73歳の親が年金額を多くもらいたいので「繰下げ受給」を利用すると言っていますが、「5年前みなし繰下げ制度」があると聞きました。通常の繰下げ受給とどう違うのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月29日 2時40分
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公的年金は原則として65歳から受け取れますが、繰下げ受給によって年金額を増やしたいと考える人もいるのではないでしょうか。年金の繰下げ受給の年齢は、2022年4月に70歳から75歳が上限に改定されました。 それに伴い、2023年4月に「5年前みなし繰下げ」の制度がスタートしていますが、制度について詳しい内容を把握していない人もいることでしょう。そこで本記事では、5年前みなし繰下げ制度について詳しく解説します。
年金の繰下げ受給とは?
年金の繰下げ受給とは、原則として65歳からもらえる年金を66歳以降75歳までの間に遅らせて、1ヶ月単位で年金受給額を増やす制度です。年金の受給開始時期を1ヶ月遅らせると0.7%の増額率が適用し、70歳で受け取れば42%、最長の75歳で受け取った場合は84%となり生涯にわたって継続します。
老齢基礎年金と老齢厚生年金それぞれの受給資格がある場合、どちらか一方のみを繰下げる選択も可能です。老齢基礎年金は65歳から、老齢厚生年金は70歳まで繰下げてから受け取るなど、そのときの収入状況を考慮して年金の受取開始時期を決めてみてもよいでしょう。
2023年4月から施行された「5年前みなし繰下げ制度」とは?
2023年4月から、5年前みなし繰下げ制度が始まりました。年金の繰下げ受給が70歳から75歳に引き上げられたことに伴い開始し、5年前に繰下げ受給をしたとみなしてくれる特殊な制度です。
年金受給権の時効は、5年間です。例えば、68歳まで繰下げ待機した場合、65歳から68歳までの年金を請求できます。その一方で、例えば73歳で繰下げ待機をすると、年金請求できるのは68歳以降の分までとなります。
この場合、5年前みなし繰下げが適用されれば、請求の5年前に繰下げ受給の申出があったものとみなされて増額された年金の受け取りが可能です。
5年前みなし繰下げ制度の対象者
5年前みなし繰下げ制度の対象者は、以下のいずれかに該当する人です。
・昭和27年4月2日以降生まれの人(令和5年3月31日時点で71歳未満)
・老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給権取得日が平成29年4月1日以降である
※令和5年3月31日時点で老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権取得日から起算して6年を経過していない人
80歳以降に年金請求を行う、請求の5年前より以前から障害年金や遺族年金の受給権がある場合、5年前みなし繰下げ制度の適用対象外となるため注意が必要です。また、過去の年金を一括受給することで、医療保険や介護保険の自己負担や保険料、税金などを過去にさかのぼるといった影響が発生する場合があります。
5年前みなし繰下げ制度適用時に受け取れる年金額の計算方法
73歳0ヶ月で年金請求を行った場合、繰下げ受給によって67.2%の増額率が適用します。老齢基礎年金の場合、満額の81万6000円(月額6万8000×12ヶ月分、2024年度の場合)に67.2%を乗じた54万8352円が加算された136万4352円を生涯にわたって毎年受け取れます。
その一方で、 73歳0ヶ月で過去5年分の年金を請求する場合、68歳0ヶ月時点における増額率である25.2%が適用されます。
老齢基礎年金の2024年度の満額となる81万6000円に25.2%を乗じた20万5632円が増額されて、102万1632円を生涯にわたって毎年受け取れます。さらに5年分の年金をさかのぼった510万8160円(102万1632円×5年)も受け取れます。
ただし、5年前みなし繰下げ制度を利用する場合、請求の5年前の日時点で繰下げ受給の申出があったものとみなし、増額された年金を一括で受け取ることになる点に注意しておきましょう。
制度の仕組みを理解して年金をどのように受け取るか検討しよう
5年前みなし繰下げ制度の開始によって、70歳以降も安心して繰下げ待機ができるでしょう。年金の受取開始時期を遅らせておき、健康面や経済状況などに応じた必要なタイミングにて一括で受け取ることも可能です。
現在、繰下げ受給を検討している人は、5年前みなし繰下げ制度の概要を理解して、上手に活用してみてください。ただし、5年前みなし繰下げ制度には対象者が定められているため、自身が該当するかどうかを必ず確認しましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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