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同期がフリーランスへ転身し「完全在宅」で仕事をしています。フリーランスになると家賃や光熱費を「経費計上できるメリット」があるそうですが、支払う税金の総額はどちらが多いですか?

ファイナンシャルフィールド / 2024年8月9日 4時30分

同期がフリーランスへ転身し「完全在宅」で仕事をしています。フリーランスになると家賃や光熱費を「経費計上できるメリット」があるそうですが、支払う税金の総額はどちらが多いですか?

会社員とフリーランス(個人事業主)では、得た収入に対して支払う税金の計算方法の違いから、支払う税金の総額も異なってきます。本記事では、どちらの税金が多くなるか、考えるうえでのポイントを解説します。

収入と所得の違い

「収入」と「所得」には似たような意味合いがありますが、税制上は異なる使われ方をしています。税金のことを考える時は、この2つを区別する必要があります。
 
収入とは、労働やサービスの対価として受け取る報酬のことを総じて指します。会社員であれば会社からの「給与」、フリーランスであれば「売上」がそれぞれ収入に該当します。
 
なお、会社から支給される給与は一般的には金銭ですが、現物給与も含まれることがあります。現物給与には、次のような例があげられます。
 

(1)物品その他の資産を無償または低い価額により譲渡したことによる経済的利益
(2)土地、家屋、金銭その他の資産を無償または低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
(3)福利厚生施設の利用など(2)以外の用役を無償または低い対価により提供したことによる経済的利益
(4)個人的債務を免除または負担したことによる経済的利益

出典)国税庁 No.2508 給与所得となるもの
 
一方で、所得とは、収入から「必要経費」を差し引いた金額のことを指します。また、必要経費とは、収入を得るために発生した支出のことです。
 

所得を求める計算式

収入 - 必要経費 = 所得

 

会社員とフリーランスの所得の違い

所得税法上、所得はその性格により、次の10種類に分類されています。
 

利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得

出典)国税庁 No.1300 所得の区分のあらまし
 
このうち、会社員の所得は「給与所得」に該当し、フリーランス(個人事業主)の所得は「事業所得」に該当します。
 

会社員の給与所得の算出方法

会社員の給与所得は、給与や賞与などの給与収入から「給与所得控除」を差し引いた金額です。
 

収入(給与) - 給与所得控除額 = 給与所得

 
会社員には、原則として必要経費は認められていません。しかし、会社員も仕事のためにスーツや仕事用のバッグを購入したり、時には移動のために交通費を負担したりすることもあるでしょう。給与所得控除は、こうした会社員の事情を考慮して設けられている制度です。
 
図表1

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
162万5000円以下 55万円
162万5000円超~180万円以下 収入金額×40%-10万円
180万円超~360万円以下 収入金額×30%+8万円
360万円超~660万円以下 収入金額×20%+44万円
660万円超~850万円以下 収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円(上限)

出典)国税庁 No.1410 給与所得控除 令和2年分以降より筆者作成 
 
なお、原則必要経費が認められていない会社員でも、以下に該当する支出が給与所得控除額の半分を超える場合は、必要経費を確定申告で申告すると、税金の還付を受けられます。これを「特定支出控除」といいます。
 
いずれも、給与の支払者、または研修費、資格取得費などの教育訓練に係る部分に対しキャリアコンサルタントが証明したものに限られます。
 

・通勤費
・職務上の旅費
・転居費
・研修費
・資格取得費
・帰宅旅費
・勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費など)
※勤務必要経費の場合、上限は65万円

出典)国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
 

フリーランスの事業所得の算出方法

フリーランスの事業所得では、事業収入から必要経費を差し引くことが認められています。必要経費は、事業を運営するうえで必要な支出のことです。
 

事業収入(売上) - 必要経費 = 事業所得

 
必要経費については、国税庁で以下のように定義されています。
 

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

出典)国税庁 No.2210 やさしい必要経費の知識
 
必要経費に該当する具体的な支出には、次のようなものがあります。あくまで事業に直接関係のある費用であることが前提です。プライベートの飲食費、書籍代、交通費など、明らかに事業と関係がない私的な支出は、経費にはできません。
 

