会社員です。新しい勤務先はフレックス制なのですが、いくら残業しても残業代は支払われないのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月16日 8時30分
「フレックス制は残業をしても残業代がでないの?」という疑問を持ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。 今回は、「残業代がない」ということは本当なのか知るために、変形労働時間制や裁量労働時間制という、労働時間の応用編をお話しします。
フレックス制、1月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制ってどんな制度?
「勤務先の会社はフレックス制だから、自由に勤務時間を選べる!」と好意的な目で、変形労働時間制の一つである「フレックス制」を見ている方もいるでしょう。
労働基準法で、「1日8時間、1週間に40時間を超えるときには、割増賃金を払わなければならない」と規定されているのは周知の事実です。そう考えると、完全週休2日、国民の祝日も休日となる企業でなければ、どうしても、時間外労働に対する割増賃金は発生することとなります。
そのため、労働時間を算定しにくい業務の職場では、さまざまな変形労働時間制を適用して、超えた部分を少しでも時間外とみなされないよう工夫されていることは珍しくありません。
例えば、月初めや月末など、特定の週などに業務が忙しいと分かっているのであれば、「1ヶ月単位の変形労働時間制」、特定の季節(夏季、冬季など)、特定の月などに業務が忙しい業務であれば、「1年単位の変形労働時間制」、始業・終業の時刻を労働者に自由に選択させることができる場合には、「フレックスタイム制」など、各事業場の業務の実態に応じた選択ができるというのが、変形労働時間制のメリットといわれています。
一方では、「8時間を超えると割増賃金」と簡単にみなされるわけではないことから、どれが「時間外労働」なのか「休日労働」なのかが判断しにくく、結局、会社から受け取った給与明細の計算が本当にあっているのかどうか、自分では判断しにくいというデメリットがあることを知っておきましょう。
裁量労働制は裁量で労働時間を決められる制度?
ご相談者さまのなかに、「うちの会社は裁量労働制をとっているから、残業代はないのが当たり前」ということを言う方がいらっしゃいます。このように、「裁量労働制だから」といわれてしまうと、労働者の方も、それで納得しがちではあります。
ただ、労働基準法上定められている裁量労働制には、「専門型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」との2つがあり、それぞれ対象も手続きも詳細に定められています。本来ならば、こんな気軽に、残業代を支払わない理由に使われるべき制度ではないのです。
例えば、「専門業務型裁量労働制」の対象となる労働者は、新商品や新技術の研究開発者や、情報処理システムの設計者、コピーライターや新聞記者です。
「企画業務型裁量労働制」は、企業の企画部門で経営計画を策定する労働者や財務部門で財務状態等を策定する労働者が対象で、だれでもこの裁量労働制が適用となる労働者とはなり得ません。
また、適用とされるケースでも、労使協定で定めた時間などを超えたときには、時間外の割増賃金を支払う義務はあります。裁量労働制だから、残業代は支払われないという理屈は通りません。
その他、残業代の疑問と会社と意見が異なるときにしておきたいこと
前述した「変形労働時間制」や「裁量労働制」については、言葉を知っている方は多いものの、正しい対象労働者や適用条件、時間外となる割増賃金の計算方法までを知っている方は少ないものです。
「1日8時間、1週間40時間」という労働時間以外の勤務なのかどうか、変形労働時間制や裁量労働制が採用されているのであれば、通常の労働時間はどの部分か、割増賃金の対象となる部分はどの時間なのか、就業規則や雇用契約書、労使協定などを会社は作成、保存する義務があります。労働者も、しっかりと書面で確認しておくべきでしょう。
もし、終業時間が18時と決められているときに、18時10分に帰社したときには、「15分に不足する残業時間は切り捨てる」など、法改正に対応していない、また情報を更新していない条項が記載された就業規則を使い続けているケースも珍しくはありません。
「最初は作成した」「法改正があったが、それに伴う改正案を検討中」「会社の規模が小さいから対応しきれていない」「これまで何の問題もない」など、しっかりと書類を作成していない会社の言い分は、このように、何の正当性もありません。それでも、労働者に時間外割増賃金を払わなくてもいい理由にはならないのです。
労働者として、勤務先から受け取った契約書や就業規則はちゃんと目を通す、給与明細が正しいか会社任せにはせず、疑問点があれば、会社にちゃんと質問するなど、普段から、会社任せにはしない習慣を身に付けておくことはとても大切なことだといえるでしょう。
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
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