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【給与が下がったときの天引き額】職場の事業縮小で残業がほぼなくなる見込みです。残業代がなくなったら社会保険料も安くなりますか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年6月25日 10時10分

【給与が下がったときの天引き額】職場の事業縮小で残業がほぼなくなる見込みです。残業代がなくなったら社会保険料も安くなりますか?

給与から天引きされる社会保険料は、その給与額(報酬月額や報酬賞与額)に応じて決まります。給与に含まれる残業代は、月ごとの残業時間によって増減がありますが、残業代がなくなることで社会保険料も安くなるのでしょうか。   本記事では、残業代の増減による社会保険料への影響を解説します。

社会保険料とは

社会保険料とは、「厚生年金保険料」「健康保険料」「介護保険料(被保険者が40歳以上の場合のみ対象)」「雇用保険料」などの総称です。
 
「厚生年金保険料」「健康保険料」「介護保険料」は労使折半であるため、保険料を労働者と会社のそれぞれが負担します。一方で、「雇用保険料」については労使で負担割合が異なります。
 
なお、社会保険料には他にも「労働者災害補償保険料(労災保険)」があります。労災保険は、事業主の全額負担です。そのため、会社員の給与から天引きされる社会保険料には含まれません。
 

社会保険料の計算方法

社会保険料は、残業代を含めた給与や、賞与などの報酬額と保険料率によって決まります。
 

厚生年金保険料の求め方

厚生年金保険料は、「標準報酬月額」「標準賞与額」をベースに計算されます。保険料も労使折半となるため、保険料の半額が自己負担分となります。
 

【保険料の計算式(自己負担分)】

・給与の場合:「標準報酬月額」×保険料率÷2
・賞与の場合:「標準賞与額」×保険料率÷2

 
厚生年金保険料には、報酬月額の範囲に応じて区分された等級が設定されており、それぞれ決まった標準報酬月額に対応しています。例えば、報酬月額が25万円の場合、等級は17等級(報酬月額25万円以上27万円未満)に該当し、標準報酬月額は26万円になります。
 
なお、保険料率は一律18.3%(令和6年度)となっています。
 

健康保険料・介護保険料の求め方

健康保険料・介護保険料も、「標準報酬月額」「標準賞与額」をベースに計算されます。保険料は労使折半となるため、保険料の半額が自己負担分となります。なお、給与から天引きされる介護保険料の対象者は、40歳以上64歳までの人(介護保険第2号被保険者)です。
 

【保険料の計算式(自己負担分)】

・給与の場合:「標準報酬月額」×保険料率÷2
・賞与の場合:「標準賞与額」×保険料率÷2

 
標準報酬月額にも、報酬月額の範囲に応じて区分された等級が設定されています。ただし、等級の数字は厚生年金保険料とは異なる設定となっています。例えば、報酬月額が25万円の場合、20等級(報酬月額25万円以上27万円未満)に該当し、標準報酬月額は26万円になります。
 
保険料率は、加入している健康保険組合や自治体によって異なります。そのため、同じ標準報酬月額でも、納付額が違う場合があります。例えば、協会けんぽの令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険料の保険料率は、神奈川県10.02%、東京都9.98%(介護保険第2号被保険者に該当しない場合)となっています。
 

雇用保険料の求め方

雇用保険料は、勤務先の事業内容および労使それぞれで負担割合が異なります。
 
図表1

事業内容 労働者の保険料率 事業主の保険料率
一般の事業 6/1000(0.6%) 9.5/1000(0.95%)
農林水産・清酒製造の事業 7/1000(0.7%) 10.5/1000(1.05%)
建設の事業 7/1000(0.7%) 11.5/1000(1.15%)

出典)厚生労働省「令和6年度の雇用保険料率について」より筆者作成
 

保険料の計算式

給与総額×保険料率

 
なお、上記の「給与総額」には手当や賞与を含みます。
 

社会保険料が見直されるタイミング

会社から支給される給与には、残業代のように、そのときの働き方によって変動する手当も含まれます。そのため、残業代の支給状況によっては、毎月の給与が増減します。しかし、毎月の給与の変動に応じて、社会保険料も毎月増減するわけではありません。
 
社会保険料の見直しがされるタイミングは、「定時決定」と「随時改定」の2つがあります。
 

定時決定(年1回)

定時決定は、年1回、7月1日時点で勤めている会社において、4月、5月、6月の3ヶ月間の報酬月額に基づき、標準報酬月額を決める方法です。
 
支払基礎日数が17日以上(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日以上)ある月の総支給額の合計から、平均額を「報酬月額」として算出し、該当する等級の標準報酬月額が決まります。ここで決定された標準報酬月額が、基本的にその年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額となります。
 
そのため、4月、5月、6月の総支給額の増減が、9月からの社会保険料に反映されることになります。
 
時折、「3月から5月はあまり残業をしないほうがよい」といった声が聞かれます。これは、一般的には当月の残業が、翌月に支給される給与の残業代に反映されることが多いためでしょう。
 
3月から5月の残業が多いと、4月から6月の給与に含まれる残業代が多くなります。結果、4月から6月の標準報酬月額の増加によって「定時決定」による社会保険料が高くなってしまうので、それを避ける狙いがあると考えられます。
 

随時改定(報酬額に大幅な変更があった場合)

「定時決定」の年1回の見直し以外にも、年の途中での昇給や降給、固定的な手当(住宅手当など)の見直しなどにより、大幅に報酬額が変更となった場合、標準報酬月額も見直される場合があります。これを「随時改定」といいます。随時改定が行われるのは、次の3つの条件を全て満たす場合です。
 

・昇給または降給等により、固定的賃金に変動があった。
・変動月からの3ヶ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
・3ヶ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。

出典)厚生労働省「随時改定(月額変更届)」より筆者作成
 
上記の全ての条件を満たした場合、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4ヶ月目(例:9月に支払われる給与に変動があった場合、12月)から、標準月額報酬が改定されます。
 

残業代がなくなったら社会保険料は安くなる?

社会保険料には、「定時決定」と「随時改定」の2つのタイミングでの見直しがあることを解説しました。
 
「定時決定」では4月、5月、6月の3ヶ月における残業代も含めた報酬月額の平均を基準に、標準報酬月額が求められます。そのため、基本給や諸手当も含めた4月から6月の給与のうち、残業代が0円となることで、標準報酬月額が1等級以上下がれば、社会保険料も安くなる可能性があります。
 
なお、標準報酬月額が1等級以上下がることで、社会保険料が実際に安くなるのは、定時決定で見直しのあった年の9月からとなります。
 
また、社会保険料の見直しには「随時改定」もありますが、随時改定が行われる条件の一つは「固定的賃金に変動があった場合」です。残業手当は固定的賃金ではないため、残業代だけが大きく変動し仮に0円となることがあっても、基本給などの固定的賃金に変動がなければ、随時改定での社会保険料の見直しは行われません。
 

まとめ

社会保険料は、残業代も含めた給与によって、その保険料が計算されます。基本的には年1回の見直しがされますが、残業代に加えて基本給や住宅手当といった固定的賃金にも変動が生じ、その結果として報酬額が大きく変動した場合には、随時改定での見直しがされる場合もあるでしょう。
 
ただし、見直しがされても、実際に天引きされる社会保険料に反映されるまでに数ヶ月のずれがあることは、覚えておきましょう。
 

出典

全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和6年度保険料額表(令和6年3月分から)
厚生労働省 雇用保険料率について(令和6年度の雇用保険料率)
日本年金機構 定時決定(算定基礎届)
日本年金機構 随時改定(月額変更届)
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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