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私は病弱でずっと母には迷惑をかけてきました。母は今も心配して頻繁に連絡をくれます。自分が死んだら母にすべての遺産を渡すことはできますか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年7月13日 23時10分

私は病弱でずっと母には迷惑をかけてきました。母は今も心配して頻繁に連絡をくれます。自分が死んだら母にすべての遺産を渡すことはできますか?

既婚の50代男性Aさん、子どもはいません。もともと病弱で、最近新たな病が見つかり、「もしかしたら、自分は長くないかもしれない」と感じているそうです。   結婚し必死に働いてきましたが、専業主婦の妻は病弱な自分にあまり関心がないようで悲しいとのこと。「もし自分が死んだら、自分の遺産を妻に渡したくない。相続財産は妻や子どもに行くようですが、母に全部渡すにはどうしたらいいですか?」とのご相談です。

遺産をもらうのは誰なのか?

相談のケースについて、まず相続人(相続を受ける人)と相続順位を整理して、法定相続割合を確認します。図表1は、相続人の範囲と相続順位を表したものです(※1)。死亡、もしくはもともと存在しない法定相続人は白抜きです。また、この他に相続人はいないものとします。
 
図表1 法定相続人の範囲と相続順位

図表1

(国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」から著者作成)         
 
Aさんには、子どももきょうだいもいません。早くに父親を亡くしているため、妻と第2順位の母が相続人となります。このように、配偶者と直系尊属だけが相続人である場合、遺産の法定相続分は次のとおりです。
 

配偶者:3分の2
母親:3分の1

 
Aさんは遺産すべてを母親に渡したいと考えていますが、法定の割合で見ると、妻は3分の2の遺産をもらえます。ただ、法定相続分は、必ずそのように分割しなければならないわけではなく、相続人の間で遺産分割の合意ができなかったときの遺産の持ち分です。
 
では、法定相続分とは異なる相続割合での合意は、どのような場合に起こるのでしょうか。
 

遺言書と遺留分侵害請求

実際の遺産分割が法定相続分と異なるケースとして、被相続人(亡くなった方)が遺産の配分を遺言書に書いた場合が挙げられます。遺言がある場合には、原則として被相続人の遺志に従った遺産の分配がされます(※2)。
 
Aさんが、全財産を母親に渡す旨の遺言書を書いた場合、妻が受け入れればAさんの希望どおりの相続となります。しかし、妻が納得できない場合は、遺留分侵害額の請求調停を家庭裁判所に申し立てることができます。
 
遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹以外)に法律上取得することが保障されている最低限の取り分です(民法第1042条)。法定相続人からすれば、その遺留分さえもらえないことに承服できなければ、侵害された額の請求ができるということです。遺留分の割合は、次のとおりです(※3)
 

1.直系尊属のみが相続人である場合(母親):3分の1
2.上記以外の場合(妻):2分の1

 
このケースは妻の遺留分についてなので、妻は法定相続分の3分の2のさらに2分の1、つまり遺産全体の3分の1(2/3×1/2)が遺留分となります。母親と取り分が逆転しましたね。
 
妻が遺言書の内容を知り、到底納得できないということであれば、この請求を行う可能性があるということです。
 

相続させないための「相続廃除」

遺留分さえも渡したくない、という場合に何か手だてはあるでしょうか?
 
相続権を失う場合のひとつに、「相続廃除」があります(民法第892条)。被相続人に対して虐待をし、もしくは重大な侮辱を加えたり、その他の著しい非行があったりした場合に、被相続人は、その相続人の廃除を家庭裁判所に請求できます(※3)。
 
Aさんは、「病弱な自分にあまり関心がない」ことを悲しく思っていますが、この他に廃除が認められるほどの特段の事情があるようには見えません。気持ちが離れていても、長年一緒に築いてきた財産までも、その貢献度を一方的にゼロにするのはよほどのことがないと難しい、ということです。
 
妻が納得しないと思えるなら、少なくとも遺留分は妻に渡るものとして、遺言書を作成することになるでしょう。なお、個別のケースについては弁護士等専門家にご相談ください。
 

最後に

ここまで、母親の受け止め方についてはまったく触れていません。
 
遺産金額の多寡に関わらず、配偶者より多くもらうことが心の負担にならないでしょうか。もし裁判ともなれば、心労が重なるでしょう。
 
また、遺産額によっては高齢の母親が使い切れずに亡くなってしまうかもしれません。その場合は子も孫もいないので、高齢のきょうだいや遠い親族が相続する可能性があります。あるいは、相続人がいなければ最終的に国庫に帰属します。
 
残された母親の立場も考えると、妻に渡らない3分の1の遺産は、団体等に遺贈寄附するなど第三者に生かしてもらう残し方もあるでしょう。
 

出典

(※1)国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
(※2)法務省 相続に関するルールが大きく変わります
(※3)デジタル庁 e-Gov法令検索 明治二十九年法律第八十九号 民法
 
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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