母から、タンス預金でコツコツ貯めた「100万円」を渡したいと連絡がありました。受け取りたいのですが“贈与税”はかかるのでしょうか? なにか注意点はありますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月23日 2時20分
タンス預金を親や祖父母から贈られたとき、気になるのが税金です。特に贈与税は制度が複雑なため、もしかすると支払わなくてはならないのでは? と心配する人も多いのではないでしょうか。 この記事では、100万円の贈与には贈与税がかからない理由について解説します。また、贈与税が課される金額や100万円の贈与でも税金を払わなくてはならないケースについても紹介します。
100万円の贈与には贈与税がかからない
結論から言うと、100万円の贈与に対して贈与税はかかりません。また、贈与税の申告をする必要もありません。
贈与税には110万円の基礎控除が設定されています。贈与税は、1年間に受け取った贈与額から基礎控除を差し引いた金額に対して課せられます。親からタンス預金100万円を受け取ったケースであれば、課税金額は「100万円-110万円=-10万円」となり、0円を下回ります。そのため贈与税はかからず、申告する必要もないのです。
贈与契約書を作成したうえで銀行口座に振り込んでおくと安心
タンス預金の100万円を受け取っても贈与税はかかりません。しかし、100万円の受け取りが贈与とみなされなかった場合、後に相続税がかかる可能性があります。
こうした事態を避けるために、タンス預金を受け取る際には贈与契約書を作成しておくと安心です。また、受け取ったお金が自分の管理下に入ったことを記録するため、全額を銀行口座に振り込むようにしておくとなおよいでしょう。
100万円の贈与でも税金がかかるケースについては、後述します。
贈与税がかかる金額はいくらから?
贈与税がかかるのは、基礎控除の110万円よりも大きい金額を受け取った場合です。贈与税は基礎控除後の課税価格によって税率と控除額が異なります。
また、贈与税では「一般贈与財産」と「特例贈与財産」を区別しており、同じ金額の贈与でも税率と控除額が変わります。
一般贈与財産:特例贈与財産以外の贈与財産
特例贈与財産:直系尊属(父母や祖父母など)から18歳以上である直系卑属(子や孫など)への贈与財産
一般贈与財産と特例贈与財産の税率と控除額は、図表1および図表2の通りです。
図表1(一般贈与財産)
基礎控除後の 課税価格 |
200万円 以下 |
300万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1000万円 以下 |
1500万円 以下 |
3000万円 以下 |
3000万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
図表2(特例贈与財産)
基礎控除後の 課税価格 |
200万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1000万円 以下 |
1500万円 以下 |
3000万円 以下 |
4500万円 以下 |
4500万円 超 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
例えば、18歳以上の成人男性が300万円のタンス預金を父から受け取った場合、課税金額は、300万円-110万円=190万円となります。
この金額に対して特例贈与財産の税率10%をかけると、190万円×10%=19万円となり、贈与税額は19万円となる計算です。
贈与税を支払わなくてはならない場合は、贈与された翌年の2月1日から3月15日までに申告と納税をします。
100万円の贈与でも税金がかかる場合
100万円の贈与に対しては基本的に贈与税がかかりませんが、いくつかのケースでは税金を支払う必要があります。ここでは、100万円の贈与でも税金がかかるいくつかのケースを紹介します。
他の人からも贈与を受けている場合
贈与税は、1年間に受けた贈与の総額に対してかかります。1人から受け取った金額が100万円でも、他の人からも贈与を受けて合計金額が110万円を超えてしまうと、贈与税がかかります。
例えば、母親から100万円を受け取り、祖父からも100万円を受け取ったケースでは、合計金額の200万円に対して贈与税の計算が行われます。したがって、課税金額は200万円-110万円=90万円となります。
特例贈与財産の税率から計算した贈与税額は、90万円×10%=9万円です。
贈与から7年以内に贈与した人が亡くなった場合
贈与税には「7年ルール」と呼ばれるものがあり、贈与から7年以内に贈与者が亡くなった場合、受け取った贈与財産は相続財産とみなされます。そのため、100万円以下の贈与であっても相続財産として相続税が課されてしまいます。
ただし、4年以上前に受け取った贈与財産については、100万円を控除した金額が相続財産に加えられます。3年以内の贈与については全額が加算されます。なお、この7年ルールは2024年1月1日以降に行われた贈与財産に適用されるものです。それ以前に受け取った贈与財産は、改正前の3年ルールが適用されます。
定期贈与とみなされる場合
毎年決まって100万円を受け取るようなケースでは、定期贈与とみなされる可能性があります。定期贈与とは、毎年決まった金額を渡すとあらかじめ約束された贈与のことです。例えば、毎年100万円を5年にわたって贈与するという定期贈与の場合、500万円を贈与したものとみなされ、贈与税が課せられます。
ただし、毎年100万円を受け取ったからといって、必ず定期贈与とみなされるわけではありません。定期贈与とみなされるには、毎年贈与することがあらかじめ決まっていたか、ということがポイントになります。
100万円を受け取るたびにその都度贈与契約書を取り交わせば、毎回新たに結ばれた贈与契約とみなされ、定期贈与の要件からは外れます。定期贈与とみなされるか心配な人は、このような対策をとるとよいでしょう。
100万円のタンス預金をもらっても贈与税はかからない!
100万円のタンス預金を受け取っても、基礎控除内であるため贈与税はかからず、税務署へ申告する必要もありません。ただし、贈与があった証拠として贈与契約書を作成しておくと安心です。また、お金が自分の管理下に入ったことを示すために、銀行口座へ同額を振り込んでおくとよいでしょう。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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