80歳の父と「車を共有」していますが、父が「運転免許を返納」した場合、父名義の車や自動車保険はどうなりますか?最終的に私しか運転しないと思います。
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月6日 12時0分
昨今、高齢者の運転中の誤操作による重大事故が多くなっているように感じます。高齢になるにつれて、身体能力の低下により、自動車の運転も不安になります。 今回は、高齢の親が免許証の返納をした場合に、それまでの自動車保険はどうなるのか解説していきます。
高齢者の自主返納は平成元年をピークに減少
警察庁の運転免許統計によると、令和5年における65歳以上の高齢者について、運転免許保有者数は1983万8119人となっています。これは、運転免許保有者総数の24.2%となっています。
また、同じ警察庁の「令和5年における交通事故の発生状況について」を見ると、75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数は令和2年まで減少傾向でしたが、近年では増加傾向にあるようです。
特に事故原因として、ブレーキとアクセルの踏み間違いなどの「操作不適」が多いようです。ただし、免許保有者10万人当たり75歳以上高齢運転者による死亡事故件数は減少しています。結論として、75歳以上の免許保有者が増えていることで死亡事故件数は増えているものの、事故率は減少していることが見てとれます。
また、高齢者が自ら運転免許証を返納したときの年齢層の推移(図1参照)を見ると、65歳以上の全体でみる返納率は令和元年から減少傾向にあります。一方、自覚があり自ら返納しているのか、家族から促されたのかは分かりませんが、70歳以上の返納率は増加傾向にあるようです。
とはいうものの「郊外に住んでいて、車がないと不便」という地域では、高齢ドライバーを多く見かけるのが現状です。
図表1
※警察庁「令和5年版 運転免許統計」より筆者作成
※小数点以下第2位を四捨五入したため、100%になっていない年もあります
同居の子どもに車を譲渡した場合の保険は?
高齢の親が運転免許証を自主返納した場合に、車の名義を変更することなく、子どもが運転することは可能です。「父親の所有物ではあるが、子どもが今後は運転する」という状態でも、問題はありません。
ただし保険契約では、主に使用する人が「記名被保険者」となります。記名被保険者は免許証を保有する必要がありますので、自動車保険の記名被保険者の変更は必須となります。
このとき、同居の親族であれば、これまでの等級を引き継ぐこともできます。「車の名義が違ってもできるのか」と疑問に思う人がいるかもしれませんが、損害保険は他人の財物にも掛けることができます。
保険契約者は今までどおり父親とし、記名被保険者だけを変更することもできますが、今後の保険料の負担などを考えて、保険契約者の変更を同時にするのがよいでしょう。
車の名義を変更するときの注意点
これまで使用していた車は父親の持ち物ですが、子どもに名義を変更する場合は、「贈与」となります。贈与のときに注意しなければいけないのは、暦年課税という制度で、1年間に110万円以上の贈与があった場合には、110万円を超える部分に贈与税がかかるのです。
今回、父親から譲り受けた車の査定が110万円以下であれば、贈与税は発生しませんが、110万円を超える価値がある場合には、100万円を超えた部分に贈与税が課せられます。
贈与税には「特例税率」と「一般税率」があり、贈与する側が贈与される側の父母や祖父母など直系尊属で、贈与される側が18歳以上の場合は「特例税率」となり、これ以外の贈与は「一般税率」となります。
図表2
※国税庁No.4408 贈与税の計算と税率より筆者作成
まとめ
高齢者の車の運転には、「身体能力の低下により、時に大きな事故になりかねない」という不安があります。
ある程度、公共交通機関が充実している地域では、車を運転しない高齢者も増えるかもしれませんが、「まだ自分は大丈夫」と思う人や、「車がなくては生活が難しいから」と運転を続ける人も、少なくないのかもしれません。
運転免許証の自主返納を行うと、今まで保有していた車は運転できなくなり、今回のように「子どもに譲渡する」というケースもあると思います。自動車保険については、条件はあるものの、契約者や記名被保険者の変更はできますので、譲渡があった場合には、速やかに変更を行いましょう。
また車の評価額が高額なときには、贈与税の対象となる可能性もありますので、確認しておくとよいでしょう。
出典
警察庁 運転免許統計 令和5年版
警察庁 令和5年における交通事故の発生状況について
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
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