メンテナンスをしていない古い家に住む高齢の親。地方から呼び寄せたいが「絶対に引っ越しはしない!」親の安全はどう確保する?
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月3日 4時50分
住み慣れた家や地域から離れたがらない高齢者はとても多いです。長く住んでいる家は使い勝手がよい反面、修繕工事や高齢者向けにメンテナンスをしないケースもあり、高齢者には住みづらい環境であっても頑張って住み続けてしまうことはよくあります。 不便な場所にある古い家に住む高齢の親を近くに呼び寄せたいと思っているAさんも、両親の強い引っ越しの拒絶に、別の対策を考えたいとのこと。このご相談について選択肢をアドバイスします。
転居は避けられない、バックアップを用意
内閣府の発表した令和6年高齢者白書によると、令和4年時点での65歳以上の者のいる世帯のうち、夫婦のみおよび単独世帯が3割を占めているとのことです。
加齢は誰にでも等しく訪れることです。今家族がいるから、といっても、家族は個人の集合です。病気だけではなく個人の考え方のずれによってバラバラに生活することを選択しないとも限りません。
将来の自分への心の準備も含めて、対応を先延ばしにしないことが求められます。
転居一択
家屋も経年劣化を補うために定期的な修繕、改築が必須です。早めに手当てしておかなければ、いずれ待ったなしの対応が必要になることは避けられません。修繕する際には、そのときのカラダの状況に合った生活環境に変えることになります。60歳では足腰に問題がなかったとしても、70歳になればバリアフリーが必須になり、それを見越してリフォームしておくことになるでしょう。
構造的には独居老人が生活するのに問題ないようにリフォームしたとしても、本人がなじめない場合は、10年後に浴室を全面改装しなければならなくなるなどリフォームがずっと続くことが想定されます。また、遠隔操作で異常を知らせる機能を設置したとしても、起動させるのを失念してしまうということも十分に考えられます。
大切なのは、そういった可能性が「年齢を重ねていけば起こり得る確率が確実に上がる」ということを理解できるうちに行動に移すことです。
ご相談者のケースでもよくみられることです。「今は、まだ何とか一人でできるから」と言って先延ばしにしたり、ご本人も「まだまだ大丈夫」との主張に押し切られたりします。この根拠は何でしょうか?
幼い子どもであれば、時間とともに「できることが増える」というのが当たり前ですが、65歳を過ぎたら、程度の差はあっても例外なく「できることが少なくなっていく」です。
将来の選択肢についてきちんと話し合って理解できるうちに、「見守りサービス付き」住宅などへの転居を検討することが唯一の選択肢です。
要介護などの認定がついていない場合は、月額負担が一般的に15万~18万円と自己負担が重くなります(サービス付き高齢者住宅)。これを老親と子どもで分担して負担するということを親子とも冷静に話し合えるうちに検討しておきましょう。
高額と思われるかもしれませんが、遠方に一人暮らしの老親が暮らしている。心配で連絡を試みるが応答がない。親はカラダが思うようにならないが、スマホの操作が十分にできなくなって子どもに連絡がとれない。
時間がたってようやく状況がわかり、深刻な状況に陥ってから入院、となると、子どもは自宅と親の病院を行き来することになり、勤務状況にも影響を及ぼすなど高額療養費でカバーできる範囲をはるかに超えてしまいます。
自治体の見守りサービスもあるが……
自治体では、「高齢者見守りサービス」として定期的に高齢の一人暮らしをしている世帯を巡回する取り組みを実施しています。しかし、こういった取り組みは、マンパワーが必要です。今後高齢者数は増加していく一方で働き手が減少していく中、どこまできめ細やかに継続できるか、難しいといわざるを得ません。
バックアップ 信頼できる知人との関係維持
転居までの間、バックアッププラン、として検討しておくのは有効でしょう。
「遠くの親戚より近くの知人」と言われるように、血縁よりも、学生時代の友だちや職場・取引先で知り合った気の合う仲間は、同じ経験を通じて、価値観をはぐくんできたことから、共通の話題も多く、年齢を重ねても本音や弱さをさらけ出せるかけがえのない存在です。
そういう貴重な知人が行き来できる範囲内に住んでいれば、お互いに支えあうことができ、会話をする機会も維持できるかもしれません。
ただしその場合には、家族にその友人の存在を知ってもらい、連絡先も伝えておく必要があります。
筆者のご相談者の中には、電話やSNSを通じて近況を知らせあうだけでなく、定期的に会って食事をして健康状態やささいな日常を愚痴りあったりして「家族以上に自分のことを理解してもらっている」という人の話をされる方もいらっしゃいます。実際に、2~3日連絡が途切れると確認しに出向くこともあるようですから心強い存在です。
ただ、知人はあくまでも知人なので、本当に医療行為が必要になったときには、家族に役割を委ねなければなりません。その場合でも、「最近の変化で気づいたことはあるか」「体調の変化が顕著にみられるようになったのはいつからか」など、かかりつけ医でも見つけられない異変が医療措置の参考になる場合もあるでしょう。
まとめ:冷静に検討できるうちに転居について話し合う
24時間、一人暮らしの老親の面倒をアウトソーシングしてもらえるサービスは理想ではありますが、現実的ではありません。一方で、どんなに生活が便利になってもAI(人工知能)が発達しても安心して委ねられるまでには至らないでしょう。
そして誰でも年を重ねていけば、自分でできることの範囲が少なくなっていくことも事実です。どうしてもかつての自分、かつての親と比べますから「大丈夫」と思ってしまう、思いたいというのが心情的には理解できます。
それでも現実を受け止めて、「弱くなっていく(親・自分)を認める」ところから始めていきましょう。要資金として確保し、想定外の費用がかかっても「今はやむを得ない」と構えることが求められそうです。
出典
内閣府 令和6年版高齢社会白書 家族と世帯
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者
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