親が「相続税対策だ」と言って、墓地や仏壇などをせっせと購入しています。いずれ使うものとはいえ、今から購入する“メリット”はありますか? 早く買うほうがお得なのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月27日 5時0分
「相続税対策」と称して親が墓地や仏壇の購入に励んでいると、子どもとしては「こんなに早くからそろえる必要があるのか」と不安や疑問を抱くことがあるかもしれません。確かに、墓地や仏壇は将来的に必要になるものですが、生前から購入することにどれほどのメリットがあるのでしょうか。 本記事では、相続税対策としての墓地や仏壇の早期購入が本当に得策であるのかを解説していきます。
墓地や仏壇の購入は相続税対策になる?
結論からいうと、墓地や仏壇の生前購入は相続税対策として有効です。国税庁では、相続税がかからない財産として、墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物(祭祀(さいし)財産と呼びます)をあげています。
さらに民法897条には、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する」とあります。
これは、祭具や墓地のような祭祀財産は通常の相続財産とは区別されて、特定の人が継承するという内容です。
つまり、祭祀財産は相続税の対象とはならないので、事前に祭祀財産を購入しておけばその分の費用に対しては、相続税はかからないということになるのです。また祭祀承継者は必ずしも法定相続人である必要はありません。仮に祭祀の主宰者が故人の「いとこ」のような関係であっても、祭祀財産を非課税で継承することができます。
さらに、祭祀承継者が相続を放棄していても、祭祀財産と相続は別物なので祭祀財産を放棄したことにはなりません。万一、相続財産のうち負の財産が多く、相続を放棄したとしても祭祀財産に関しては放棄したことにはならないということになります。
祭祀財産として認められるもの
祭祀財産は、祖先を祭るために必要な財産ですが、どこまでが民法の規定する「系譜、祭具及び墳墓」に該当するのかを見ていきましょう。
系譜
「系譜」とは、分かりやすくいうと家系図のことです。冊子や巻物、掛け軸などに先祖代々の血縁関係を書きつづったものをさします。一般家庭では作成されることは珍しいかもしれませんが、テレビや歴史資料館で武将や貴族などの家系図を目にしたことのある人もいるでしょう。
祭具
「祭具」は、位牌、仏壇、仏像、神棚、神体、神具、仏具、庭内神祠(しんし)といった祭祀や礼拝の際に用いる器具や道具のことです。ただし「仏間」は、あくまでも建物内の部屋の一部であり、仏壇や神棚のために用意された部屋であっても祭具とは認められていません。
墳墓
「墳墓」は、墓地、墓碑、ひつぎ、霊屋といった遺体や遺骨の埋葬に関わる設備や道具のことです。墓地は「墳墓と社会通念上一体のものと捉えられる程度に切っても切れない関係にある範囲の墳墓の敷地である墓地」に該当する場合のみ、祭祀財産として認められます。
そのため、墓碑に対してあまりにも広大な土地であると判断されると、祭祀財産として認められないこともあります。
相続税免除の対象外となるもの
祭祀財産にあたるものでも、ローンで購入した場合は相続の一部となってしまいます。この場合は相続税がかかり、非課税にはならないので注意しましょう。また祭祀財産を拡大解釈して、換金目的の仏具などを購入した場合も相続税の対象となるため非課税は適用されません。
相続税対策として祭祀財産を生前購入する場合は、本当に必要なもののみを一括で購入するようにしましょう。
祭祀財産の購入は相続税対策として有効
祭祀財産の生前購入は、相続税対策として有効です。最近は、永代供養で墓地や仏壇を購入しない人も増えていますが、従来通りの家族での供養を考えている場合は、親が亡くなってから子どもが墓地や仏壇を購入するよりも、あらかじめ購入しておく方が得策といえます。
とはいえ、生前にあまりにも多くの金額を祭祀財産につぎ込むのは、子どもにとっては不安も感じることもあるでしょう。墓地や仏壇は「死後の家」ともいえます。実際にそこに入る親の意見を聞きながら、親も子どもも納得できるものを準備して購入しておくのがいいかもしれませんね。
出典
e-Gov法令検索 民法
国税庁 No.4108 相続税がかからない財産
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
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