介護離職する前に。介護をサポートしてくれる制度とは
ファイナンシャルフィールド / 2018年12月30日 9時30分
わが国の雇用者数は約5900万人で、そのうち介護をしながら働いている人の数は20人に1人にあたる約300万人。決して他人ごとではありません。 そして、1年間に9万9000人もの労働者が、介護や看護を理由に離職しています。(※1) 介護問題に直面してから慌てることのないよう、介護をサポートしてくれる制度について考えてみましょう。
高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組み「介護保険制度」を活用する
介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして2000年に創設されました。
この介護保険を利用するためには、下図の手順で介護認定を受ける必要があります。
要介護認定の申請は、申請書を市町村役場か「地域包括支援センター」に提出します。
そして、要介護5~1または要支援2~1の介護認定を受けると、要介護度に応じて定められている支給限度額の範囲内において1~3割の自己負担額を支払うことで、訪問介護や通所介護などの居宅介護サービスや、特別養護老人ホーム(特養)などの施設介護サービスを利用することができます。
なお、月額の支給限度額は、要介護5の約36万円から、要支援1の約5万円まで段階的に設定されています。
要介護認定の申請先の一つである「地域包括支援センター」は、原則として中学校区単位で設置されています。
地域包括支援センターでは、介護をはじめ、認知症などの高齢者に関するさまざまな問題について相談することができます。この機会に、介護が必要であろうとなかろうと、両親などが住んでいる地域を担当する地域包括支援センターの所在地と連絡先を確認しくおくことをおすすめします。
市町村が提供する高齢者福祉サービスなどを利用する
介護保険制度を利用するためには、要介護認定を受ける必要がありますが、非該当とされる場合もあります。
そのような場合は、市町村が提供する「高齢者福祉サービス」や「介護予防サービス」を利用されると良いでしょう。
「高齢者福祉サービス」には、金銭管理や文書管理などを依頼することができる日常生活支援事業や、食事を提供する配食サービスなどがあります。「介護予防サービス」には、筋力トレーニングや栄養指導などのサービスがあります。
これらサービスの利用申込も、先に紹介した「地域包括支援センター」でできるので、まずは気軽に相談されることをおすすめします。
育児介護休業法に基づく介護休業などの就業支援制度を利用する
働きながら介護する人を支援するために制定された育児介護休業法では、企業主に対して、下表のような介護休業や介護休暇制度などを導入するように指導しています。
その利用例としては、離れて暮らすご両親の介護認定の手続きのために「介護休業」を利用して帰省することや、同居するご両親の病院への付き添いなどに「介護休暇」を利用することなどが考えられます。
介護問題は、終わりが定かではありませんので、安易に退職することなく、介護保険や就業支援制度などを上手に組み合わせて、仕事と介護を両立させることをおすすめします。
なお、この他に独自の支援制度を設定している企業もありますので、お勤め先の就業支援制度につきましては人事担当者などにご確認ください。
介護離職した人に対するアンケート(※4)によると、離職前よりも離職後の方が、負担が増した(「非常に負担が増した」または「負担が増した」)としている人は、「精神面」で64.9%、「肉体面」で56.6%、「経済面」で74.9%を占めているいることが分かりました。このことを考えると、介護離職しても負担が軽減するどころか増加する傾向にあるようです。
介護問題に直面したら、一人で悩まずに、まずは地域包括支援センター、職場の上司や人事担当者に相談されることをおすすめします。
出典:
※1「平成29年就業構造基本調査」(総務省統計局)
※2「介護保険制度解説」(独立行政法人福祉医療機構)
※3「介護離職ゼロポータルサイト」(厚生労働省)
※4「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」(平成24年度厚生労働省委託調査)
Text:辻 章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP®認定者、社会保険労務士
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