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【相続税の納付】「税務調査」が厳しく、申告漏れの指摘も多い

ファイナンシャルフィールド / 2024年7月17日 23時0分

【相続税の納付】「税務調査」が厳しく、申告漏れの指摘も多い

個人の納税申告が、適正に行われているかどうか、税務署は常に監視をしています。しかし、すべての納税申告を点検し、正しいかを調べるのは容易ではありません。そこで、最も厳しい眼を向けられているのが「相続税」です。納税額も多額になるため、税務当局が厳しい眼が向けています。

所得税への税務調査は少ない

納税額に申告漏れがないかを調べるのが「税務調査」です。しかし、すべての納税申告に対し、疑義があると想定して調べることはできません。例えば、所得税などは、数年同じ傾向が続く中で納税していれば、税務調査の対象とはなりにくいと思われます。
 
実際、多少の計算ミスや少額の申告漏れがあっても、指摘されるケースも極めてまれです。前年の申告内容と照合し、変動幅が少なければ、税務調査の対象になりにくいのです。
 
給与所得者以外の方でも、所得額が大幅に増加した、高収入なのに申告納税額が少ない、などの事情がなければ、調査対象にはなりません。医療費控除の申告なども同様で、わずかな申告漏れがあっても、税務署から追徴の指摘を受けることは少ないかと思います。
 
相続税の申告は、実際の納税額も多額のため、極めて厳しい眼で見られます。さらに、相続税の補完目的で機能した贈与税よりも、相続税本体を軸にした税体系に移行させようとする国の姿勢があります。
 
例えば、孫など法定相続人以外への贈与は、現行では相続発生時点から3年以内でも、贈与として成立します。ところが、これを法定相続人と同様に、相続税として再計算される仕組みに変更される可能性もあります。
 

なぜ相続税は目をつけられやすい?

相続税に対する税務調査の件数は、コロナ禍でかなり減少していましたが、最近では回復基調にあります。相続税が調査対象となるのは、摘発すれば1件当たりの追徴額が高額になるためです。徴税側から見れば、多くの人員を投入するに値するのです。また所得税など他に比べ、納税時期が特定月に集中しておらず、調査対象にしやすい側面もあります。
 
一般的には、相続財産が高額になるほど、未申告の財産を調査する眼も厳しくなります。実際に未申告が発見された追徴税額は、2022年度で1件当たり平均800万円を超えています。
 
10年前の追徴税額は平均400万円ほどでしたから、ここ数年、追徴税額は一貫して増加傾向にあり、いかに税務当局が注視しているかわかります。相続税の基礎控除額が減額されたことにより、相続税の課税対象者が増えたことが要因の1つと考えられます。
 
相続税の納税は、一生に何度も経験するものではありません。申告書の作成は、手間のかかる複雑な作業のため、できれば税理士など専門家に依頼するのが賢明です。ところが納税者本人が作成すると、知識不足などが原因で申告漏れが多いのです。どうしても、納税額を抑えたいとの心理も働き、過少申告しがちです。
 
税務署は、多額の資産保有者ほど、相続財産額の正確な把握に努めており、申告漏れに対し、厳しい眼が向けられることは覚悟しておきましょう。  
 

税務署は相続税対策のどこに着目するか

とくに国税当局は、高齢者の高額な不動産を購入や海外への資産移転などの動向を見ています。将来の相続を見据え、高齢者の保有する資産の実態把握を進めています。実際に相続税の申告書の提出となった段階で、どこに着目するかを確認しておきます。
 

<保有資産の海外への移転>

海外の金融機関への預金や有価証券の移転に関しては、厳しく見られます。最近の円安傾向を受け、富裕層の中には、保有資産を日本国内から海外へ移転する方も増え、その金額も急増しています。とくに高齢の方が資金を海外に移転すると、相続時の財産把握のため、国税庁が本格的に動きます。
 
国税庁は海外の税務当局と連携を強めており、かなり個人の海外資産額を把握しています。「海外へ移したから安心」という発想は通用しません。とくに海外移転をする方の財産は高額となるため、税務当局の眼も厳しくなっています。
 

<高額な不動産の購入>

高齢者が融資を受けて高額のタワーマンションを購入した、広い区画の住宅地を路線価より安く購入した、といった場合は、相続税対策と推測され厳しい眼が注がれます。
 
とくに最近では、マンション価格の高騰、路線価の上昇など、不動産の価値が上がっています。現預金に比べ評価額が低く抑えられている事情もあるため、相続税対策として不動産は有効です。多額の借金をしていないか、適正な価格より安く取引されていないか、といった度の過ぎた節税対策は、税務署に厳しくチェックされます。
 

<最近手続きをした暦年贈与>

相続開始3年以内に暦年贈与を行った場合、制度を正しく理解し申告しているかが見られます。相続開始前3年以内の法定相続人への暦年贈与分は、贈与税額を全額戻したうえで、他の財産を合わせて相続税として再計算し申告する必要があります。贈与が成立していると勘違いした無申告は禁物です。正しい手続きがされているかは、申告書を見ればすぐに判明します。
 
この制度の対象期間は3年ですが、今後7年(2031年実施予定)に延長され、贈与税の利用価値が減少することになりそうです。ただし法定相続人以外への贈与は、対象外です。
 

<孫名義の多額の銀行預金>

「名義預金」と認定されると、相続財産に含まれますので、細心の注意が必要です。例えば小学生の孫名義で1000万円の定期預金があった時は、明らかに名義預金に該当する、との指摘を受けます。
 
孫の教育のために使う預金と説明しても、死亡した方が管理していれば相続財産とされます。印鑑や通帳などの保管方法、金額の多寡、誰が口座を開設し管理していたのか、などを説明する必要があります。
 
相続税の申告漏れが発見されると、正規の納税額に加え、延滞税が加算されます。とくに海外に資産移転した方の申告漏れは、高額のケースがほとんどです。さらに悪質と認定されると、加算税まで徴収されます。「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、納税のルールを確認しておきましょう。
 

出典

国税庁 令和3事務年度における相続税の調査等の状況
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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