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資産運用を任せていた夫が亡くなったら「口座の資金」はどうなる?口座の存在に気付かなかったら没収される?

ファイナンシャルフィールド / 2024年8月15日 6時10分

資産運用を任せていた夫が亡くなったら「口座の資金」はどうなる?口座の存在に気付かなかったら没収される?

「資産運用に興味を持ったものの、自分ではよく分からないので、頼りになる夫(妻)に投資に関するあらゆるアドバイスを受けながら取引をしている」そんな方も多いでしょう。   しかし、もしその夫(妻)に万が一のことがあったら、どうすればよいのでしょうか。手続きの仕方も口座がどこにあるのかも分からず、最悪の場合、「ずっと自分で見つけられず放置してしまうのではないか」「最悪、国や証券会社に没収されてしまうのではないか」と不安になる方も少なくありません。   そこで本記事では、そんな疑問に回答するとともに、放置してしまった口座を見つける方法について、解説します。

放置すると国に没収される? そんなことはありません

筆者は、資産運用について配偶者からアドバイスをもらって運用している女性から、このような質問を受けることがあります。
 
「もし、夫が亡くなって、その後10年間、私も口座の存在を忘れて放置したら、国または証券会社に没収されてしまうのではないか?」
 
しかし実際、そんなことはありません。
 
もし、自身の口座の存在に気付かずに長年放置したとしても、その資産は証券会社の資産とは分別して管理されています(金融商品取引法42条の4)。差し押さえの対象になるなど特別な理由がない限り、その資産が勝手に処分されることはありません。
 
なぜ、このような誤解が生じるのでしょうか?その理由として、2018年から始まった休眠預金等活用法と、民法959条による相続財産の国庫帰属が考えられます。
 
相続財産の国庫帰属制度とは、相続人の捜索の公告の期間満了まで相続人が現れず、また特別縁故者に対する相続財産の分与を経てなお相続財産が余った場合に限り、国庫に帰する、というものです。
 
つまり、相続人がおらず、正当な手続きを踏んでもなお引き継ぐ者がいない相続財産に限って、国庫に帰属する、というものですが、「相続人がいなければいきなり国の財産にされてしまう」と考えている方も少なくないようです。
 
一方、休眠預金等活用法とは、10年間取引がない預金口座のうち、休眠預金として指定されたものは、政府が指定した活用団体を通じて貧困対策や地域活性化などの社会課題の解決に活用される、というものです。
 
ただし、証券会社に預けた資金は、この休眠預金の対象ではありません。つまり、10年間放置したからといって、政府が別の使い道に使ってしまう、ということはありません。
 
なお、休眠預金の対象となるのは、銀行の普通預金や定期預金をはじめ、ゆうちょ銀行の通帳貯金や定期貯金、定額貯金、信用金庫の普通預金や定期積金などです。一方で、外貨預金や仕組預金、財形貯蓄、などは対象外です。銀行や信用金庫などで保有している預金が対象となります(※1)。
 

故人の証券口座を見つける方法とは?

放置したからといって、証券会社に預けた資産が没収されることはないことは分かりました。
 
それでは、証券会社に預けた資産があるのかどうかを、どうやって調べればよいのでしょうか。また、自分に万が一のことがあった場合、残された方はどうやって見つければよいのでしょうか?
 
ここでは、故人の方の口座を探す方法をいくつがご紹介しますが、またお元気な方が自分の口座を探す際にも役に立つかと思います。ただし、次に挙げる方法は、どれか一つが確実な方法、というわけではありません。通常はこれらを組み合わせて探します。
 

1. 故人の勤務先の同僚や、親しかった人などに聞いてみる

一見、不確かな方法かもしれませんが、手掛かりがつかめれば、案外すんなり解決する場合もあるので、まず始めに試したいところです。「そういえば、〇〇証券でNISA始めたって言っていました」などの情報が得られるかもしれません。
 

2. 故人宛ての郵便物で、証券会社等から届いたものを探す

故人の生前、もしくは亡くなった後に届く郵便物の中に、手掛かりになるものがあるかもしれません。例えば、証券会社からは、取引がない場合でも1年に1回以上送付される「取引残高報告書」や、特定口座(納税を簡易にするための口座)を持っていると送られてくる「年間取引報告書」などが届きます。
 
