2024年以降は「相続税」が高くなる場合も!?5000万円を相続すると改正前後でいくら違う?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月16日 4時30分
2024年に相続税と相続税に関する贈与税の仕組みが改正されました。人によっては、改正されたことで相続税の金額が大きく変わるケースもあるでしょう。 改正内容をしっかり把握しておくと、今後相続をしたときにスムーズな計算が可能です。今回は、2024年の相続税に関する改正内容や、改正の前後でどれくらい税額が変わるのかなどについてご紹介します。
2024年の相続税改正で何が変わったのか
2024年の相続税改正で変わった点は2つです。1つ目は、相続時精算課税の計算に基礎控除が創設された点があげられます。2つ目は、被相続人からの生前贈与があるときに、相続財産として加えられる期間が延長したことです。それぞれの改正内容を詳しく解説します。
相続時精算課税制度に基礎控除が創設される
相続時精算課税制度とは贈与税の制度のひとつです。原則として60歳以上の直系尊属から18歳以上の子どもや孫などに対して財産を贈与した場合に選択できます。改正前は最大2500万円の特別控除が適用され、2500万円までなら贈与税が発生しませんでした。
国税庁によれば、2024年の改正により、上記の特別控除に加えて1年で110万円までの基礎控除が創設されました。例えば、5年間かけて制度により親から贈与を受けていた場合の控除は合計で「2500万円+(110万円×5年)」となり、最大3050万円です。
相続税を計算するときは、制度を通じて被相続人から受けていた贈与をほかの相続財産と合計します。ただし、亡くなる前に贈与を受けた分で贈与税を支払っている場合は、相続税額から納付した贈与税額を引いて計算が可能です。また、基礎控除は相続税の計算時にも適用されます。
なお、国税庁によると、この制度は贈与者ごとに選択することができますが、一度選択をすると、その贈与者から贈与を受ける財産については、選択をした年分以降すべてこの相続時精算課税制度が適用され、通常の暦年課税には変更できません。
贈与としてみなされるのは生前7年までに延長される
相続時精算課税を選択しない限りは、贈与税は基本的に暦年課税です。改正前は、相続財産を取得し、生前に被相続人から贈与を受けていると、相続が始まる3年前までに受け取った贈与が相続財産として合算されました。
2024年の改正後は、相続を開始する7年前までが対象になり、そのうち3年以内に贈与されたもの以外の財産については100万円が控除されます。例えば相続をする7年前までに合計500万円を受け取っており、そのうち3年以内に200万円を受け取った場合、400万円が相続財産として扱われます。
改正前と改正後で相続税額はどれくらい変わる?
今回は、以下の条件で相続時精算課税を利用したケースと暦年贈与を受けていたケースにおける改正前後の税額を比較しましょう。
被相続人から相続時精算課税制度を利用して贈与を受けていた場合
条件は以下の通りとします。
・生前に7年間で2500万円の贈与
・相続した財産は2500万円
・法定相続人数は1人
まず、特別控除額と生前に受け取った金額が同じのため、生前の贈与税はかかりません。相続をしたあと、改正前だと生前の贈与分と相続した分の合計5000万円で税額を計算します。
国税庁によれば、法定相続人数が1人のときは相続税の基礎控除が3600万円のため課税金額は1400万円、税率15%で控除が50万円となり、税額は160万円です。
改正後では基礎控除が適用されます。7年にわたって受け取っていたため、7年分の基礎控除770万円が引かれ、贈与分で相続税の計算に使われる金額は1730万円、ほかの相続財産と合計して4230万円です。相続税の基礎控除3600万円を引くと課税対象は630万円、税率は10%なので、改正後の税額は63万円が課されるのです。
被相続人から生前に暦年贈与を受けていた場合
条件は以下の通りとします。
・生前の贈与は財産を相続する前の3年間で合計900万円、7年間で合計2500万円
・相続した財産は2500万円
・法定相続人数は1人
改正前だと、相続開始の3年前までが相続財産に合算される贈与のため、相続税の計算には3400万円が使われます。前述の通り、法定相続人数が1人だと基礎控除額は3600万円なので、改正前だと相続税はかかりません。
改正後だと、相続開始の7年前までが対象になり、相続開始3年以内に贈与された財産以外は控除額100万円を除いた額が合算対象となるため、計算に使われる相続財産は合計4900万円です。基礎控除を引くと課税金額は1300万円、税率15%で控除が50万円になるため、145万円が課されます。
利用した制度によって改正前後のどちらが得かは異なる
相続税に関して大きく変わった点は、相続時精算課税制度の控除と生前贈与が相続財産に反映される適用範囲です。実際に計算をすると、改正前後でどちらがお得なのかは適用した制度によって異なりました。相続時精算課税制度では改正後の方が税額が安く、通常の贈与の場合は改正前の方が税額は安くなります。
ただし、どちらの制度にもメリットやデメリットがあります。特に、相続時精算課税制度に変更したあとは、暦年課税には戻せないためよく考えてから決めましょう。
出典
国税庁 令和5年分贈与税の申告のしかた II 贈与税のあらまし 1 贈与税の概要 (2)相続時精算課税(35ページ)、【お知らせ】令和6年分の贈与から贈与税・相続税の計算方法が変わります!(令和6年1月1日以後に贈与を受ける方へ)(44~45ページ)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.4103 相続時精算課税の選択
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版)財産を相続したとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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