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お墓に、もう墓石は要らないの? 樹木葬が埋葬のトレンドに

ファイナンシャルフィールド / 2024年7月22日 10時0分

お墓に、もう墓石は要らないの? 樹木葬が埋葬のトレンドに

墓石を建てる「お墓」が一般的だった時代は終わり、樹木葬などの墓石をつくらない埋葬の形式が増えています。少子高齢化が進むことで、日本人の感覚も大きく変わり、江戸時代から続いたお墓に対する意識が変化したことが、コロナ禍以降明確になりました。

将来を考え「墓じまい」を実行

お墓といえば、寺院や霊園が管理し、墓石を建て永代供養料(土地を借り続ける権利料)を支払う様式が、昭和までは主流でした。江戸時代の中期に寺請制度と檀家制度が確立し、多くの人が地域の寺院との強固に結びつき、地域の寺院に墓をつくることが定着しました。
 
しかし平成以降、とくに都会に住む地方出身者を中心に、生まれ故郷のお墓を移す動き(「改葬」という)だけでなく、埋葬方式自体を変更する方も多くなりました。
 
お墓を整理する「改葬」には、遺骨の搬出、墓石の解体・更地化、離檀料の支払いなどの経費が発生します。50万円程度で済む場合もありますが、檀家の減少に危機感をもつ地方の寺院も多く、必ずしも協力的とはいえません。一方で、東日本大震災で墓石の倒壊などの被害が出たため、お墓の再建をあきらめる方も増えています。
 
改葬の手続きは寺院の了解を得ることから始まり、かなり煩雑でなおかつ経費もかかります。新規に都会で墓地を購入するには、さらに負担がかかります。それでも改葬を実施するのは、お墓で子どもに迷惑をかけたくない、お墓の後継者がいない、といった理由の方が多いといえます。
 

お墓の様式に大きな変化が

地方のお墓を都市に移転すると経費も高額になるため、これを機に、お墓の形を変更する方が増えてきました。とくにコロナ禍以降は葬儀の簡素化が進み、家族葬が中心となったことが拍車をかけています。埋葬様式にこだわらない方が増えています。
 
墓石タイプのお墓を選ぶ方でも、縦長の大きな墓石は敬遠されています。時代の流れに対応し、ミニサイズの墓石付き区画を選ぶ方が多くなりました。都会の寺院でも、こうしたニーズに積極的に対応するため、これまで以上に小区画の墓地の販売に注力しています。
 
お墓の改葬に合わせて、従来の考えを変え、墓石の形を変更し「自分らしさ」を表現する方も増えています。ミニサイズ化だけでなく、例えば、縦長の墓石を横長に変更する、墓石に「心」「誠」「義」など気に入った文字を彫る、といった墓づくりが進んでいます。
 
さらに埋葬様式でも、旧来の墓石形式を選ぶ方が大きく減り、永代供養墓や納骨堂を選ぶ方が主流になりつつあります。その代表例が樹木葬です。
 

墓石のない「樹木葬」がトレンドに

最近増えた「樹木葬」は永代供養墓の代表例で、日本各地で見られます。新規の購入者に限れば、大きなトレンドになりつつあります。
 
自然環境豊かな丘陵地などに、樹木や草花で区画をつくり埋葬する方法です。ペットも一緒に埋葬できるところもあります。生前から自分の好きな区画を予約する方もいます。寺院に依頼して戒名をつける必要もなく、墓石を用意することもありません。
 
こうしたニーズに対応した都会の寺院では、樹木葬を模した「花壇葬」などが増えてきました。寺院の敷地に花壇をつくり、その区画を積極的に販売します。趣旨は樹木葬と同じで、通常のお墓に比べ、墓石も不要な永代供養墓のため、費用も安く抑えられます。墓石のある寺院墓地の希望者が、大きく減少していることへの危機感の表れといえます。 
 
ここ数年「散骨」の希望者も増えてきました。遺骨を粉骨状態にして、海洋や森林に戻す方法です。自然に返るとの発想が根底にあり、著名な経済人や文化人にも好まれています。勝手に散骨はできない地域も多いため、その地域の実情を考慮して実施します。その地域で決められた手続きを行い、必要な船舶代などコストを負担します。
 

墓石付きのお墓は余る時代に

前述のとおり最近の新規購入者のなかには、お墓に「自分らしさ」を取り入れたりお墓をミニサイズ化したりするなどさまざまな理由から、墓石付きの一般墓ではなく、樹木葬などの永代供養墓と納骨堂を選んだという方は少なくないでしょう。省スペース埋葬できる代表例ともいえる永代供養墓と納骨堂は、大都市で多く見られます。
 
「納骨堂」は、寺院の建物内に多くの遺骨をまとめて安置する施設です。納骨されているロッカーを鍵で開ける、カードをかざすと遺骨が自動的に運ばれてくる、といった納骨方法の技術革新が進んだ様式です。権利を購入する費用は、樹木葬などと比較すると高額です。寺院の格や所在地により異なりますが、購入費は平均100万円前後です。
 
「永代供養墓」は、寺院や霊園が供養を担い、他の方々と一緒に合祀する形式で、樹木葬もこれに該当します。同時に大勢の方を埋葬するため、費用も30~60万円のところが多く、比較的安価といえます。大都市の格式の高い寺院では、これよりは高額になります。一度合祀すると墓参りも不要なため、お墓の後継者がいない方にも喜ばれています。
 
新規に墓石付きの本格的な墓をつくると、かなり経費がかかります。東京などでの購入費は、地方より割高です。おおよその目安ですが、土地の賃借料(永代使用料)だけで、80~300万円で、区画の大きさや寺院墓地か公営墓地かで異なります。加えて墓石代が100万円以上(工事費込み)かかるため、墓石付きの墓地は敬遠されつつあります。
(注:費用の金額はあくまで目安となります)
 
東京都内でも有名な、青山、雑司ヶ谷、谷中といった公営霊園は、多くの著名人のお墓もあり、利便性も非常に優れています。空き区画を公募すると、比較的安く購入できるため、抽選倍率も高く根強い人気があります。
 
しかし半面、墓地余り現象が進みつつあります。郊外の公営霊園や一般寺院の墓地では、無縁墓の整理などが進み供給数が増えたこともあって、希望価格では販売できずに、墓地が余りつつあります。さらに、都会に比べて地方寺院は深刻で、檀家の減少だけでなく、墓地の購入希望者も減少しており、寺院経営は大変厳しくなっていくでしょう。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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