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娘が理系大学志望で大学院にも進学したいそうです。奨学金を借りる予定ですが、娘が「返済できない」と言っています。大学院の授業料後払い制度が創設されたそうですが、どのような内容ですか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年6月27日 5時20分

娘が理系大学志望で大学院にも進学したいそうです。奨学金を借りる予定ですが、娘が「返済できない」と言っています。大学院の授業料後払い制度が創設されたそうですが、どのような内容ですか?

大学卒業後の進路に大学院があります。大学院等への進学率は、12.5%(2023年)となっています。   学士課程修了者の進学率(2022年)を分野別でみると、「理学」は43.4%、「工学」は38.2%、「農学」が26.8%などと「理工農」への大学院進学率が高いのがわかります。国立大学であれば、理工系の学生は8~9割が大学院に進学するようです。   理系の大学に進学する場合は、大学院の学費もマネープランに入れておくと安心です。大学院の学費が心配な場合は、従来、貸与奨学金でまかなっていましたが、2024年秋から、貸与奨学金と違う仕組みの大学院の「授業料後払い」制度が開始される予定です(今後変更となる場合があります)。   FPがポイントを解説します。

大学院(博士前期課程)の分野別授業料、入学料および施設設備費の状況

大学院は、大学の学部で学んだ分野について、さらに専門的に研究を行う教育機関のことです。
 
大学院の課程には、修業年限2年の「修士課程」と修業年限5年の「博士課程」があります。その他、高度専門職業人の養成に特化した「専門職学位課程」があります。標準修業年限は2年(法科大学院は3年)です。
 
令和5年度の博士前期課程(修士課程を含む)の初年度納付金(入学料・授業料・施設設備費)は全平均で107万5806円、博士後期課程(博士課程を含む)の全平均は84万7011円、法科大学院など専門職学位課程の全平均は131万7460円となっています。
 
博士前期課程の初年度納付金について分野別に詳しくみてみましょう。


人文・社会科学:授業料72万2195円、入学料19万7756円、施設設備費6万4218円、合計98万4170円
理・工・農学:授業料87万477円、入学料19万9709円、施設設備費7万3097円、合計114万3283円
保健:授業料75万679円 入学料22万2643円、施設設備費7万4119円、合計104万7440円
家政・芸術:授業料89万3976円、入学料22万4774円、施設設備費19万4044円、合計131万2793円

となっています。
 
ちなみに、私立大学学部だと、初年度納付金は文科系学部が119万4841円、理科系学部が153万451円などとなっています。大学院は学部ほど学費が高くなく分野間のばらつきが小さいことがわかります。
 

「授業料後払い」制度とは

「授業料後払い」制度は、大学院修士課程(博士前期相当の課程を含む)や専門職学位課程の在籍者について、在学中は授業料を納付せず、卒業後の所得に応じて後払いする仕組みです。
 
具体的には、第一種(無利子)奨学金の枠組みを使い、日本学生支援機構が学生に代わって授業料相当額を原則大学に振り込み、卒業後に、学生から機構に所得に応じて納付します。
 
納付額は、卒業後の所得や子どもの人数に応じて決まります。年収300万円までは毎月2000円を返済し、年収300万円を超えた時点から所得に応じた金額を返済します。ただし、例えば子どもが2人いれば年収400万円程度まで納付が始まりません。
 
第一種(無利子)奨学金の枠組みを使うので、基本的には第一種奨学金の貸与を受ける際と同様の手続きが必要となります。
 
授業料後払い制度では、機関保証への加入が必須となります。利用者には機構が大学へ払った授業料の額等に応じて機関保証料が課されます。授業料相当額および保証料相当額を併せた額が貸与額となり、当該貸与額を「授業料支援金」といいます。
 
「授業料支援金」に加えて無利子の「生活費奨学金」(月2万円または月4万円)の貸与を希望することも可能です。「生活費奨学金」は、機構から学生に各月で振り込みされます。機関保証料は毎月、「生活費奨学金」から差し引かれます。
 
また、第一種奨学金と同様、優れた業績による返還免除制度の対象になります。
 

「授業料後払い」制度を利用できる方

2024年度に「授業料後払い」制度に申し込むことができるのは、次の(ア)(イ)のいずれかに該当する方のみです。


(ア) 2024年度春の大学院修士課程等入学者で、2023年度までに、大学学部等で「修学支援新制度」を利用したことがあり、学部等卒業後に就労等を経ずに大学院に進学した方

(イ) 2024年度秋以降の大学院修士課程入学者で、本人および配偶者(配偶者は定職収入がある場合のみ)の年収が 300 万円程度以下であるなど、これまでの第一種奨学金の家計基準と同じ基準を満たす方

 

留意点

保証制度は機関保証のみ選択できます。「生活費奨学金」のみの貸与を受けることはできません。
 
学生は、現行の第一種奨学金と「授業料後払い」のいずれか一方しか利用できません。「授業料後払い」を利用する際には、現行の第一種奨学金と比較してどちらが自分にとって適切か、よく検討して申し込むことが大切です。
 
「授業料後払い」制度の授業料には上限があります。国立大学では53万5800円、私立大学では77万6000円です。第一種奨学金の場合、修士課程の最大貸与月額は8万8000円(年額105万6000円)ですので、「授業料後払い」制度では支援額が減ってしまいます。
 
不足分は、「生活費奨学金」でまかなうか、それでも不足する場合は第二種奨学金(月額5・8・10・13・15万円)でまかなうことになります。
 
授業料後払い制度の利用中は、機構奨学生としての適格性を保たなければなりません。必要な手続きを怠ったり、学業成績が不振等の場合は、支援の「停止(一時中断)」や「廃止(打ち切り)」処分となる場合があります。
 

「授業料後払い制度」と貸与奨学金の主な違い

文部科学省の資料から引用すると、法的には第一種奨学金ですが、次のような違いがあります。


・月額ではなく、授業料相当額についてまとまった貸与を受けられること

・卒業後の所得や子どもの数に応じて納付額が定まる。例えば、子どもが2人いれば年収 400万円程度までは所得に応じた納付が始まらない

・原則として機構から大学に直接振り込みが行われること

「授業料後払い制度」は、授業料を支払うためのまとまった資金を用意することが難しい方、所得が低い間や将来子どもが生まれた際に、できるだけ返済月額を低くしたい方に適しているでしょう。
 

出典

文部科学省 大学院関連参考資料集(令和5年8月22日時点)学士課程修了者の進学率の推移(分野別)
文部科学省 学校基本調査 -令和5年度 結果の概要-
(参考)文部科学省 大学院段階の学生支援のための新たな制度に関する検討会議
文部科学省 奨学金事業の充実 授業料後払い制度に関する Q&A
文部科学省 私立大学等の入学者に係る学生納付金等調査結果について(令和5年度)
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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