父が「認知症」になってきた気がして、とても不安です。認知症になると「銀行口座が凍結される」と聞いたことがあるのですが、どのような準備をしておけばよいのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月1日 9時0分
認知症になると銀行口座が凍結されると知り、「うちの親はまだ大丈夫だろうか」と焦りを感じている人もいるでしょう。認知症になると即時に銀行などの取引ができなくなるわけではありませんが、銀行の判断によって口座が凍結される可能性は高くなります。 本記事では、認知症になると預貯金の整理や引き出しなどの取引はどうなるのかを解説するとともに、高齢者の安全な預貯金管理をサポートするサービスも紹介します。
認知症を発症した場合は金融機関との取引が制限されるのが一般的
認知症とは、さまざまな脳の病気の影響で、記憶や判断力などの認知機能が低下した状態です。もの忘れなどの症状が起きる、「アルツハイマー型認知症」がよく知られています。
認知症を発症すると、契約手続きや預貯金の出し入れなどの行為が徐々に難しくなるだけでなく、判断能力の低下によって、詐欺被害や消費者トラブルにあうリスクも高まります。そのため、銀行などの金融機関は、認知症を発症した顧客との本人取引は望ましくないとして、取引を停止する(いわゆる口座凍結)のが一般的です。
銀行は、認知症を発症した顧客との取引においては、やむを得ない場合を除いて「成年後見制度」の利用を推奨しています。また、やむを得ず認知能力が低下している本人と取引する場合は、顧客が金銭的な被害にあうことを未然に防ぐために、引き出したお金の使い道などの確認を行う傾向です。
表題のケースのように認知症に「なってきた気がする」程度の状態であれば、単に加齢によるもの忘れなどのこともあり、本人の認知能力に取引上の問題はないと判断される可能性があります。その場合は、預貯金の解約や整理などに当面の支障はないでしょう。
しかし、金融機関によっては、認知症の傾向が見られる時点ですべての取引を断るケースもあること、将来的に認知症が進行して症状が顕著になれば取引が難しくなることに注意が必要です。
親族の代理取引や社会福祉関係機関の支援のもとでの取引ができる場合も
全国銀行協会は、認知判断能力が低下した顧客との取引の指針として、顧客の財産保護の観点から、成年後見人などの法定代理人を介することを基本としています。ただし、次のようなケースについては、各金融機関の判断のもとで家族や親族が取引を行えることもあります。
・本人から銀行に任意代理人が届け出られていた場合
・成年後見制度の利用ができないケースなどで、本人の利益に適合する(本人の医療費の支払いなど)場合
また、本人に契約締結能力がある場合は、社会福祉協議会が提供する「日常生活自立支援事業」などの公的なサービスを契約することで、次のようなサポートを受けながら金融機関との取引を継続できるケースもあります。
・預貯金の払い戻しや預け入れへの同行
・委任契約にもとづく支援者による代理取引
高齢者が対象の金融商品の活用も選択肢に
一部の信託銀行などでは、高齢者を主な対象として、本人の認知能力や身体能力が低下したあとでも、安全かつスムーズに取引ができるサービスを提供しています。
・金融機関による支払い内容チェック
・代理人と指定された閲覧者によるアプリ上での支払い内容チェック
・同意者の同意や代理人の請求を介した支払い
・本人や代理人の口座への定時定額の自動振替
上記のようなさまざまなサービスが展開されているため、本人や家族の状況などに応じて、ニーズに合うサービスの利用を検討するのもひとつの方法です。本人の判断能力が十分なうちに、財産の状況をしっかり共有し、管理の方法について話し合っておきましょう。
親が元気なうちに資産についての話し合いや整理をしよう
認知症発症のリスクは誰にでもあるものです。認知症を発症し本人の意思の確認が難しくなると、預貯金の引き出しや解約などの取引に制限がかかり、家族であっても簡単には財産を動かせなくなります。
将来の財産管理や相続を見越して預貯金を整理したい場合は、本人の認知能力が目に見えて低下する前に手続きしておくと安心です。親が元気なうちから資産の管理について話し合い、本人の希望に沿って手続きを進めましょう。
出典
一般社団法人 全国銀行協会 金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方について
内閣府 政府広報オンライン 知っておきたい認知症の基本
福岡市社会福祉協議会 認知症の方の生活問題
金融庁 事務局説明資料(高齢者など認知・判断能力の低下した顧客への対応)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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