65歳以降もしばらく働きます。「月50万円」以上稼ぐと年金が“減額”になると聞いたのですが、そんなに稼がなければ問題ありませんよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月26日 2時20分
基本的に65歳の誕生日を迎えた翌月からは、老齢年金を受け取れます。しかし、60歳以降も働き続ける場合には、年金額や賃金額によっては年金の一部が支給停止となる可能性があります。定年後も働き続ける人が増えた昨今、「在職老齢年金」について知っておくことが大切です。 本記事では、在職老齢年金について基本から解説し、支給停止となる場合の金額についてシミュレーションしています。
在職老齢年金とは?
60歳以降に厚生年金保険に加入しながら受ける老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいます。60歳~70歳未満の人は、老齢厚生年金を受給していても、厚生年金保険の適用事業所で働いている場合は厚生年金保険に加入しなければなりません。
65歳未満の受給権者を対象とする在職支給停止計算方法は賃金額によって変わり、図表1のように計算します。
図表1
日本年金機構 令和4年4月施行年金制度改正資料【在職老齢年金関係】
2022年には、次の2つの目的で在職老齢年金に関する法改正が行われました。
・今後65歳以降も働く人がますます増えていくため、高齢者の就業を年金制度に反映する
・煩雑な制度をより分かりやすくする
この2点を考慮して、改正後は一律で図表2のように支給停止額を計算することとなりました。
図表2
日本年金機構 令和4年4月施行年金制度改正資料【在職老齢年金関係】
なお、2023年4月から2024年3月までの支給停止調整額は「合計額48万円」でしたが、2024年4月からは「合計額50万円」に改正されました。
在職老齢年金の基準について解説
それでは、2024年4月以降の在職老齢年金の計算方法について、より分かりやすく解説します。60歳以降、厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受け取る人は、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計が「50万円」を超えると年金が合計額に応じて支給停止となります。
「基本月額」と「総報酬月額相当額」とは次の額を指します。
基本月額:老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額を12(ヶ月)で割った額
総報酬月額相当額:毎月の賃金(標準報酬月額)と、1年間の賞与(標準賞与額)をそれぞれ12(ヶ月)で割ったものを足した額
平たくいうと、「年金額・給与・賞与の1ヶ月の平均額を合計したもの」が50万円を超えると年金額が調整されるということです。計算式については図表2の通りなので、実際に計算してみましょう。
どのくらいの年金が停止になる?
実際に65歳以降も厚生年金保険に加入しながら仕事を続けた場合の在職老齢年金について、シミュレーションしてみましょう。65歳以降も仕事を続けようと考えているAさんの、年金額や賃金は次の通りです。
・老齢厚生年金額(報酬比例部分/年額):150万円
・標準報酬月額:30万円
・標準賞与額:120万円
計算式に当てはめていくと次のようになります。
・基本月額:12万5000円(150万円÷12)
・総報酬月額相当額:40万円((30万円×12ヶ月+120万円)÷12)
合計すると52万5000円となり、支給停止の対象となる50万円を超えます。支給停止額の計算式は次の通りです。
支給停止額=(40万円+12万5000円-50万円)×1/2×12
支給停止額は年間15万円(月額1万2500円)となりました。老齢厚生年金の1ヶ月あたりの支給額12万5000円のうち1万2500円が支給停止となるので、受給額は11万2500円です。
まとめ
今後も60歳以降働き続ける人が増えることが予想され、在職老齢年金の制度は見直されてきました。2024年4月には、支給調整停止額が改正されています。60歳以上で老齢厚生年金に加入しながら働いている場合は、基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えると、一部または全部の老齢厚生年金が支給停止になります。
人生100年時代といわれて久しいですが、前もって働き方について計画し、充実したセカンドライフを送れるように今から準備したいですね。
出典
日本年金機構 令和4年4月施行年金制度改正資料【在職老齢年金関係】
日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み
執筆者:古澤綾
FP2級
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