「130万円の壁がなくなるって本当ですか?」妻が育児休業明けに仕事復帰するので「手取り」が減るのではないかと心配しています。
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月12日 3時0分
所得税や社会保険料の負担を少なくする目的で、扶養範囲内で働いている人もいるでしょう。 今回は、育児休業前にパートで年収120万円を得ていた妻が、育児休業明けに扶養から外れなくてはならなくなったケースについて、見ていきます。
130万円の壁とは
配偶者が扶養範囲内で働くための要件はいくつかあります。
例えば「103万円の壁」はよく聞くと思いますが、この103万円は所得税が課税されるかどうかの境界線となります。
今回の「130万円の壁」は、社会保険に入り世帯主の扶養から外れるかどうかの境界線となります。ただし、社会保険の加入要件にはもうひとつ壁があります。それは、勤めている企業の規模などによって決まる「106万円の壁」です。
2016年10月からは、従業員501人以上の企業に勤めている人は、106万円を超える収入があれば社会保険に自ら加入することになっていました。2022年10月からは、「従業員501人以上」から「101人以上」と加入要件が厳しくなりました。さらに2024年10月からは「従業員51人以上の企業」となり、加入する必要のある人が増えることが考えられます。
所得税の扶養と社会保険上の扶養とで違う点には、以下の点があります。
所得税の場合は「1年間の収入に対する要件」に基づいて考えますが、社会保険の場合は1年間の収入が「106万円や130万円あるかどうか」というよりも、今後1年間の見込みで考えられます。そのため、所定内賃金(基本給や諸手当の賃金)が月額8万8000円以上ある場合は、年の途中から働いたとしても、社会保険に加入する必要があることになります。
育休明けが2024年10月以降からは106万円の可能性も
今回の記事で取り上げたのは、妻が社会保険上の扶養に入っていた夫からの相談でした。
対象の妻の勤め先は、従業員が100人以下であることが分かりますが、仮に50人以下の企業に勤めていた場合には、これまでどおり年収が130万円以内であれば、社会保険の扶養に入りつづけることができます。
しかし2024年10月以降は、現行の「従業員101人以上の企業に勤めている場合」という社会保険加入要件が「従業員51人以上の企業に勤めている場合」になるため、従業員が100人以下であっても社会保険に加入する必要が出てくる可能性があります。
前述したように、育児休業から復帰するのが2024年10月以降であれば、年間の収入が106万円に満たない可能性もあります。しかし、社会保険の加入義務は「見込み」で判断されるため、月8万8000円以上の収入になれば、10月以降であっても社会保険の加入義務が発生することになります。
扶養から外れたとしてもメリットはある
「扶養から外れることを避けたい」と思う人も多いのかもしれませんが、扶養から外れることは悪いことではなく、長い目で見ればメリットになることもあります。
社会保険料は、健康保険、厚生年金保険、雇用保険などのことを指します。これらの保険のなかで、扶養であるか否かで大きな違いが出てくるのが、厚生年金保険なのではないでしょうか。
配偶者が厚生年金保険の扶養に入っていれば「第3号被保険者」となり、将来はこの期間に対する老齢厚生年金は支給されませんが、保険料の負担なく老齢基礎年金を受け取ることができます。しかし扶養から外れて自身で社会保険に加入すれば、老齢基礎年金に加え、収入に応じて老齢厚生年金を受給することができるようになります。
「人生100年時代」といわれるようになった今、令和5年の簡易生命表を見ると、65歳の男性の平均余命は19.52歳、女性は24.38歳となっています。現在65歳の人々の寿命は男性が85歳くらい、女性が90歳くらいと長寿化していることから、65歳以降の年金も考えておく必要があるのかもしれません。
配偶者が扶養範囲内で働いていた場合よりも、配偶者が自分で社会保険に加入していた場合のほうが配偶者の年金額は増えることになり、夫婦2人の年金総額が多くなります。
まとめ
配偶者のいる人で、年収が130万円(月額10万8000円)以上であれば、配偶者の社会保険上の扶養に入ることはできません。
ただ現在、従業員101人以上の企業でパートやアルバイトとして勤めていて、年間106万円(月額8万8000円)以上の収入がある場合には、自身で社会保険に加入する必要があります。この要件は2024年10月から、従業員51人以上と条件が変更になります。
今回の相談のように、育児休業から職場復帰する時期が2024年10月以降で、従業員が100人以下であっても、51人以上であれば、復帰後に扶養から外れ、社会保険に自身で加入する必要があります。手取り額に注目すると、社会保険料や税金が控除されるため、実際に手元に残る金額は少なくなることに注意が必要です。
出典
厚生労働省 令和5年簡易生命表の概況
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー
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