祖父が「相続対策」と言って、毎年100万円ずつ口座から「タンス預金」しているようです。これって脱税にならないんでしょうか? 将来大変なことにならないか心配です…
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月5日 2時20分
![祖父が「相続対策」と言って、毎年100万円ずつ口座から「タンス預金」しているようです。これって脱税にならないんでしょうか? 将来大変なことにならないか心配です…](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_306239_0-small.jpg)
祖父母が親族のことを考えて「相続対策」に取り組んでくれるのは喜ぶべきことですが、年々「タンス預金」を積み増している場合、何かデメリットはあるのでしょうか。「タンス預金は脱税なのではないか」と考える人もいるかもしれません。 本記事では「相続対策」として毎年一定額をタンス預金するリスク、代替的な解決策について解説します。ぜひ参考にしてみてください。
タンス預金自体が脱税行為というわけではない
「タンス預金=脱税行為」と捉えられることがありますが、タンス預金自体に問題があるわけではありません。誤解されやすい点ではありますが、タンス預金が「相続税逃れ」や「所得隠し」になりやすいという理由から問題視されているのです。本人が悪意をもって実施したかにかかわらず、税金逃れとみなされてしまった場合には、追徴課税を受ける恐れがあります。
タンス預金を相続対策として利用するリスク
タンス預金での相続対策は、同居している家族しかタンス預金の存在に気づきづらいこともあり、事前に知らされていない他の相続人と遺産分割時のトラブルになる可能性があります。同じ預金であれば、通帳などで可視化しやすい銀行預金のほうが遺産分割という観点において好ましいでしょう。
また、タンス預金を長く続けている弊害として、本人の認知機能の低下が挙げられます。本人が保管場所を忘れてしまうことや、「誰にのこすお金だったのか」を忘れてしまうことなどが起こり得ます。
暦年贈与という選択肢
毎年100万円のタンス預金を行うのであれば、「暦年贈与」の活用を検討してみてください。
相続対策としての「暦年贈与」とタンス預金との根本的な違いは、「生前にお金の所有権が移ること」です。そのため、お金が生前に渡ってよいのであれば、「暦年贈与」は有効な選択肢となります。
暦年贈与では、1年間(1月1日~12月31日)の贈与合計額が110万円以下の場合、贈与税が非課税です。資産総額が大きく、今後相続税がかかることが分かっているのであれば、税金を軽減する上で効果的な方法といえます。
一方でこの暦年贈与は「持ち戻し」制度という重要な注意点があります。「持ち戻し」制度では、贈与者の相続が実施されるとき、生前一定期間分の贈与額に対し「持ち戻し」が適用されます。「持ち戻し」が生じてしまった場合、お金を渡していた贈与者の持ち戻し期間における贈与総額が相続財産に足し戻され、相続税の課税対象になるのです。
2023年まで、この「持ち戻し」期間は3年でした。しかし2024年1月1日以降には段階的に7年へ対象期間が引き延ばされます。例えば2031年1月1日に贈与者が亡くなった場合、2024年1月1日以降に実施される暦年贈与の総額が「持ち戻し」対象となり、その金額に対して相続税が課税されてしまうのです。
法定相続人以外への贈与であれば「持ち戻し」の対象外
前項では暦年贈与の制度と、「持ち戻し」という注意点について解説しましたが、「持ち戻し」の対象にならずに暦年贈与を行う方法もあります。
それは「孫をはじめとした法定相続人以外へ贈与」する方法です。
法定相続人以外への贈与には「持ち戻し」は適用されません。子どもより孫に渡すほうが、将来の課税リスクを低減することができる点は押さえておきたいですね。
相続対策を行う場合はタンス預金以外の方法も検討を
本記事では「相続対策」として毎年一定額をタンス預金するリスク、代替的な解決策について解説しました。タンス預金は「相続税逃れ」とみなされる恐れや、遺産分割時にトラブルになる恐れがあります。タンス預金をするよりは、銀行預金で可視化しておくほうが望ましいでしょう。
また「相続対策」としては、タンス預金より「暦年贈与」を活用するほうがよいケースもあるでしょう。各家庭の考え方や資産状況にあわせて、よりよい方法を検討してみてください。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
財務省 令和5年度 税制改正の大綱
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
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