改姓が嫌で事実婚状態の友人。「選択的夫婦別姓」が認められれば相続に影響はありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月18日 2時18分
選択的夫婦別姓の議論が進む中、「結婚しても名前を変えたくない」と考える人が増えています。 名字は個人のアイデンティティの一部であり、改姓に抵抗を感じるカップルが事実婚を選ぶ理由の一つです。事実婚ならお互いの名前を守れる反面、法的な結婚ではないため相続などで不安を抱えることも少なくありません。 この記事では、選択的夫婦別姓が認められることで事実婚カップルの生活や相続にどのような変化があるのかを解説します。
夫婦別姓はなぜ法律婚として認められないのか?
現行の民法第750条では、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」と規定されています。つまり、法律上の夫婦(法律婚)として認められるためには、夫婦のどちらかの名字を選び、婚姻届を提出する必要があります。
そのため、「どうしても改姓が嫌だ」と思う場合、現状では法律婚を選ぶことができず、法的に夫婦とは認められない事実婚の選択をせざるを得ません。
事実婚では、戸籍についても別々になります。法的な保護が十分でないため、相続面や税制面でも不利な点があります。このように、選択的夫婦別姓が認められない現状では、改姓を拒むカップルにとって大きなハードルが存在しています。
事実婚であると起こる相続に関する3つの問題点
事実婚の状態で相続が発生した場合の問題点について、大きく3つ解説します。
●法定相続人として認められない。
●遺産を受け取るためには遺言書の作成が必須。
●税制上の不利。
法定相続人として認められない
事実婚では、法的に夫婦として認められていないため、パートナーは法定相続人になれません。これは、現行の日本の民法が法律婚を前提としているためです。
そのため、パートナーが亡くなった際に遺産を相続することができず、遺産は法定相続人である故人の親や子供などに渡ることになります。
たとえ長年にわたり生活を共にし、家族同然の関係であっても、遺産はすべて法定相続人に分配されることになり、事実婚のパートナーは遺産を受け取れないという事態が生じます。
遺産を受け取るためには遺言書の作成が必須
事実婚のパートナーに遺産を残すためには、必ず遺言書の作成が必要です。
遺言書がない場合、事実婚のパートナーには法的な相続権がなく、遺産を受け取ることができないリスクがあります。
また、遺言書があっても、法定相続人には遺留分という最低限の取り分が保障されているため、全ての遺産を事実婚のパートナーに残すことは難しい場合があります。
特に問題となるのが、パートナーが急逝した場合です。遺言書がない場合、相続トラブルが発生しやすく、時間や費用のかかる法的な争いに発展することも考えられます。
税制上の不利
法律婚の配偶者には、相続税において大幅な優遇措置が適用されます。例えば、配偶者控除の制度により、1億6千万円までの遺産には相続税がかからず、一定の範囲内であれば非課税となります。
特に、住んでいる自宅や共有している資産に対して高額な税負担が発生し、場合によっては遺産を手放さざるを得ない状況に陥ることもあります。
これらの税制面での不利は、事実婚の夫婦にとっては後に大きな問題となりえます。
選択的夫婦別姓が認めれることで起こる相続上の変化
選択的夫婦別姓が認められると、夫婦が改姓せずとも法律婚として認められるため、事実婚を選んでいた夫婦にも大きな変化となるでしょう。
まず、法律婚として認定されることで、パートナーが法定相続人として認められ、相続時の権利が確保されます。事実婚では受けられなかった法定相続分の取得や、配偶者控除などの相続税の優遇措置が適用されるようになります。
また、遺言書の作成が不要となる場合も増えます。法律婚においては、配偶者が自動的に相続権を持つため、特別な遺言書を用意しなくても遺産を受け取ることができます。
これにより、相続の手続きが簡略化されるだけでなく、もしもの際にも相続分が確保されます。さらに、遺留分の問題も解消されやすくなるため、法定相続人間でのトラブルを回避しやすくなります。
まとめ
選択的夫婦別姓の導入は、別姓が理由で事実婚となっている方々にとって、相続や税制上の不利を解消する可能性があります。
しかし、この制度はまだ議論の途中であり、法改正に至っていないのが現状です。そのため、法律婚と事実婚それぞれのメリットやデメリットを正しく理解し、自分たちに合った形を選ぶことが重要です。
また、社会全体で多様な夫婦のあり方を尊重し合う姿勢を持つことが求められます。選択的夫婦別姓が実現すれば、より柔軟で多様な家族の形が認められ、誰もが安心して暮らせる社会の実現に一歩近づくでしょう。
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