親が亡くなりました。下書きのような遺言書が何枚か出てきました。どれが効果のある遺言書なのか見極める方法はありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月28日 10時0分
亡くなった方の自宅で、遺言書を何枚か見つけることがあるかもしれません。遺言書が複数あるときは、どれが効果のある遺言書なのかを見極める必要があります。 本記事では、「親の家で遺言書を何枚か見つけた。大半は下書きのようだが、どれが効果のある遺言書なのかを見極めるにはどうしたらよいか」というケースについて解説します。
遺言には3種類あり、それぞれ決められたルールがある
「遺言は、自筆証書、公正証書または秘密証書によってしなければならない」と、民法第967条に規定されています。一般には、これらを自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言といいます。
各遺言の特徴を簡単にいうと、自筆証書遺言は自分(遺言者)が遺言の全文、日付、氏名を自書、押印するもの、公正証書遺言は公証役場で自分が口述し、公証人が筆記するもの、秘密証書遺言は自分が署名・押印し、封印した遺言を公証役場で存在の証明のみしてもらうものです。
今回のような親の家で見つかった遺言書は、自筆証書遺言に該当するものと思われます。自筆証書遺言については、民法第968条に以下のように規定されています。
・遺言者が、その全文、日付、氏名を自書し、押印しなければならない
・財産目録については、自書しなくてもよい
・加筆・削除・変更する場合は、その場所を指示して変更した旨を付記し、署名、かつ、その変更の場所に押印しなければならない
この規定に適合していない場合、遺言としての効力はありません。したがって、遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があること、それぞれ決められたルールがあることを、まずは押さえておく必要があります。
自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で検認の請求をしなければならない
遺言書を家で見つけた場合、その場で開封してはいけません。遺言書の開封についても、民法で以下のように規定されています。
・遺言書の保管者、または遺言書を発見した相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない(第1004条)
・これを怠ったり、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で遺言書を開封した場合、5万円以下の過料となる(第1005条)
この規定は、公正証書遺言については適用されませんが、自宅に保管された遺言書は自筆証書遺言と考えられますので、この規定に従わなければなりません。
ちなみに、検認とは、相続人に対し遺言の存在や内容を知らせるとともに、遺言の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言書の有効・無効を裁判所が判断するというものではありません。
内容が異なる複数の遺言書がある場合、日付が新しい遺言書が有効である
遺言書が何枚か見つかった場合についても、民法で以下のように規定しています。
・遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、全部または一部を撤回することができる(第1022条)
・前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分について、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす(第1023条)
・遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす(第1024条)
つまり、遺言書が何枚か見つかり、それらの内容が抵触する(異なる)場合、日付が新しい遺言書の内容が有効であるということです。
まとめ
本記事では、「親の家で遺言書を何枚か見つけた。大半は下書きのようだが、どれが効果のある遺言書なのかを見極めるにはどうしたらよいか」というケースについて解説しました。
ポイントは以下のとおりです。
・遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がある
・自宅で発見された遺言は、自筆証書遺言と考えられる
・自筆証書遺言には、決まったルールがある
・自筆証書遺言は、家庭裁判所に提出し、検認の請求(手続き)をしなければならない
・内容が異なる遺言書がある場合、日付の新しいものが有効となる
遺言には法的な効力があります。「知らなかった」は、後のトラブルの原因となりかねません。相続でのトラブルを回避するために、本記事が少しでも参考になれば幸いです。
出典
デジタル庁 e-Gov法令検索 民法
裁判所 遺言書の検認
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
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