット銀行では、この仕組みを取り扱っていないので注意が必要です。
この代理人カードがあれば、本人に代わって代理人が、預金口座から引き出すことができます。この代理人となれる条件も各銀行により、多少異なります。
例えば、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、イオン銀行では、代理人の条件が「生計を同一にする親族1名」ですが、三井住友銀行、ゆうちょ銀行では、代理人の条件が「親族以外でも登録可能」で、かつ三井住友では2名の代理人が認められています。
代理人カードは、口座をもつ名義人本人が、金融機関の窓口で手続きをします。その際、名義人本人の確認ができる書類、本人口座の銀行印、キャッシュカードを持参することが必要で、金融機関によって多少差があり、他の書類が求められるケースもあります。認知機能の衰えがない時点で、この手続きをしなければなりません。
この手続きが済むと、金融機関から名義人あてに「代理人カード」が郵送されてきます。名義人に送られてきたカードを代理人に渡すことによって、代理人がATMなどで利用、預金を引き出すことができます。
そのため、手続きからカードの受け取りまでの手続きを、名義人自身が行います。「まだ元気だから大丈夫」と過信をするのは危険です。
カード利用の際の注意事項
「代理人カード」を利用する場合には、いくつかの注意が必要です。まず大前提として、作成は名義人本人が行うため、判断能力が落ちている、認知症の症状が出てきた、といった健康状態では作成ができません。家族など周囲の方が注意を払い、なるべく早い時点で助言をし、このカードを作成することをお勧めします。
またカードをつくる際も、最も多く利用している、年金の振込口座になっている、といった条件を満たしている金融機関を選ぶようにしたいものです。同時に、もし複数の預金口座を持っている場合は、このカードの作成を機に、なるべく口座を絞り込みましょう。
さらに代理人となった方は、名義人が必要とする経費だけを引き出すことにし、引き出したお金を流用することは厳禁です。他の相続人や親戚などの存在を念頭に、引き出した預金の使途を明記し、領収書なども保管しておくことです。そのことによって名義人のために、引き出しを代行しているという立場も、はっきりさせることができます。
認知症などの症状が進むと予見できるときは、代理人カードではなく「代理人制度」の利用も検討しましょう。「代理人制度」は金融機関を契約することにより、より幅広く権限が与えられます。
この契約をしていれば、名義人の認知機能が衰えたとしても、高齢者施設への入居金など限度額を超える引き出しができる、定期預金など金融商品の解約ができる、カードの紛失・破損による再発行ができる、といった行為が可能になります。
多くの金融機関で、この「代理人制度」は取り扱っていますので、高齢の家族の預金口座を放置したままにせずに検討しましょう。
認知機能の衰えが進行する可能性があれば、その対応策として、家族信託、任意後見人制度、成年後見人制度の利用も検討してもよいと思います。ただし経費もかかりますし、認知症を発症してしまうと、選択肢も狭くなりますので、早期の対応が必要です。
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。
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