55歳で専業主婦、夫が「退職金1000万円あるから老後は大丈夫」と言っています。年収500万円で「貯蓄ゼロ」ですが、本当に問題ないのでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月31日 10時0分
60歳で定年を迎える人は多いですが、内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、60~64歳の73.0%が就業しています。多くの人が定年後も働いている一方で、「老後は働きたくない」と思う人もいます。その中には、退職後は年金と退職金で生活していけるのかと考えている場合もあるでしょう。 本記事では、年収500万円の会社員と同じ年齢の専業主婦の妻の世帯で、夫が60歳以降は働かずに年金と1000万円の退職金で生活していけるのか解説します。
老後に必要な生活費はいくらくらい?
老後に必要な生活費は家庭によって異なるため一概にはいえませんが、今回は総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕 2023年(令和5年)平均結果の概要」を参考にします。
それによると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均的な支出は月額で28万2497円です。年間では338万9964円になりますので、この金額を老後の年金と退職金でまかなえるかを計算していきます。
年収500万円の会社員と専業主婦は年金をいくらもらえる?
日本の年金制度は国民年金と厚生年金の2階建てです。会社員の夫は国民年金と厚生年金に、専業主婦の妻は国民年金のみに加入しています。そして、老後に。夫は老齢基礎年金と老齢厚生年金を、社会人経験のない専業主婦の妻は老齢基礎年金のみ受給可能です。
老齢基礎年金は2024年度においては満額で81万6000円受け取れます。今回は夫婦ともに満額受け取れるとして計算を進めます。
夫の老齢厚生年金は「報酬比例部分」「経過的加算」「加給年金額」がありますが、今回はメインの「報酬比例部分」について見ていきます。「報酬比例部分」として受け取れる年金の年額は次の式で計算が可能です。
・平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数
夫の生涯の平均年収が500万円の場合、平均標準報酬額は41万円です。また、加入月数は20歳~60歳までの40年間(480月)会社員だったとして計算します。
計算式に当てはめると、夫がもらえる「報酬比例部分」の年金は年間で107万8661円です。
ここまでを整理すると、夫婦が老後にもらえる年金の金額は次のとおりです。
(1)夫の老齢基礎年金:81万6000円
(2)妻の老齢基礎年金:81万6000円
(3)夫の老齢厚生年金:107万8661円
(4)(1)~(3)合計:271万661円
ただし、ここまで計算してきた年金額は65歳から受給を開始した場合という点に注意しなければなりません。
年金は65歳から1ヶ月受給開始時期を早めるたびに、65歳からもらえる年金額から0.4%が減額されます。そのため、60歳から受け取り始めた場合、(4)の金額から24%減額された、206万102円が夫婦で受け取れる年金の受給額です。
60歳からの年金と退職金で老後は生活できるのか?
老後の生活はいつまで続くかは分かりません。厚生労働省の「令和5年簡易生命表の概況」によると、男性の平均寿命は約81歳、女性は約87歳です。今回は男女の間くらいの85歳まで夫婦が共に生きたとして、計算を進めます。
ここまでの計算をまとめると、年間で老後の生活費は338万9964円、60歳からの年金は206万102円です。そして、退職金は1000万円ですので、60歳から85歳までの25年間で毎年均等に使うとした場合の金額は40万円です。
老後の生活費の年間338万9964円に対し、60歳からの年金と1年あたりの退職金を合わせたものは246万102円ですので、毎年92万9862円の赤字になります。
まとめ
貯蓄がない状況で、年収500万円の夫と専業主婦の世帯は、退職金が1000万円あっても60歳以降働かずに生活することは厳しいことが分かりました。
なお、生活費と退職金が同じ条件でこの夫婦が年金だけで暮らすには、年金の受給開始を66歳とちょっとまで後倒しする必要があります。そのため、それくらいの年齢までは働くなどして生活費を稼がなければなりません。
また、実際は生活費がもっとかかったり、退職金を全て使えなかったりなど、事情は人によってさまざまです。何歳まで生きるのかも誰にも分かりません。自分たちの世帯が老後に働く必要があるのかどうかは、本記事を参考に事前にシミュレーションしておきましょう。
出典
内閣府 令和5年版高齢社会白書(全体版)
総務省統計局 家計調査報告〔家計収支編〕 2023年(令和5年)平均結果の概要
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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