・打ち合わせのための移動にかかる交通費
・打ち合わせのためのレンタルオフィスやカフェの利用料金
・事業で使用する携帯やアプリケーションソフトの利用料金
・事業で使用するパソコンの購入費
・事業に関連する書籍の購入費
・商品の広告掲載料、ポスターやチラシなどの印刷費
・外部に業務を発注した際にかかる費用

 
発生した費用を経費として計上するためには、原則としてそれらが経費に該当することを明確に裏付ける、領収書やレシートなどの証拠書類が必要となります。ただし、電車などの公共交通機関の利用で領収書などが入手できない場合は、出金伝票を証拠書類とすることも可能です。
 

フリーランスの必要経費計上における家事按分

フリーランスが自宅を仕事場として在宅で業務をしている場合、家賃や光熱費の一部は「業務の必要経費」として計上することができます。ただし、業務とプライベートで使用した費用を明確に分けるのは難しいため、経費全体のうち業務として使用している分を一定の比率で区分して経費計上できるのが、「家事按分(かじあんぶん)」です。
 
家事按分した費用を経費とするには、以下の要件を満たしている必要があります。
 

・家事関連費のうち、主な支出(50%超)が所得を得るために必要であること
・上記のうち、所得を得るために必要な支出であることの根拠を明確にできること
・主な支出でない場合(50%以下)、業務に必要でありその分を明確に分けられること

 
例えば、家賃を按分するには、「住まいの1室を仕事のための専用スペースとして使用している」など、明確な事実が必要です。または、「専用スペースを設けていないが、自宅での時間のうち8時間は業務をしている」といった時間による按分も可能とされています。
 
家事按分できる費用としては、次のようなものがあげられます。
 

・家賃
・水道光熱費
・通信費
・自動車関連費

 

事業所得における青色申告特別控除

事業所得を得ている人が確定申告の際に青色申告をすることで、必要経費に加えて、所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円(※)が控除される、青色申告特別控除を受けることができます。
(※10万円の控除は、55万円・65万円の控除のいずれの要件にも該当しない場合)
 

55万円の控除を受けるための要件

(1)不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること
(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること
(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、その年の確定申告期限(翌年3月15日)までに当該申告書を提出すること

65万円の控除を受けるための要件

(1) 「55万円の青色申告特別控除」の要件に該当していること
(2) 次のいずれかに該当していること
1)その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること
2)その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

出典)国税庁 No.2072 青色申告特別控除
 

所得から所得控除をしたのが課税所得金額

各所得の合計額から所得控除(所得から一定の金額を差し引くこと)をして求められるのが、課税所得金額です。所得税と住民税の計算には、課税所得金額に所得税・住民税のそれぞれの税率を掛けて、そこからさらに税額控除(課税所得金額から一定の金額を差し引くこと)をして、税額を求めます。
 

会社員とフリーランスで、税金の違いに大きく影響するのが必要経費

これまで解説してきたように、会社員とフリーランスでは、所得について「給与所得」と「事業所得」という違いがあり、収入が同程度の場合、税金の計算上で大きな違いを生み出すのが「必要経費」になるでしょう。
 
会社員は給与収入に対して、一定額が仮の必要経費(給与所得控除額)として控除される一方、フリーランスの場合、必要経費として認められる範囲が広いため、経費を多く計上することが可能です。特に、自宅を作業場として利用しているフリーランスで、家事按分の経費計上をしている場合などは、経費もより多く計上できます。
 
一般的には、会社員に比べてフリーランスのほうが経費を多く計上でき、また青色申告特別控除を受けることにより、課税所得金額を低く抑えられる傾向があります。その結果、支払う所得税や住民税が減少する可能性があります。
 

まとめ

経費を多く計上できるフリーランスより、給与収入に対して一定額の給与所得控除しか利用できない会社員のほうが、支払う税金は多い可能性があります。
 
ただし、フリーランスは社会保険料の自己負担が会社員より増える場合があるため、社会保険料と税金の総額では、どちらが有利かは一概にいえず、個々の状況によるでしょう。
 

出典

国税庁 No.2508 給与所得となるもの
国税庁 No.1300 所得の区分のあらまし
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
国税庁 No.2210 やさしい必要経費の知識
国税庁 No.2072 青色申告特別控除
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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