子なしの共働き夫婦で離婚を考えています。妻のほうが収入は高いのですが、年金分割をしなくてはいけないのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月29日 1時40分
お金のことで折り合いがつかず、なかなか離婚に踏み切れないというケースは多いのではないでしょうか。財産分与に加えて年金分割まで求められるとなると、老後資金に不安を覚える人は少なくないでしょう。 そこで本記事では、「年金分割とはどのような制度なのか」「必ずしなければならないのか」「夫から妻へ分割するものなのか」といった、年金分割の基本的なルールについてまとめました。
相手から請求があれば年金分割しなければならない
年金分割とは、離婚後に元配偶者の厚生年金の一部を受け取れる制度です。婚姻期間の収入が少ない配偶者が、離婚によって老後に少ない年金しか受け取れなくなり困窮することのないよう、救済措置の一環として設けられました。
年金分割には「合意分割」と「3号分割」の2種類があり、それぞれ請求できる人や年金の按分割合の決め方が異なります。
■合意分割
夫婦の一方または双方からの請求により、婚姻期間中の双方の厚生年金記録を元に、夫婦間の協議(まとまらない場合は裁判所への申立)によって按分割合を決める方法です。
■3号分割
平成20年4月以降の婚姻期間中に、国民年金の第3号被保険者期間がある配偶者の請求によって、相手方の厚生年金記録を2等分する方法です。合意分割と3号分割の両方の条件に該当する場合は、合意分割の請求をした時点で3号分割の請求もあったとみなされます。
いずれの方法でも、請求権のある配偶者からの請求がなされたら相手方は応じる必要があり、年金分割をしないという選択はできません。裏返せば、請求が行われなければ年金分割をする必要はないのです。また、離婚後2年を過ぎると年金分割の請求はできなくなります。
年金分割は必ず「夫から妻」に年金を分割する制度ではない
年金分割について勘違いされがちなのが、「妻が夫の年金を分割してもらえる制度」ではないという点です。
年金分割は、配偶者の収入や資産が少ない場合の救済措置で、厚生年金のみを対象としています。婚姻期間中の働き方や収入の状況によって、夫から妻、妻から夫のいずれのパターンも考えられるのです。
以下で、2つのケースについてどのように年金分割がなされるのかを見てみましょう。
双方が会社員のケース
婚姻期間中に終始共働きで、お互いが会社員として厚生年金に加入していた場合、厚生年金保険料を多く納めていた側(収入が多い側)の厚生年金額を、協議によって決めた割合で合意分割し、相手側にわたすことになります。表題の方のように妻のほうの収入が多い夫婦の場合は、妻から夫へ年金が分割されるのです。
ただし、婚姻期間中に妻が専業主婦であった期間がある場合は、その期間に夫が払った厚生年金は、3号分割によって等分されることになります。
片方が自営業や専業主婦(夫)のケース
自営業者は厚生年金に加入できないため、自営業者から配偶者への年金分割はできません。夫婦の片方が自営業者であった場合は、収入の大小にかかわらず、婚姻期間中に厚生年金加入期間があるほうから、ないほうに年金分割することとなります。
表題のケースで妻が自営業者、夫が会社員ならば、請求されれば夫から妻に年金分割する必要があります。
また、夫婦の片方が終始専業主婦(夫)として配偶者の扶養に入っていた場合は、3号分割の対象です。性別にかかわらず、第3号被保険者期間があるほうから一方的に、厚生年金の半分を請求できます。
年金分割のルールを理解して請求すべきか検討しよう
年金分割は、夫から妻へ年金を分割する制度ではなく、単純に将来もらえる年金額を夫婦間で折半する制度でもありません。婚姻期間中の働き方や収入の状況によって、誰が請求できるのか、誰から誰へ分割するのか、年金の分け方などが異なります。仕組みを理解して、自分が分割をする側なのか分割を受けられる側なのかを確認しましょう。
また、年金分割の対象となるのは厚生年金のみです。「相手の年金全体の半分をもらえる」と考えていると、見込みよりも金額が少なくてがっかりする可能性があるため注意しましょう。
出典
日本年金機構 離婚時の年金分割
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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