65歳の夫が仕事をいつ引退しようか考えているようです。一般的な「引退年齢」と「生涯賃金」はどのくらいでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月27日 2時10分
働くシニア世代が珍しくなくなった昨今で、「何歳まで働こう」とふと考えることもあるでしょう。そこで本記事では、「65歳男性」をモデルケースに、以下の3点を解説します。 ●男性の平均引退年齢 ●平均生涯賃金 ●老後の毎月の支出額と社会保険給付額の平均 引退年齢の検討材料としてぜひご活用ください。
男性の平均引退年齢
独立行政法人労働政策研究・研修機構の資料によると、男性の平均引退年齢は令和2年時点で71.1歳です。平均引退年齢は2000年以降伸び続けており、今後さらに遅くなる可能性もあるでしょう。実際に、内閣府が公表している「令和2年版高齢社会白書(概要版)」によると、70〜74歳の現在就業中の男性の44.7%がまだ働きたいと回答しています。
ただし、正社員の割合は年齢とともに減少します。内閣府の「令和3年版高齢社会白書(全体版)」によると、60歳以上の「役員を除く雇用者」(男性)のうち、正規雇用者率の推移は次の通りです。
●60~64歳:53.3%
●65~69歳:30.1%
●70~74歳:26.1%
●75歳以上:25%
「60〜64歳」では53.3%と半数を上回っていますが、「65〜69歳」を境に3割近くにまで減少することが分かります。65歳以降も働く場合は、正規雇用ではなく、パートやアルバイトなどの形態が一般的と読みとれるでしょう。
平均生涯賃金
日本の平均生涯賃金は、1億9000万〜2億3000万円程とされています。一方、厚生労働省によると、大学新卒(22歳)で入社した男性が、65歳で引退した場合の平均生涯賃金は、概算で2億7474万3100円です。したがって、労働者全体の平均を4474万3100〜8474万3100円上回ります。
また、平均引退年齢である71歳まで働いた場合の平均生涯賃金は、3億410万6900円です。65歳で引退した場合の生涯賃金から、2936万3800円増加します。
ただし、平均生涯賃金は勤め先の規模によっても異なります。表1は、企業を従業員数で分類し、先と同様の条件で平均生涯賃金を計算したものです。企業規模によって、最大で約9000万円の差が生じています。
表1
65歳で引退した場合の 平均生涯賃金(概算) |
71歳で引退した場合の 平均生涯賃金(概算) |
差額 | |
---|---|---|---|
従業員10~99人 | 2億2128万1100円 | 2億4816万8600円 | 2688万7500円 |
従業員100~999人 | 2億6623万100円 | 2億9744万1200円 | 3121万1100円 |
従業員1000人以上 | 3億853万4600円 | 3億3972万4400円 | 3118万9800円 |
出典:厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」を基に筆者作成
老後の毎月の支出月と社会保険給付額の平均
引退年齢を検討するうえでは、老後の支出額や社会保険給付額も気になるところでしょう。
総務省によると、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の支出額と社会保険給付額の月平均は、表2の通りです。いずれの年代でも、支出額が社会保険給付額を上回っています。ほかの収入がない場合は、貯金を切り崩さなければならない可能性が高いでしょう。
表2
社会保険給付 | 支出 | |
---|---|---|
65~69歳 | 20万8422円 | 30万2130円 |
70~74歳 | 20万7332円 | 27万6190円 |
75歳以上 | 20万2333円 | 24万2900円 |
出典:総務省「家計調査報告[家計収支編]2020年(令和2年)平均結果の概要」を基に筆者作成
男性の平均引退年齢は約71歳|平均生涯賃金は65歳引退で約2億7000万円、71歳引退で約3億円
男性の平均引退年齢は、令和2年時点で71.1歳です。65歳で引退した場合の平均生涯賃金は2億7474万3100円ですが、71歳まで働いた場合には3億410万6900円に増加します。
また、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯」の支出月額と社会保険給付額を比較すると、いずれの年代でも支出が給付を上回ります。老後30年間で2000万円が不足するといわれているように、社会保険給付額だけでは老後の支出を賄えない可能性があるでしょう。
こうした不安を解消するために、引退年齢を延ばすことは有効といえます。引退年齢を65歳から71歳に延ばせば、3000万円前後の収入増が期待できます。目安とされる2000万円はカバーできるため、生活に余裕が生まれるかもしれません。
なお、今回ご紹介した生涯賃金や老後の支出月額、社会保険給付額は平均値です。勤め先の規模や居住地、学歴などによって変動する可能性があるため、ご注意ください。
出典
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2023(317ページ)
内閣府
令和2年版高齢社会白書(概要版)第1章 第3節 図1-3-6
令和3年版高齢社会白書(全体版)第1章 第2節 図1-2-1-15
総務省統計局
政府統計の総合窓口(e-Stat) 厚生労働省 賃金構造基本統計調査 令和2年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類 第1表
家計調査報告[家計収支編]2020年(令和2年)平均結果の概要(17ページ)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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