ぬるま湯に浸り続けてゆであがってしまった『ゆでガエル世代』に勧めるライフ・シフト・プランイング
ファイナンシャルフィールド / 2018年12月10日 9時30分
皆さんは「ゆでガエル世代」という言葉をご存知でしょうか。これは1957年から66年生まれの世代に対して某経済紙が命名した造語ですが、団塊、バブル世代などに比べて、あまり知られていないようです。 この世代は、バブルと共に会社人生を始めたものの30歳前後でバブルは崩壊。その後も、ITバブルやリーマンショックなど、度重なる経済危機に見舞われます。「失われた20年」の中で思い切った挑戦の場を与えられることもなく、団塊世代とバブル世代という大集団に挟まれたまま、「役職定年制度」や「職務等級制度」の洗礼を受け、身動きが取れないまま定年を迎えようとしている世代です。 つまり、成功体験を積み専門性を身に着けることなく、会社勤めという「ぬるま湯」に浸り続け、気が付けば(定年時)「ゆであがったカエル(終わった人)」でオシマイというわけです。
「ファイナンシャル・プランニング」の現実
ゆでガエル世代にとって、「年功序列廃止」や「再雇用」は試合中のルール変更に映りますが、文句を言う前に自ら生活設計を描き、対策を講じる方が賢明でしょう。
そこで役立つのが、家計にかかわる金融、税制、不動産、住宅ローン、保険、教育資金、年金制度など幅広い知識に基づく長期的かつ総合的な資金計画「ファイナンシャル・プランニング」であり、専門家ファイナンシャル・プランナー(FP)による支援・助言です。
2018年5月、NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が認定したCFPⓇ・AFP 資格を持つ資格認定会員などで構成される個人会員数は、20万人(うち、国際資格CFPⓇ認定者は2万1411人)を突破し、税理士約7万7000人(平成30年)、弁護士約3万8000人(平成29年)を大きく上回りました。
しかし、その社会的認知度はあまり高くありません。これは、FPの大半が証券、銀行・金融、生保・損保、不動産・住宅などに属しており、「顧客にとって最善の利益追求」を実践できる独立系FPが、全体のわずか7%と非常に限られているためと思われます。
求められる「ライフ・シフト・プランニング」
2016年、我が国で100年生きることを前提とした人生設計を描き、「多様な経験を積み、柔軟な働き方がこれから求められる」と説く、ロンドン・ビジネススクール教授リンダ・グラットン著「ライフ・シフト」が大ブームとなりました。
今まさに政府が進める「働き方改革」によって、副業・兼業が解禁され、このライフ・シフトの扉が開かれようとしています。しかし、前述のファイナンシャル・プランニングだけでは十分な対応はできません。
そこで、「ゆでガエル世代」を例にとり、必要な支援サービスを考えてみたいと思います。
「Aさん、55歳、大企業勤務、子会社経営・ライン長経験あり、現在はポストオフの状態」
例えば、定年の60歳以降を対象とした年金、投資などのファイナンシャル・プランニングだけでは、Aさんの心に響かないはずです。
そこで、70歳まで働くことを前提に、就労、生きがい、社会貢献を視野に入れた、以下キャリア・プランも示し、その実現を支える人材紹介、教育サービスまで合わせた「ライフ・シフト・プラン」を提案することを想像してみてください。
「大企業での経験を活かし、後継難に悩む中堅・中小企業へCOOとして転出。5年間ほど活躍した後、その知見を基に中小企業診断士などの国家資格を取得し、70歳まで経営コンサルタントとして就労」
おそらく、現役期間を10年延長することで、自らを「死蔵」状態から前向きな展開へ再設定することができます。それにより、霧が晴れるような気持ちになるのではないでしょうか。
もちろん、安定収入を失うリスクはありますが、チャンスと天秤に懸ける価値は十分あるでしょうし、これを補う仕組みも人材紹介会社などから提供されるようになるでしょう。
今後、顧客に対して中立な立場から、お金とキャリアという「車の両輪」にかかわる計画を立て、その実現を支援するプロフェッショナルサービスが「ライフ・シフト・プランニング」として普及するようになるかもしれません。
Text:村田 良一(むらた りょういち)
CFP(ファイナンシャル・プランナー)1級ファイナンシャル・プランニング技能士、不動産鑑定士、中小企業診断士(同)村田鑑定評価・経営研究所 代表社員
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