夫が定年後、再雇用してまで働きたくないと言っています。年金支給までの5年間、夫婦2人で生活するにはいくら必要でしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月28日 5時10分
原則として65歳から受け取れる年金を、老後の生活費に充てる人も多いのではないでしょうか。しかし、60歳で定年退職した場合、65歳までの5年間の生活費を捻出しなければなりません。生活するのに十分な退職金をもらえればよいですが、事前に足りるかどうか、足りない場合は対処法を考えておきましょう。 本記事では、60歳以上の無職世帯の生活費をはじめ、60歳から年金支給までに必要な生活費がどのくらいなのかと退職金の平均額について解説します。
60歳以上無職世帯の平均支出月額は約27万円
総務省統計局の「家計調査 家計収支編」によると、60歳以上無職世帯の1ヶ月あたりの平均支出額は実支出が27万3615円でした。内訳は図表1のとおりで、消費支出は24万827円、非消費支出は3万2788円です。
【図表1】
項目 | 支出額 | |
---|---|---|
消費支出 | 食料 | 7万1013円 |
住居 | 1万6533円 | |
光熱・水道 | 2万4112円 | |
家具・家事用品 | 1万559円 | |
被服及び履物 | 5140円 | |
保健医療 | 1万5920円 | |
交通・通信 | 2万8606円 | |
教育 | 355円 | |
教養娯楽 | 2万1697円 | |
その他の消費支出 | 4万6892円 | |
非消費支出 | 直接税 | 1万2815円 |
社会保険料 | 1万9957円 | |
他の非消費支出 | 16円 |
総務省統計局「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2022年 表番号4(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別」より筆者作成
60歳から年金支給までに必要な生活費
60歳以上無職世帯の1ヶ月あたりの平均支出額が27万3615円とすると、年間支出額は328万3380円(27万3615円×12)です。60歳までの5年間では1641万6900円となり、足りるかどうかは退職金の支給額によるところでしょう。
図表1では、住居の1ヶ月あたりの平均支出額が1万6533円です。ただし、現在、賃貸物件に住んでいて賃料の支払いが必要、60歳以降も住宅ローンの返済があるといった場合は、住居費が1万6533円を超えることを想定しましょう。
なお、全国賃貸管理ビジネス協会の「全国家賃動向」の 2024年6月調査によると、賃料の平均は1部屋5万2994円、2部屋5万9031円、3部屋6万6873円です。
退職金の平均額はどのくらい?
中央労働委員会の「令和5年賃金事情等総合調査」によると、令和4年度1年間の平均退職金支給額は、図表2のように退職理由によって異なります。
【図表2】
退職理由 | 産業区分 | |
---|---|---|
調査産業計 | 製造業 | |
定年退職 | 1878万3000円 | 1843万3000円 |
会社都合 | 1399万9000円 | 1154万3000円 |
自己都合 | 487万5000円 | 481万2000円 |
中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査」より筆者作成
ただし、退職金の支給額は、勤続年数や学歴別、退職時の基本給といった企業ごとの基準があり一律ではありません。勤続35年と満勤を比べると、同じ大学卒でも図表3のように調査産業計は272万円、製造業は264万5000円もの違いがあります。
【図表3】
勤続年数 | 産業区分 | 大学卒 | 高校卒 |
---|---|---|---|
勤続35年 | 調査産業計 | 1867万6000円 | 1319万8000円 |
製造業 | 1841万円 | 1283万2000円 | |
満勤 | 調査産業計 | 2139万6000円 | 2019万9000円 |
製造業 | 2105万5000円 | 1941万5000円 |
中央労働委員会「令和5年賃金事情等総合調査」より筆者作成
退職金制度を導入しない企業もある
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、退職給付制度を導入する企業は、74.9%です。すべての企業が退職金制度を導入しているわけではなく、25.1%は退職金を支給していません。
勤務先が退職金制度を導入していなければ、老後の生活費を貯めておく、60歳以降も働いて収入を得るなどの対策を立てる必要があります。事前に就業規則などを確認して、退職金制度の導入状況や具体的な支給条件を確認しておくと、老後生活費の計画を立てるにあたってスムーズでしょう。
定年退職後の生活費に困らないための対策を検討しておこう
60歳で定年退職をして、年金の受給開始年齢である65歳までの生活費を退職金でまかなう場合、支給額がどのくらいなのか事前に確認しておきましょう。退職金の支給額は勤続年数や学歴、退職時の基本給などを元に定めているからです。支給額によっては、65歳までの生活費を退職金でまかなえないケースもあり得ます。
退職金だけで足りなければ定年退職後も働く、定年退職前に生活費などを見直して貯金に回すなどの対策を検討しましょう。
出典
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 2022年 表番号4(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別
全国賃貸管理ビジネス協会 全国家賃動向
中央労働委員会 令和5年賃金事情等総合調査
厚生労働省 令和5年就労条件総合調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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