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先日、父に「昔は時給なんて500円くらいだった」と言われました。今は地方でも「900円」以上が当たり前だと思うのですが、当時はそれでも生活できていたのでしょうか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年7月6日 4時30分

先日、父に「昔は時給なんて500円くらいだった」と言われました。今は地方でも「900円」以上が当たり前だと思うのですが、当時はそれでも生活できていたのでしょうか?

2020年代に入って以降、最低賃金の上昇が顕著になり、最低時給の改定がされるたびに話題となっています。2024年現在、地方でも時給900円を超える求人はめずらしくありません。しかし、過去にはアルバイトの時給が500円程度だった時代もあります。   本記事では、1990年ころの最低賃金は都市部と地方ではどの程度だったのか、最低賃金で1ヶ月働いた場合の収入額はどれほどだったのかを振り返ってみましょう。

1990年から2024年までの最低賃金(時給)はどれくらい?

厚生労働省が公開している資料をもとに、1990年度(平成2年度)から2023年度(令和5年度)まで、34年間の最低賃金(時給)推移をグラフにしたものが図表1です。
 
図表1

筆者作成
 
「最低賃金が500円程度」と聞くと、今の若い人は驚くと思いますが、1990年度時点では東京都でも548円、沖縄県では468円という最低賃金が設定されていました。筆者が沖縄県内在住の大学生であった2000年代においても、沖縄県では時給500円台でのアルバイトが多数求人広告されており、しかも現在のような人手不足な状況では全くありませんでした。
 
2023年度では東京都の最低賃金が1113円、沖縄県でも896円と、1990年時点からは2倍近くに値上がりし、しかも長引く人手不足でアルバイト・パートなどの時給がさらに高騰していることを考えると、まさに隔世の感があります。
 

30数年前は最低賃金で生活できたの?

仮に、1990年度時点と2023年度時点の東京における最低賃金で月に20日間、1日に8時間(月に160時間)働くとすると、1ヶ月間の額面収入は次の通りになります。

(1990年度)
時給548円×160時間=8万7680円
 
(2023年度)
時給1113円×160時間=17万8080円

1990年度時点では、東京都内でも最低賃金であれば、月160時間労働の場合の額面月額給与は9万円ほどでした。これは現在の感覚ではとても生活できないような金額と思われますが、ここ34年間で次のような変化が起きたことも考えに入れなければいけません

●消費税の増(1990年度時点で3%→2023年度時点で10%)
●社会保険料の増
●地価・物価の上昇
●円安の進行
●家族構成の変化(1人暮らしの増加)

現在は社会保険料の増額などにより給与手取り額が減少傾向にあるほか、筆者としては上記5番目である「家族構成の変化」も見逃せないと考えています。厚生労働省の調査によれば、わが国の1989年時点の「平均世帯人員」が3.10人であったのに対し、2022年時点では2.25人まで減少しています。同時期に単独世帯(1人暮らし)の割合は20%から32.9%まで、実に6割以上増加しました。
 
30数年前、最低賃金近くで働く人の多くは家族とともに暮らし、支えあって生活を成り立たせていたと考えられます。加えて、社会保険料をはじめとした負担も現在ほどは重くなく、物価もいわゆる「デフレ時代」で停滞していました。
当時、最低賃金近くで働く人の生活が今と比べて苦しかったか、生活ができないほどであったか、という問いに対しては、一言で評価できるものではないと筆者は思います。
 
一方、現在は最低賃金が全国各地で上昇し、最低賃金に近い報酬で働いている人であっても、住む場所や生活様式によっては何とか1人暮らしを成立させることができるものの、社会保険料などの増加に加えて物価の高騰も起きており、30数年前と比べて生活が豊かになった実感は得られていない状況であると考えられるでしょう。
 

まとめ

1990年度時点の最低賃金(時給)は、全国加重平均では516円、沖縄県では468円、東京でも548円と、2023年度の半分程度でした。しかし、最低賃金近くで働く人の当時の生活が現在と比べて厳しかったかどうかは、30数年間の間に起きたインフレや社会保険料などの上昇、家族構成の変化を考えると一概には言えません。
 
最低賃金の上昇は、国民生活が豊かになるための1つの要素であることは確かです。しかしそれだけでは、必ずしも人は豊かさを実感することはできないことを考えに入れておきたいものです。
 

出典

厚生労働省 平成14年度~令和5年度 都道府県別最低賃金表
厚生労働省 地域別最低賃金に関するデータ(時間額)
厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 世帯数と世帯人員の状況
 
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント

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