インスタで見た「10円玉をきれいにする方法」を試したところ、友人に「硬貨に手を加えるのは違法」と言われました。きれいに磨く程度でもダメなのでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月5日 5時10分
キャッシュレス化が進んでいるとはいえ、まだまだ私たちの生活に現金は欠かせないのではないでしょうか。そんな現金は人から人の手に渡るものなので、その過程でどうしても汚れや錆(さび)などが付いてしまいます。 特に銅製の10円玉は硬貨の中でも汚れていることが多く、元の色が分からないほど黒ずんでいたり、青緑色の錆がびっしり付いていたりするものもあります。 汚れた硬貨をそのまま財布に入れるのが嫌で、できればきれいに磨きたいと思う人もいるでしょう。しかし実は硬貨に手を加えることは、法令違反となるのを知っていますか? 本記事では、硬貨を磨く行為が法令違反と判断されるのかどうかについて解説します。
硬貨に手を加えると犯罪?
結論から言えば、硬貨に手を加えた場合「刑法148条」と「貨幣損傷等取締法」違反となり、刑事罰が科せられる可能性があります。
まずは刑法の解釈です。刑法148条の通貨偽造では「行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3年以上の懲役に処する」と規定されています。
つまり、紙幣や硬貨の偽札・偽硬貨を一から作ったり、100円玉を加工して500円に見せかけるような行為をしたりした場合は、「偽造または変造」の行為とみなされ、刑法148条違反となるのです。
また、貨幣損傷等取締法では、「貨幣を損傷し又は鋳つぶしてはならない。またはその目的で集めてはならない」と規定されており、これらに違反した場合、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金が科せられます。例えば100円玉をお守りにしたいと穴を開けてペンダントにした場合は、硬貨を損傷しているので貨幣損傷等取締法違反となります。
きれいに磨くだけなら問題ない
硬貨を磨く行為は、その過程で、わずかとはいえ故意に硬貨の表面を溶かしたり削ったりしています。つまり刑法148条と貨幣損傷等取締法に抵触するように思われます。
しかしながら、その目的が硬貨の偽造や加工ではなく「汚れを落とす」ものであれば、「変造」「損傷」「鋳つぶし」とはならないと判断される可能性が高いでしょう。
また、汚れを落とす程度であれば、硬貨そのものの価値が下がることもないので流通にも支障がないと考えられます。これらのことから判断して、硬貨を磨く程度では前記の法令違反とはならないでしょう。
磨きすぎには注意
ただし、目的がきれいにすることとはいえ、やりすぎは注意が必要です。あまりに錆がひどいと強い薬品で錆を落としたくなるかもしれませんが、薬品によっては汚れだけでなく硬貨自体も溶かしてしまう可能性があります。また頑固な汚れを落とそうとヤスリなどを使った場合、硬貨そのものを削ってしまうこともあるでしょう。
これまで解説した通り、行為の目的が「きれいにすること」であれば、ただちに法令違反とは言いがたいですが、硬貨の形が変わるほどの行為は通貨の流通上、問題を引き起こす可能性があります。
お札にも手を加えたら犯罪になるの?
硬貨に悪意を持って手を加えると法令違反となりますが、紙幣の場合はどうでしょうか。実は貨幣損傷等取締法は硬貨のみに関する規定で、紙幣に関する記述はありません。もちろん偽札作りは刑法148条違法ですが、貨幣損傷等取締法のように手を加えるだけでは法律違反とはなりません。
つまり、故意に紙幣を破ったり落書きをしたり、燃やしたりしても、これらを罪に問う法律はないということになります。
ただし、国立印刷局では、傷みの激しいものや、書込みや印字がされている紙幣は「偽札かどうかの見分けがつきにくくなり」「ATMや自動販売機で使えなかったりするなどのトラブルのもとになります」とし、「大切に使ってください」としています。
硬貨は磨いても大丈夫! しかしほどほどに
硬貨を偽造したり、鋳つぶしたりすることは法令違反となり、場合によっては刑事罰が科せられます。ただし、硬貨の汚れを落としてきれいにする程度であれば、硬貨そのものに損傷を与えるわけではないので、ただちに法令違反となることはないでしょう。
しかし、やりすぎると硬貨そのものの変形につながる可能性もあるので、常識の範囲内で行うようにしましょう。
出典
e-Gov法令検索 刑法
e-Gov法令検索 貨幣損傷等取締法
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
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