「夫の両親」と同居していましたが、夫が死亡したため“1人暮らし”を考えています。名字も元に戻してしまうと、「遺族年金」は受給できなくなりますか? 通常の離婚とはどう違うのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月28日 5時20分
夫と死別した妻は、夫の両親との同居を解消したり、旧姓に戻したりすることがあります。また「死後離婚」をする人も少なくありません。そのような場合、元妻は遺族年金を受給し続けられるのでしょうか。本記事では、死後離婚と遺族年金との関係について説明します。
「死後離婚」とは
夫が死亡した場合、残された妻は、手続きをすることにより、夫の親族との関係を解消できます。これが「死後離婚」と呼ばれるものです。
離婚と死別の違い
「死後離婚」の説明をする前に、「通常の離婚」と「死別」について説明しましょう。この2つは夫婦の別離という点では同じですが、異なる点があります。
離婚をすると、元夫の親との関係は解消されます。しかし、死別の場合は元夫の親との関係が自然に消えることはありません。そのため元妻には、死亡した夫の親を扶養したり介護したりする義務が残ります。
また、離婚の場合、夫の名字を称していた妻は旧姓に戻りますが、死別の場合は夫の姓のままです。なお、一定期間内に手続きをすれば、離婚した後も婚姻期間と同じ名字を名乗り続けることができます。また死別したときも、手続きにより、旧姓に戻すことが可能です。
死後離婚の手続き
いわゆる「死後離婚」は、「離婚」という言葉がついているもの、元夫との関係においては死別です。死亡した夫と離婚することはできません。
しかし、「姻族関係終了届」を自治体の役場に提出すると、亡くなった夫の親族との関係を解消できます。これが、いわゆる「死後離婚」と呼ばれるものです。なお、姻族関係の終了は、元妻からはできますが、死亡した夫の親からすることはできません。
死後離婚と遺族年金
「死後離婚」をすると、元妻は遺族年金を受給できなくなるのでしょうか? ここでは、子のない妻が遺族厚生年金を受給するケースで考えてみましょう。
遺族厚生年金は失権しない
「死後離婚」をしても、そのことが理由で元妻が遺族厚生年金を受給できなくなることはありません。「死後離婚」で終了するのは、亡くなった夫の親族との関係だけだからです。
死亡した夫の配偶者だった関係が変わることはないため、遺族厚生年金の受給権に影響はありません。
夫の親との別居や復氏をしても
夫の親と同居していた妻も、「死後離婚」後は、多くの場合、同居を解消します。また、復氏の手続きをして結婚前の名字に戻す人も多いでしょう。そのように、亡夫との関係者と離れ、新しい生活を始めても、遺族厚生年金の受給権がなくなることはありません。
まとめ
夫と死別した場合、死後離婚や復氏、元夫の親との別居など、元妻の生活は大きく変わることがありますが、いずれも遺族年金の受給権に影響を与えることはありません。
法務省公表の戸籍統計によると、2014年度には約2200件だった姻族関係終了届(死後離婚)の届出数は、2023年度には3159件と大きく増加しています。その背景には、義父母との不仲や家制度についての世代間ギャップがあるのではといわれています。
配偶者との死別というつらい経験の後、新しい生活を始めるひとつの契機として、こうした制度の利用を検討してみましょう。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
法務省 戸籍統計2023年度
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士
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