あなたは知ってる? 認知症になったときのトラブル防止に「家族信託」が注目されているワケ
ファイナンシャルフィールド / 2018年12月6日 8時30分
最近「家族信託」が注目されています。テレビなどのマスコミで取り上げられることも増えています。「家族信託」とは何? どういった時に使うと有効なの? 私も知っておいた方が良いの? こうした疑問について考えます。
自分の家や預金を自由にできない
家族信託は、信託契約を交わし、財産を家族に“信じて託す”制度です。登場人物は3人です。
まず委託者(財産の持ち主)と受託者(財産を託される人)で、この二人の間で信託契約が締結されます。3番目の人物は受益者(利益を受取る人)ですが、これは委託者と同一人物の場合もあります。家族内で契約書を交わすなんて~おまけに何だかややこしい制度です。
どうして、このややこしい「家族信託」が注目されているのか、理由を探ります。
シニアにとっての心配事、それは「健康」と「お金」ではないでしょうか。特に健康面では認知症が心配です。というのも内閣府によると、2025年の認知症患者数は約700万人と推測されています。
認知症になって判断能力が衰えたら、色々な制約を受けることになります。認知症になると介護が必要になります。症状が進めば、家族で面倒をみることが大変なので、介護施設に入居することを検討すると思います。
その費用を捻出するには、銀行からまとまった資金を引き出したり、時には自宅の不動産を売却したりする必要があるかもしれません。
「判断能力がない」となると、そうした行為が出来なくなるのです。自分名義の預金や家なのに、自由に出来ないのです。“ヒドイな”と思いますが、シニアを巡るトラブルの防止と考えると納得できます。家族信託を使うことで、これらを解決することが出来るのです。
持ち家率の高いシニア層が注目している理由
どのような解決策になるか、見てみます。委託者:父 受託者:息子 受益者:父 として、父は息子に自宅を信託します(図表)。
受託者、つまり息子は契約内容に基づき、自分の判断で財産の管理や処分ができます。信託があった場合、不動産の登記簿謄本には所有権の移転と信託の登記がされます。
受益者は父ですから、父が介護施設に入所するために(父の利益になる)、自宅を賃貸にして家賃を得ることも、売却して費用を捻出することも出来るのです。
自宅を売却して介護施設の費用を捻出した場合、現金が残っていれば、それは引き続き息子が管理します。受益者は息子ではありませんので、自分の資産とは別に管理しなければなりません。
信託出来るものは、自宅だけではありません。投資用不動産を持つ人も増えています。“年金だけでは足りない老後の収入を家賃収入で賄いたい”とワンルームマンションを購入したり、相続税対策としてアパート経営をしたり、様々な形で不動産を所有している人がいます。
修繕や借家人の募集、賃貸契約等々、不動産の管理も高齢になると難しくなります。この場合も、子どもと物件を信託契約することで、管理等を任せることが出来ます。受益者を自分にすれば、家賃収入は今後も得ることが出来ます。
子どもは管理するだけで受益者ではありませんが、受託者に報酬を設定することも出来ます。信託契約には細かい希望も盛り込めますので、作成時に司法書士にアドバイスを求めるのがお勧めです。
知っている人は、もっと知りたい「家族信託」
近所の公民館で、司法書士による「家族信託」のセミナーがあり、参加しました。定員の30人が満席。講師も「本日は盛況で嬉しい」と話していました。
参加者は60~70歳代とみられる年代で、皆さん熱心に質問もされていました。また、個別相談を希望される方もいました。
今回ここに参加されている方々は、既に家族信託についてある程度の知識があり、我が家の相談として参加されているような印象を受けました。一般的には、家族信託の認知度は高くありません。
セミナーでは、土地の信託登記の件数についての説明がありました。2018年1月823件だったそうです。
これは、前年同月が342件なので、240%超の伸びです。この制度が急速に普及していることが分かります。家族信託の制度を知っておくと、相続を争族にしない対策にも使えると思います。
Text:宮﨑 真紀子(みやざき まきこ)
相続診断士
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