相続放棄をしても死亡保険金は受け取れるが、そこには思わぬ落とし穴も。
ファイナンシャルフィールド / 2018年12月25日 10時10分
![相続放棄をしても死亡保険金は受け取れるが、そこには思わぬ落とし穴も。](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/financialfield/financialfield_31657_0-small.jpg)
死亡した方に多額の借金がある場合、一般的には、相続放棄が行われます。この場合、死亡した方が加入していた生命保険の死亡保険金は受け取れるのでしょうか。そこには思わぬ落とし穴があります。
死亡保険金は「保険金受取人の固有の財産」
契約者と被保険者が同一人の場合、受取人が受け取る死亡保険金は死亡した人の財産ではなく、「保険金受取人の固有の財産」となります。例えば、契約者・被保険者が夫、死亡保険金受取人が妻の場合、妻が受け取る死亡保険金は妻の固有の財産になります。
死亡した場合、その人の財産上の権利義務が相続人に承継されます。これを相続といいます。死亡保険金は保険会社から直接、受取人に支払われ、死亡した人の財産が承継されるわけではありませんので相続財産には含まれません。
したがって、死亡保険金は夫の財産ではないので、妻は相続放棄をしても死亡保険金を受け取ることが可能です。夫に多額の借金がある場合は、妻の生活保障のために生命保険に加入しておくと良いでしょう。
死亡保険金は「みなし相続財産」
上記で説明したように、死亡保険金は死亡を原因としても本来の相続財産ではありません。しかし、相続税法上は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。相続人が死亡保険金を受け取る場合は、「500万円×法定相続人数」の額が非課税となります。
しかし、相続を放棄した場合は相続人とはみなされないため、相続放棄をした本人は非課税の適用を受けることはできません。ただし、非課税金額を計算する際の法定相続人の人数には相続放棄をした人も含めます。
また、相続税の基礎控除額(「3,000万円+600万円×法定相続人数」)の法定相続人数にも相続放棄した人も含めます。
解約返戻金請求権は差押えの対象
終身保険のように、途中解約した場合に多額の解約返戻金がある生命保険があります。解約返戻金請求権は差押え可能です。この場合、生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、これを取り立てるため、債務者の有する解約権を行使できるでしょうか。
最高裁まで争われた事案があります(最高裁平成11年9月9日第1小法廷判決)。事案の概要は、債務者(保険契約者)に対し貸金元利金合計金約479万円の確定判決にもとづく債権を有する債権者が、保険会社に対して本件保険契約を解約する旨の意思表示をしたものです。
これに対して、保険会社は、生命保険契約は、被保険者及び死亡保険金受取人の生活保障的機能を有するのに、債権者が一方的に解約できるとすると、保険事故発生時の生活保障機能を奪うことになるから差押え債権者が当然に解約権を行使するとするのは誤りだと、主張しました。
結局、最高裁は「生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、これを取り立てるため、債務者の有する解約権を行使できると解するのが相当である。」と判決しました。
債権者による解約権の行使が認められると、裁判官の反対意見にあるように、「例えば、被保険者が末期的症状にある病に侵されているため、近々保険事故の発生により多額の保険金請求権が発生することが予想される場合や、被保険者が現実に特約に基づく入院給付金の給付を受けている場合などに、突如第三者の手によって保険契約が解約されてしまった事態を想定してみると、利益衡量的観点から見ても、差押債権者による解約権の行使は、著しくその目的を逸脱したものといわざるを得ない」という面もあります。
借金の多い人が加入する保険は解約返戻金のないタイプがおすすめ
債権者が生命保険を解約するのは、解約返戻金によって債権を回収するためです。解約されてしまったら、保険契約者または保険金受取人は上記のようなとり返しのつかない不利益を被るおそれがあります。
借金の多い人が加入する保険は、解約返戻金のないタイプをおすすめします。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー
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