また、株式を持っていれば、その企業から送られてくる決算報告書、株主通信や配当金計算書などが、投資信託であれば運用報告書なども手掛かりになります。
 
ただし、これらの書類は届いても読まれず捨てられてしまうこともあり、「目にした記憶もないから、口座はない」と判断してしまうのは早計です。
 
さらに、故人が電子交付サービスに申し込んでいる可能性もあります。その場合、これらの書類は郵送されません。
 

3. 故人名義の銀行預金通帳から、証券会社へ振り込んだ形跡を探す

故人の預金通帳に、預かり金額や引き出し金額の横に、証券会社の名前が記載されている場合があります。これを手掛かりに、証券会社へ連絡します。
 
しかし、これも「紙の通帳」があれば、の話で、故人が生前にウエブ通帳などに切り替えていた場合、ログイン用のIDやパスワードなどを知らなければ、確かめようがありません。
 

4. 証券保管振替機構(ほふり)に問い合わせる

この方法は、故人が上場株式やETF(上場投資信託)など、いわゆる「株」取引を行っていた場合に限られますが、電子化された株券を扱う「証券保管取引機構(通称、ほふり)」へ取引口座の開示請求を行う方法があります(※2)。
 
ほふりに到着した書類に不備等がないことを確認できた場合には、開示請求結果である「登録済加入者情報通知書」が郵便局の代金引換サービス(簡易書留)により送付しますので、開示費用と引き換えに返送されます。
 
ただし、該当する口座がない場合でも、請求には開示費用(被相続人の口座を調査する場合は、1件6050円(税込)がかかります。
 
また、同時に複数の調査対象(氏名および住所の組み合わせごとに1件とカウントできるため、「旧姓と新住所」「旧姓と旧住所」などの検索が可能です)で請求をした場合には相応の費用がかかります。
 

もし、口座がすべてデジタル管理されていたら?

ここまでご紹介した方法でも、証券口座の特定が非常に困難な場合があります。すなわち、故人が取引をすべてスマホやパソコンで管理し、情報がオンラインで完結している場合です。
 
その場合、まずは故人のパソコンやスマホのIDやパスワードを使って、ログインしなければ手掛かりをつかめません。
 
また、何とか中に入れたとしても、故人が証券口座に関する情報を(例えばエクセルなどで)整理しておいてくれればよいのですが、そうでなければ、資産運用のことをよく知らない残された配偶者にとっては、判別はかなり困難です。
 
ここまでお読みいただいてお分かりかと思いますが、故人の口座を探すのは、時に断片的な情報をさまざまな方法でかき集めて、推理し、当たりをつける、という探偵のような行動が必要になります。
 
そのためには、相続に強い専門家や、パソコン・携帯などデジタルに強い人の協力は欠かせません。ただし前述のとおり、どんなにデジタルに強い人でも、まずはパソコンやスマホに入れなければ情報を集めることはできません。
  
そこで、資産運用を任せている夫(妻)には、生前から夫婦の財産目録などを準備しておいてもらい、自分の口座がある金融機関や口座番号、おおよその資産額について、共有できるようにしてもらうのがよいでしょう。
 

生前のうちから詳しい内容を教えてもらうこと

本記事の冒頭で記したとおり、たとえずっと気付かなかったとしても、証券会社に預けた資産が没収されることはありません。また、万が一証券会社が破綻しても、資産が分別管理されているため、預けた資産ごと消滅してしまうこともありません。
 
ただし、長い間口座を放置すると、その間も株や投資信託などの金融商品は価格が変動するため、思わぬ損失を被ることがあります。そして何より、口座の存在を特定できなければ、そもそも相続人が相続することもできません。
 
資産運用を配偶者に任せている方は、生前のうちから、その詳しい内容を教えてもらうようにしておきましょう。そして、もし何も知らされずに不幸があった場合は、家族・故人と付き合いのあった方や専門家などの力をためらわずに借りて、放置されてしまう口座がないよう、手続きを進めるようにしてください。
 

出典

(※1)内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 放置したままの口座はありませんか? 10年たつと「休眠預金」に
(※2)株式会社証券保管振替機構 ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合
 
執筆者:酒井 乙
CFP認定者、米国公認会計士、MBA、米国Institute of Divorce FinancialAnalyst会員。

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