義母の介護を1人でしていますが、先日「遺産はあなたが受け取って」と言われました。“夫の母の財産”でも相続は可能ですか? 夫もその兄妹も介護はしていません…
ファイナンシャルフィールド / 2024年10月5日 5時0分
「親の介護は実子がおこなうもの」という考え方が現代ではかなり普及してきていますが、家庭によっては配偶者がその役割を担うこともあるでしょう。夫の母親の介護を実子である夫もその兄弟姉妹も関与せず、妻が1人で行っていた場合、妻の苦労は想像に余りあります。 しかし、そんな妻の献身的な介護に感謝をしている義母が「遺産をあなたにあげたい」と申し出たら、妻は「介護をしてきた苦労が報われる」と思うこともあるのではないでしょうか。 このように妻の献身的な介護や義母の希望があれば、妻は義母の法定相続人でなくても遺産を受けることができるのでしょうか。本記事では、介護者が受け取ることができる相続について解説していきます。
基本的な相続の範囲
相続の基本から確認していきます。相続には「法定相続人」が民法によって定められています。
まずは「配偶者」です。亡くなった人が婚姻関係にある場合、配偶者は常に相続人となります。続いて相続人となるのは「亡くなった人の子ども」です。夫婦に子どもがいない場合は、直系尊属である親、親がいない場合は、亡くなった人の兄弟姉妹に相続権が移っていきます。
配偶者以外は直系の親族で相続をすることになるので、今回のように、「亡くなった人の子どもの妻」は相続人になることはできないのです。
介護した人に権利がある「特別寄与分」
法定相続人でなければ一切の相続ができないのではないかというと、そうではなく、「介護」の主たる担い手であった「子の妻」も相続を受け取ることができる場合があります。それは「特別寄与」という民法の規定によるものです。
「特別寄与」とは、相続人以外の親族のうち、故人に対して「療養看護その他の労務を提供」した人が、その貢献度に応じて相続の一部を請求できる権利です。ただし、この介護が無償あるいは対価に見合っていない報酬であったことと、介護によって故人の財産が維持または増加していることがポイントとなります。
例えば、子の妻の介護によって義母が介護施設に入らず、その施設費用がかからなかった場合があてはまります。このように「介護によって故人の財産を守った」という貢献性に報いるための制度となっているのです。
特別寄与分の請求は、その貢献度に応じて寄与者(介護者)が相続人に請求することができます。この額は相続人と寄与者との協議によって決まりますが、話し合いが決裂した場合は家庭裁判所で調停や審判を行うことになります。
また、この寄与分の請求は相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月を経過したとき、または相続開始の時から1年を経過してしまうと、申し立てができなくなるので注意が必要です。請求をスムーズに行うためにも、介護をした日数や内容のメモ、要介護認定通知書や診断書などの客観的な資料などを準備しておくといいでしょう。
遺言書で相続人を指定することもできる
特別寄与分の財産の請求できる額は、民法で明言されておらず、相続人との話し合いや家庭裁判所の審議によって決まります。そのため、場合によっては思っていた額をかなり下回ることもあるでしょう。また、寄与者が請求しないと受け取ることができないという側面もあります。
そこで今回のケースのように義母が生前から「息子の妻に遺産をあげたい」という明確な意思を持っているのであれば、遺言書を書いてもらうのもいいでしょう。有効な遺言書であれば法定相続よりも優先して財産を分配することができます。ただし「遺留分」といって法定相続人が最低限保証されている財産までは受け取ることができません。
妻でも夫の親の遺産の一部をもらえることもある
基本的に遺産は法定相続人によって相続されます。ただし長年の介護の実績等があれば「寄与者」として遺産の一部を請求することも可能です。また遺言書を残しておくことで介護してくれた人にも確実に遺産を渡すことができます。
かつて「夫の親の介護は、当然その妻の仕事」という認識の時代もありましたが、本来、介護は実子にその義務があります。「妻」の立場ながら介護に携わったということは、家族への大きな貢献ですので、正当な権利として特別寄与分の財産を主張してもいいのです。
出典
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
e-Gov法令検索 民法
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
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