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契約社員で「基本給20万円」だけど、「交通費」や「食事手当」の支給は“契約条件”によるの? 賞与や退職金についても解説

ファイナンシャルフィールド / 2024年6月30日 5時20分

契約社員で「基本給20万円」だけど、「交通費」や「食事手当」の支給は“契約条件”によるの? 賞与や退職金についても解説

正社員と非正規社員(パートタイム・有期雇用労働者・派遣労働者など)の待遇にさまざまな差があっても「その条件で契約した以上は仕方がない」と考える人は多いようです。   しかし、正規・非正規社員の不合理な待遇差の解消は、国の政策として進められています。いわゆる「同一労働同一賃金」です。   「契約だから仕方がない」という考え方には根本的な誤解があります。労働法の基本に立ち返って、この問題について解説します。

労働契約は労働法の基準に従う必要がある

従業員は会社と労働契約を結んで働き賃金を得ますが、この労働契約の内容は従業員と会社が合意して決めます。
しかし、会社と従業員では交渉力に違いがあり、従業員の健康や安全確保を図る必要もあります。そのため、当事者間で結ぶ契約内容に国は干渉しない「契約自由の原則」を変更し、労働基準法などの法令で、労働契約で守るべき労働条件の最低基準を国が定めているのです。
たとえ会社と従業員の間で合意していても、この最低基準に反することはできません。契約の合意に優先するもので「強行規定」と言われます。
 

「同一労働同一賃金」は国の重要政策

わが国は「少子高齢化に伴う生産年齢人口減少」「働く人々のニーズの多様化」などの課題に直面しています。この対応として、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくり、働く人の個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会の実現を目指す必要があります。
働き方改革の「同一労働同一賃金」は、同一企業内の正社員と非正規社員(パート、有期労働者、派遣社員など)との間の不合理な待遇差をなくそう、という国の政策です。
どのような雇用形態を選んでも待遇に納得して働けるようにすれば、多様で柔軟な働き方を選択できるようになります。国の政策として「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」を目指しているのです。
 

「公正な待遇の確保」のため労働契約は制限を受ける

同一企業内の正社員とパート・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与など含むあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることは禁止されています。派遣社員についても、同様の規制が定められています。会社と従業員が合意しても「不合理な待遇差」は許されないのです。
 
「不合理な待遇差の禁止」には「均衡待遇」「均等待遇」という2通りの定めがあります。
 

均衡待遇(パートタイム・有期雇用労働法第8条)

待遇ごとに、その性質・目的に照らして、

1.職務内容(業務の内容+責任の範囲)
2.職務内容・配置の変更範囲(人材活用の仕組み、例えば職務の変更・転勤の有無等)
3.その他の事情

のうち適切と認められる事情を考慮した上で、不合理な待遇差を禁止する。
正社員と非正規社員との間でバランスのとれた待遇にしなさい、ということです。通勤交通費や食事手当等は分かりやすい例でしょう。後で具体的な指導例を説明します。
これに違反する待遇差は無効となり、損害賠償が認められます。もっとも、個別事案による合理的な待遇差は認められます。
 

均等待遇(同法9条)

正社員と非正規社員で「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」が同じなら、パート・有期雇用労働者を理由とした差別的取扱いは禁止されます。同一待遇にしなければなりません。
 

「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保の実現」は着々と進んでいる

公正な待遇の確保は着々と進んでいます。令和4年12月から令和5年11月までの1年間で労働基準監督署は約3万9000件の事実を確認、約8000件の報告徴収を受け労働局長の指導助言が行われています(図表1)。
 
図表1

厚生労働省 同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組の実施状況
 
今後は「基本給・賞与の差の根拠の説明が不十分な企業について、文書指導を行い経営者に対応を求める」という方針も明確にされています。
具体的な指導の事例をいくつか紹介します。
 

通勤手当

<是正前の待遇〉
正社員には実費支給、有期は1日あたり定額支給。
 
<待遇差の理由〉
有期は近隣からの通勤者が多く、通勤費用があまりかからないため(実際は遠方からの通勤者で自己負担している者もいる)。
 
<指導の内容〉
正社員と同一基準で支給するよう指導・是正。労働契約の期間の定め有無で通勤費用が異なるものではない。同一水準で支給しないのは不合理な待遇差である。
 

食事手当

<是正前の待遇〉
正社員とフルタイム有期には支給、パートには支給していない。
 
<待遇差の理由〉
1日一定時間以上勤務する者を対象、パートはその時間数に満たない(実際は昼食時間を挟んで勤務するパートもいる)。
 
<指導の内容〉
労働時間の途中に昼食休憩時間があるパートに、正社員と同一支給とするよう指導・是正。
食費の負担補助の目的から、食事をとる必要は正社員も短時間パートも同じ。所定労働時間が短いことを理由とするのは不合理な待遇差である。
 

基本給や賞与など

基本給や賞与は、諸般の事情を考慮して決定されるので「不合理な待遇差」とまでいえない場合も多いのですが、待遇差を客観的に確認分析して検討し直すように、といった個別の指導が行われています。
 

不合理な待遇差の解消を目指そう

同一労働同一賃金ガイドラインでは、正規・非正規の不合理な待遇差を解消し「多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から『非正規』という言葉を一掃することを目指す。」とまで記載され、国も後押ししています。
「契約条件だから仕方ない」という固定観念は捨てましょう。おかしいと思えば、まず会社に相談し説明を求めましょう。会社には相談・説明に応じる義務が定められています。
 

出典

e-Gov法令検索 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)
厚生労働省 パートタイム・有期雇用労働法のあらまし
厚生労働省 同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組の実施状況
 
執筆者:玉上信明
社会保険労務士、健康経営エキスパートアドバイザー

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